セカイカメラがサービス終了を発表、伝説に残るピッチを振り返る

SHARE:

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

頓智ドットが2008年の TechCrunch 50 で、スマートフォンによる拡張現実感(AR)ソリューション「セカイカメラ」を発表してから、もう5年以上も経過したとは信じがたい(上記ビデオ参照)。このピッチで、同社の井口尊仁氏は、“look up, not down” して、身の回りのあらゆるものにタグが見つけられる、スマホの使い方を提案した。しかし、残念ながら、頓智ドットのウェブサイトの発表によれば、セカイカメラはまもなくサービスを終了することになる。

2009年、私は井口氏にセカイカメラについて、インタビューする機会があった。畏敬の念さえ覚えさせる未来志向のサービスだった。現在では、井口氏は Telepathy へと身を移し、スマホを宙に構えるよりは、よりARには適した Google Glass のようなソリューションを提案している。[1] このメガネが成功するまでの道のりは依然長いが(Telepathy の話をするとき、これを「ベーパーウェア」だと言う人は多い)、私は井口氏がセカイカメラから Telepathy に移ってきたのを歓迎している。

同時に、いくつかの理由で彼のプレゼンテーションは特別な存在だ。

  1. 井口氏のプレゼンテーションは問題ない。ーー英語で話したりピッチしたりするとき、自信を失ってしまう日本のスタートアップが多い。私の知る日本人は往々にして完璧を求めたがるが、それが過ぎるのも上達する機会を遠ざけてしまう(ことわざで、「最善は善の敵」)。[2] たとえ英語がうまくなくても、話そうとする内容の要点をとらえるようにし、足りない部分は熱意で補うことだ。(自分のプロダクトに熱意が無い人は、即退場。)
  2. 影響力の強さ。ーーこの特別なプレゼンテーションから、どれほどの位置情報サービス、ARサービスが提供を受けたことだろう。どれだけの人が、似たようなサービスを作ったことだろう。[3]
  3. 欧米人は、日本のことが好きで仕方がない。ーーこのピッチで強調されたのは、頓智ドットが日本のスタートアップで、何かしら未来を垣間みられると思わせたことだった。2013年の現在でも、ロボット、新幹線、タコの看板、忍者、きゃりーぱみゅぱみゅなど、メイド・イン・ジャパンはクールで、未来を思わせるブランドである。この可能性がわからないなら、Tokyo Otaku Mode を見てみるべきだ。

Telepathy がプロダクトを市場投入できるかどうかについて、私は少し懐疑的だ。しかし、セカイカメラのサービス終了が発表されたのをふまえて、2008年の最初のピッチは、インターネット史上に残る面白い出来事の一つだったと言える。

日本のスタートアップが海外進出すると多くの障害に直面するが、同時によいこともたくさんある。

日本はクールであり、想像力に富んでいる。欧米社会は、日本のことが好きである。

iguchi_wearing_telepathy_one-620x348
Telepathy 井口尊仁氏

  1. しばらく使い続けると、腕がだるくなるのではないかと思う。  ↩
  2. TechCrunch 50 の Q&A セッションのビデオも見てみるとよいだろう。こちらもなかなか陽気で素晴らしい。  ↩
  3. 私は、京都の Yesterscape のファンだ。時を戻す面白い要素を持った AR ソリューションである。  ↩

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する