今までにない理由を考え抜けば「自分のやるべきこと」が見つかる

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2013.9.29

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「二郎は鮨の夢をみる」。ーー銀座、数寄屋橋の地下にある鮨店、すきやばし次郎を追いかけたドキュメンタリーで、店主、小野二郎氏の究極ともいえる職人としてのこだわりを、海外の監督らしい視点で美しく、美味しそうに捉えていた。何度もみたくなる映像だ。

映画は二郎氏が自身の仕事へのポリシーというか、プライドのようなものを語りかけるところから始まるのだが、その言葉がシンプルだけど重い。

「仕事は好きでなくちゃいけない。仕事を好きにならなくちゃいけない」ーー

オンリーワンという存在価値も、このシンプルな考え方の積み重ねなんだなと気がつく。

本当に今までにないのなら、それはあなたの仕事だ

今週は多くの方々にお会いして沢山プロトタイプやコンセプトを取材させて頂いた。私はそのサービスのどこが独創的なのかを注意深く探し、世界初だというサービスが実は誰も使わないだろうことや、本当にこれまでなかった合理的な理由を聞いて、記事にしたりしていた。

ただ当然といえば当然だが、もう単なるコピペのサービスは大分少なくなった。大量のクーポン共同購入サービスやカメラフィルタアプリが出現したとき、その多くが「自分たちでなければならない」理由を持っていなかった。もちろんそうなれば消えるのも早い。ただ、今度は独創性を追求するあまり、ニッチに向かいすぎる傾向はあったが。

さて、そこであることに気がついた。

これだけサービスが飽和してる今の時代だからこそ、何か「これまでにない」やりたいことがあって、本当に合理的な「それがなかった」理由を説明できた場合、それはこの世で本当にその人(もしくはチーム)がやるべき仕事になるんだろうな、ということだ。

当たり前のような話だが、どういうことかもう少し進めてみる。

そのサービスが「ない理由」

これまでになかった理由を聞いていると、いくつかポイントがあるようだ。

技術やインフラの課題

過去、世界初といわれたような話題は大体この手のものだった。みんながスマートフォンを持ち出すようになって、アドテクのスタートアップは次々とイグジットしていった。これはスマートフォンという技術革新とモバイルインフラが発達した結果、これまでになかった市場が出来上がったことによる。

市場がない

ニッチを追い求めたら利用ユーザーは自分だけだった、というのは笑い話ではなく本当によくある。私たちSDはまさにそこに近いかもしれない。スタートアップやアジアの話題に興味がある読者は、まだまだ極めて限られた小さなエリアだ。そこでどうやって事業性を見いだせるか。市場がなければ投資家や事業家は目を向けない。

業界の商習慣や慣例

各種業界にはそれまでの商習慣というのがある。それを壊してまで新しいことにチャレンジしようというのはナンセンスだ。先日取材したマンションノートなんかはこの例に当てはまるかもしれない。わざわざ口コミなんてコントロールが難しいものを持ち出さなくても宣伝する方法はあるわけだから、需要があっても手を出さない。

アイデアが難しく面倒

優れたアイデアというのは地味なものが多く、積み重ねたノウハウは破られにくい。Cyta.jpはどこかの企業がやってそうなプライベートレッスンのサービスに見えたが、その裏では少人数で大量の講師と生徒のマッチングを可能にするマネジメントシステムとノウハウを数年かかって構築していた。想像を超えた手間と時間が見えたとき、諦める人は多い。

ーーこれだけサービスが溢れる中「おいしいアイデアがぽっかり空いてました」ということはまずない。

何らかのマイナス、もしくは超えられない理由があるのが普通だ。

結果的にこのマイナス要素を埋められる人というのは自然と数が少なくなっていく。

やりたい人と解決できる人というのは近くて異なる。このマッチングが成立した時、初めてそのサービスは立ち上がる。

だからスタートアップは難しい。

それでもあなたはやりますか?

なので、もしあなたが今、何か「これまでにない」解決したい課題があって、スタートアップしようと思っているのであれば、まずそれが今、この世にない理由を考えてみればいい。

ニッチすぎて誰も事業性を感じてなかったり、実はとんでもない時間のかかるサービスだったりするかもしれない。もしくは似たようなサービスが沢山あるけど、全て上手くいってない場合はラッキーだ。先人たちが身をもって「ない理由」を探してくれているからだ。

そしてその「ない理由」を自分でしか解決できない、もしくは他の誰よりも上手く解決できると思えたのなら、それはかなり高い確率であなたのやるべき事業だと思う。

私はこのSD(THE BRIDGEにもうすぐ変わるけど)をやるとき、全く同じコンセプトのものをやってる人がいる、もしくは出てくると思っていた。もっとうまく出来る人がいるのなら、それでいいと思ったこともあった。けど、出てこなかった。面倒だし儲からないのだ。

そこで初めて気がついた。これは自分しかやりたい人がいない仕事なのかもしれない、と。

重要なのは、やるべき事業と分かってボランティアのようなことを本当に好きでやり通せるかだ。

アイデアひとつで起業できる、なんて言われて久しいが、実際にやってみると奥が深い。本当の起業家は多分、こんなこと考えるまでもなく感覚でクリアしているんだろうけどね。

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