スタートアップが雇用を慎重に、解雇を即座にするべき理由

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【原文】

twomenhandshakeシード投資を獲得したスタートアップが、企業を成長させるために素早く人材を増やすという間違ったやり方を信じることがよくある。

この考え方が一般的に広まっているのは、投資家が企業に対し、すぐに効果があると思われるビジネスモデルを用いてその企業を成長させることを期待しているからだ。正直言って、シードステージのスタートアップは、それをどのようにして実施したらいいのか、まだ理解できていない。

Steve Blank氏とBob Dorf氏共著の「The Startup Owner’s Manual(邦題:スタートアップ・マニュアル)」で、スタートアップとは、成長可能で繰り返し実践ができ収益をもたらすビジネスモデルを模索している一時的な組織だと定義されている。だから、スタートアップがチームを編成しプロダクトを構築するための資金を調達していても、プロダクトが顧客を呼び寄せるという望みを抱いて、その資金を浪費するべきではない。

一般的には「素早い雇用、素早い解雇」と考えられているが、私は自分自身の過去の経験から、今ではむしろ「慎重な雇用、素早い解雇」が好ましいと考えている。

スタートアップの間で一般に考えられている概念として、事業の成長を促すためにはプロダクトを変更するか、転換する必要があるというものがある。しかし、起業家たちはチームを編成する必要もあるということを忘れてしまうのだ。

どういうことだろうか?スタートアップから大企業へと成長するにつれて、起業家はチームを発展させるためにつらい決断をしなくてはならなくなる。規模が小さい時期には、一部のメンバーがスーパースターとして大活躍するかもしれないが、成長を目指す時期に彼らは自分自身も成長していなかったりする。

そんなシナリオを避けるため、そして間違った人を雇うことで友情を台無しにしてしまう危険を避けるため、事業の拡大に向けて素早く人を雇うべきだという先入観は捨ててしまおう。

だから人材採用を考慮に入れるとき、次の経験則を思い出してほしい。

1.素早く拡大する必要があるなら、性急に人を雇わないこと。もし間違った人物を雇ってしまえば、拡大はおろか、スタートアップ自体が大失敗に終わってしまう。採用には時間をかけ、なぜその人物を採用するのかゆっくり考えるといい。

2.候補者が同意し、すべて問題ないように思えるからといってすぐに人を採用しないこと。あなたと候補者が折り合わない部分を見逃している可能性がある。

3.一流企業出身で、あなたのスタートアップにぴったりだと思われる経験を持った候補者だからといって、急いで採用しないこと。ここで、Mig33のSteven Goh氏がなぜ多国籍企業の出身者やマネジメントの専門家たちを雇わないのかについて述べたメモについて見てみよう。ほとんどの場合、その人物はあなたのレーダーにしっかりととらえられるよう幻影を作り出そうとして履歴書を仕上げている可能性がある。Ben Horowitz氏は次のステージへと進むために年取った人物をどのようにして雇用するかについて、いくつかアドバイスをしている。

4.事業を拡大するという必要に迫られているからといって、慌てて人を雇わないこと。慌てて人を雇うと、急激に費用が増えてしまい、それに気づきもしないうちに事業がつぶれてしまうといったことになりかねない。

5.競争相手が追いかけてくるからといって、焦って人を雇わないこと。競争を無視しろということではなく、チーム全体が行きたい方向に会社の舵取りをするようにすればいい。特にこれは、会社のビジョン、文化、目的を気にかけるということだ。

6.誰もがこの人物を採用したがっていて、それをプレッシャーに感じて大枚をはたこうと、すぐに採用してはいけない。あなたが作り出したシステムや機能の構築あるいは改善に必要なものと候補者の持つスキルがマッチするときにだけ、雇えばいいだけの話だ。正当な給与を提示し、受け入れるように強いられる条件にふりまわされないこと。

それで、あなたがシード投資を受ける時には、不適切な理由でどんどん出費しないことだ。すぐに人を雇う代わりに、営業から事業開発までのシステムについて把握しよう。ゼロから構築されたシステムで設立チームの営業が10倍の売上高を得ることができる時に限り、新たな営業員を迎え入れよう。今まで、私は東南アジア市場で本当に職務を遂行し得る営業マンやビジネスマンに出会ったことがない。

ある役割のために雇おうとしている候補者のために、まず特定の職務について10倍の用意をしておこう。それから、その人物にその役割を任せるのだ。なぜなら、その時までにあなたは機能的で繰り返し可能なシステムを手にしていることになるからだ。

ルールにはいつでも例外があるが、短期間で人を採用するのは、候補者が前職の勤務期間中にあなたと仕事上でのしっかりとした関係があって、長所と短所の両方を知っているような場合のみにしておこう。

他のケースでは、どうかゆっくりと時間をかけてほしい。

著者注:

この記事のオリジナルは著者のブログで公開された。著者はオリジナル記事を編集し、さらに雇用に関する詳細な論考と、著名な起業家やベンチャーキャピタリストからのアドバイスがいくつか追加されている。

Photo: Banjo Brown

【via SGE.io】 @SGEio

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