Angry Birdsが日本であえてスピード展開しない理由

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【原文】

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左から順に:Peter Vesterbacka、Antti Sonninen、Henri Holm

大人気のモバイルゲーム Angry Birds を展開するフィンランドの会社 Rovio の面々と話すのは、しばらくぶりだ。今春、同社は東京にオフィスを構える予定であり、その関係でメンバーの数名と東京で話をする機会を得た。Rovio が日本に対して猛烈な市場攻勢をかけていると思われるかもしれないが、実はそうではない。むしろ、それはゆっくりと進められており、それこそが Rovio のやり方なのだ。

マリオブラザーズがゲーム界を席巻して以降、Rovio の Angry Birds ほど、ポップカルチャーの象徴的な存在は無かったのではないか。しかし、〝超カワイイ〟の文化があり、ハローキティー、アンパンマン、そして、もちろん、任天堂のマリオブラザーズなど強力なブランドがあふれる日本に参入するには、長期に及ぶ作戦計画が必要だと Rovio は認識しているのだ。Rovio の Mighty Eagle[1](訳注:Angry Birds に現われるキャラクタ)こと、Peter Vesterbacka は次のように説明してくれた。

我々は、向こう数年とかではなく、最終的に確固たる地位を手に入れるにはどうすればよいか知りたいのです。エンターテイメント・ブランドのトップに立ちたい。そう、日本の多くのどのブランドよりも、より日本らしいブランドに。

ローカル市場から学ぶ

しかし同時に、日本のビジネスモデルは、その多くがイノベーションやディスラプション(市場革新や市場変化)に向かっていることを忘れてはならない。日本で、Rovio はローカルパートナーと積極的に協業を進める一方、今まで積極的なマーケティング展開をしてこなかった。多くのインターネット企業がやるように、日本でテレビ広告を打つことを考えなかったのかと尋ねたところ、Peter は別なやり方を考えていると語った。彼によれば、Rovio は少し変わったマーケティング・アプローチを取ることが多く、日本においても同様の展開を考えているようだ。既に開始している、ハローキティーのメーカー、サンリオ社との物販協業に関して、Peter は次のように説明してくれた。

ローカルパートナーは、いつだって、我々にとっては重要だ。彼らからは実に多くを学ぶことができる。StarWars[2] のゲーム制作に際し、LucasArts と協業することにしたのも同じ理由からだ。

angry-birds-japan-240x300日本には、スマートフォンユーザーの普及にはまだ伸びる余地があるため、AngryBirds のダウンロード数がお隣りの韓国のそれに追いつくまでには、まだまだ時間がかかると Rovio は見ている。Rovio が日本では時間をかけて作戦を進行した方がよいと考えるもう一つの理由が、まさにこれだ。現段階では、強力なマーケティング展開を一気に行うには時期尚早だからだ。

Rovio や Angry Birds のアイデアを日本人にもわかってもらうため、最近、同社は Angry Birds について書かれた日本語版の入門サイトをリリースした。Rovio の日本のカントリー・ディレクター Antti Sonninen は、このサイトが立ち上がって、まだ数週間しか経っていないことを指摘した。Twitter、Facebook、LinkedIn なども同じようなこと(入門サイトの立ち上げ)をしている。ゲーム上のアイテムはもとより、他の鳥の紹介なども含めて、Angry Birds に関する基本的な質問は、このサイト上に回答が用意されている。

世界市場の攻め方

ところで、中国では、既に Angry Birds は完全な離陸を遂げた。中国人1,000人に聞いたところ、94% が Angry Birds のことを知っていたという最近の調査報告もある。Rovio は、中国でよく起こる知的所有権の侵害(ニセモノが出回ること)にも怒らない。それは、Angry Birds へ傾けられた情熱の産物だからだ。Peter は、中国で今後展開する計画の詳細には触れず、笑みを浮かべて「中国では多くのことが進んでいるよ」とだけ語った。

Rovio には550人の従業員が居て、その9割はフィンランド勤務だ。Rovio は適時適所にエネルギーを集約し、メッセージを広めることに熟練していると言えるだろう。Peter は最近までロシアに滞在していた。ロシアでは、Rovio が2014年にテーマパークを開園する予定で、現在は Angry Birds ブランドのコーラが販売されている。

対して、他のトップ・モバイル・ゲームに目を転じてみると、Angry Birds ほど特徴的で目立つブランド構築をしているところは多くない。日本のみならず世界中で、長期に及ぶ計画が Rovio にとって吉と出るかどうか、結果を見るのが楽しみである。


  1. 念のために言っておくが、これが実際に彼の名刺に書いてある肩書きだ。なかなか面白い。 ↩
  2. LucasArts との共同発売で、開発は Rovio と Disney Mobile の手による。  ↩

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