中途半端な起業家になるなーーコウゾウ山田氏が語る経営者に必要な「決意と責任」

SHARE:
コウゾウ代表取締役の山田進太郎氏

例えば起業した時から世界を視野に考えているかどうかで、スタートアップ後の戦略やイグジットの結果は変わったりする。経営者にとって「何を成したいか」という思いや言葉は決して軽々しいものではない。

2月1日に新会社「コウゾウ」を起業したばかりの山田進太郎氏は、かつて米Zyngaに買収されたウノウの代表取締役として、日本から世界に羽ばたこうと考えた一人だ。起業からイグジット、そして新たなスタートアップの道を踏み出す山田氏が「MOVIDA SCHOOL」で語った、これまでの事業の軌跡とベンチャー経営者が大切にすべき「決断と責任」について本人の発言を元にまとめた。

自分で「1から作る」ことでサービス開発プロセスを知る

山田:1996年に早稲田に入学し、99年に当時まだ20人規模くらいの楽天に内定していた。その時に楽天オークションをゼロから立ち上げる経験や、自分でサービスを作りたいという思いから1からプログラミングを覚えて映画情報サイトの「映画生活」をリリースした。基礎的な知識がしっかりあったわけではないけれども、作っていく過程を経験したことで、何ができて何ができないか、という「仕組み」が理解できたのは大きな経験だった。

「やりたいことは何か」を見つけるために動け

山田:インターネットビジネスが好きだったので、内定を辞退してウノウを立ち上げたが、当時はサービスを作ることが本当に自分が一番やりたいことなのか疑問だった。飲食やリノベーションなど違った分野のビジネスにも興味があり、自分がやりたいことが見つけられていなかった。だから人を雇うということは一切しなかった。

2004年に、シリコンバレーに対するあこがれからアメリカに移住した。そのとき日本食料理屋の売却経験のある女性と出会い、新しいお店を立ち上げようとしていたのでその事業を手伝うことにした。

いざお店をオープンするときに「あなたもお店に出るわよね」と言われ、自分はお店を運営したいわけではなかったと実感。レストランなどの目の前にいるお客さんに対してサービスを提供するのではなく、何百万人以上もの人に使ってもらうためのサービスを作りたい、と気がついた。

自分はインターネットビジネスをやるべきだという強い思いと決意を持てたので、それ以外のことに対して意識を向けずにやりたいことに向かって集中することができた。

迷った時に信じた「世界へ発信するサービスを作る」というポリシー

山田:インターネットビジネスを始めるからには日本で作ったサービスを世界中の人に使ってもらいたいという思いがあった。帰国後は株式会社化し、人を雇って資金調達した。それまで運営していた映画生活以外にも、よりプライベートにも使える写真共有サービス「フォト蔵」を開発。15人規模の会社に拡大したが、なかなか成長の機会に恵まれず今後の方向性について考えていた。

日本の強みで世界に届けられるものはなにか。そこで、ゲームなどのコンテンツこそ世界に発信できるものだと着目した。モバイルビジネスの盛り上がりを予測し、モバイルとゲームを中心に事業を展開。mixiやmobageのオープン化などにともない「まちつく!」や「農園ホッコリーナ」などを開発して事業全体が急成長した。

機を見て事業の方向性を大きくシフトしたことにより会社の収益は増し、ソーシャルゲームの第一人者としてのポジションを獲得したのもこの頃。

会社としての独立性かビジョンの達成か

山田:ソーシャルゲーム会社として国内では急成長していたものの海外に出るためにはどうすればいいかは常に考えていた。Zyngaから買収のオファーがあったのは、まさにそんな時期だった。

判断の基準にしたのは、自分たちの資本の独立性を保って進むか、それとも会社のビジョンを達成するために行動するかだった。会社のビジョンは「世界中で使われるインターネット・サービスを創る」。

Zyngaの資本とパブリシティがあれば世界にいけるのではと考え、ウノウをZyngaに売却することを決めた。社内の人間も同じ考えだったので、買収されても辞める人間はほとんどいなかったし、文化的にも相性はよく、会社としてはうまい展開だった。あわせて投資家へのリターンもしっかりと返すことができた。

会社としての独立性か、他社の資本で海外に挑戦するかという課題は多くのスタートアップが抱えるものと思うが、最後は自分たちが「どう進んでいきたいか」を踏まえて行動してもらいたい。

中途半端な起業家になるな

山田:ところが結果的にZyngaでは日本発の世界的タイトルを出すことができなかった。なので辞めて、しばらく世界一周した後、今年2月に2度目の会社「コウゾウ」を立ち上げた。事業としてはスマホ×コマースの分野を攻めていく。もちろん、この会社も世界を目指して展開するつもりだ。

ベンチャー経営者にとって会社を成功させることは最も重要な仕事。そうでなければベンチャーをやる意味がない。しかし、現状をみると中途半端な成功で満足してしまうひとが多いように思う。中小企業的な意識でいてはいけない。成長を目指さず、ある程度の儲けが見えたときにハングリー精神がなくなるようではダメ。会社を急成長させなければ関わってくれた人たちに対して申し訳ないと考えるべき。

僕自身の2回目の起業も大きな勝負をかける意識だ。スクールにきている人たちとまったく同じフィールド。調達をおこない事業を展開していくのならば、ぜひ勝負をかけてもらいたい。

経営者は執行者であってはならない

山田:経営者が忘れていけないものは、会社としての方向性をしっかりと保つことだ。それ以外には力を注がない。マーケティングや広報なども、出来る人を集めてやってもらう。目の前のオペレーションのPDCAで日々改善をおこなっていくことは重要だが、そればかり見てると小さな改善で満足してしまいがちだ。経営者は執行者であってはいけない。

ベンチャー経営者は、いま作っているものの方向性が正しいかどうか常に疑いの目を向け、違っているならば直ちに軌道修正をしなければいけない。間違っているものに力を注いでも仕方がない。もちろん、出してみないと分からないものもあるが、リリース後も常に意識をもってサービスを見続けなくてはいけない。

決断をすることの重要性

山田:自分が腑に落ちてこうやったらこうなるだろうということを、失敗してもいいから予測しながら考え「決断すること」が経営者の仕事だ。腑に落ちないで誰かに責任を投げたり市場のせいにしてしまってはうまくいかない。

すべてを把握し責任をもって決断をしていく。パートナーから違った視点の意見をもらい参考にしながらも、最終的には自分が決めなくてはいけない。経営者としての決意と覚悟、そして決断の責任をもち、日本から世界に向けて発信できるスタートアップをぜひ目指してほしい。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する