プロダクトを通じて世界をどのように変えたいか–リバネス丸氏が語る「ベンチャーに必要な熱量と事業運営における考え方」

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社会にどれだけ変化をもたらすことができるかを考えることは、ベンチャーにとって必要な要素だ。自分が社会に対してどのような価値を提供できるか、自分のプロダクトが世界に広まった時に、どのような社会になっているのかを想像することで、活動のモチベーションにもつながる。科学教育と人材育成を行っているリバネス代表取締役CEOの丸幸弘氏は、サイエンスやテクノロジーが広まった新しい世界を作り出すためにさまざまなアイディアを生み出し、日々行動し続けている人物だ。

同氏が語る「ベンチャーに必要な熱量と事業運営における考え方」についてまとめた。

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研究者と一般の人の差を埋めたい

リバネスは、2002年に理工系大学院出身の15人で設立した、科学教育と人材育成のベンチャー企業だ。時代に合わせて技術は進化しているのに、教科書はまったく変わっていない。そのため、研究者と一般の人たちの間には最先端のサイエンスやテクノロジーに関する認知の差が生まれている。そこで、最先端の知識に精通している大学院生が教育現場に情報を届けることに、価値が生まれると考えたのがリバネス設立のきっかけだ。

サイエンスやテクノロジーに関わる人たちが活躍できる社会へ

企業理念は、「科学技術の発展と地球貢献を実現する」ことだ。リバネスの社員全員が修士号もしくは博士号を取得しており、サイエンスが好きという共通項をみんな持っている。出前実験教室を通じて、研究室にこもって研究に没頭していた大学院生らを小中学校に派遣し、コミュニケーション能力を育成することで他の研究機関から声がかかり、博士課程終了の学生が就職できないという社会課題を解決している。世界の研究所とリバネスが連携することで、新しい技術をもとにした開発支援ができ、人材育成と新規事業の創発を促すこともできる。サイエンスやテクノロジーに関わるすべての人たちが活躍できる社会にすることが、リバネスの大きな目的だ。

自分たちにしかできないことをやる

ベンチャーとして必要な要素がいくつか存在する。一つは、自分たちにしかできないことを事業の柱にすることだ。リバネスは、民間企業が参入できなかった小中学校、高校への出前実験教室を初めて提供した企業だ。サイエンスの素晴らしさを伝えたいという思いがあったからこそできた事業だ。今では学校現場とネットワークができ、リバネスの事業全体の基盤となっている。

ただの下請けにならないこと

二つ目は、ただの下請けにならないこと。自分たちの強みが活かせる仕事を選び、自信と誇りを持って仕事に取り組もう。そのためには、プロジェクトの発注者と対等な立場でゴールを目指す関係でいなければいけない。契約条件も細部まで主張し、時に高額な案件でもただの下請けになるのであれば断るくらいの気概を持とう。

長期的な仕事を選ぶ

三つ目は、短期的な仕事ではなく長期的な仕事を選ぶことだ。過去に、100件の論文を読んで報告書を書くという案件や、50人の研究者インタビュー記事を書くという案件があったが、このような仕事は、リバネスにとって価値のあるもので、その後のリバネスの活動の大きな下支えとなった。さまざまな案件をベンチャーはこなしていかなければいけないが、仕事を選ぶ際に気をつけておきたいことは、関係資産や自身の能力向上などにつながる仕事は、仮に安価であっても自身の活動にとって効果をもたらす。逆に、高額でも自身の活動にとって意味が生まれづらい案件は受けないほうがいい。ベンチャーにとって、金銭的価値以上に長期的な資産となる仕事を選ぶことが大切だ。

ベンチャーは儲からないことをやろう

四つ目は、ベンチャーは儲からないことをやろう。大手がやらないことをやるのがベンチャーだ。儲かる仕事は参入障壁が低く大手も参入してくるが、儲からない仕事は参入障壁が高く、大手は入りづらい。ベンチャーは、儲からない仕事を試行錯誤して儲けられる仕組みにすることで価値が出てくるからこそ、率先して儲からない仕事を選ぼう。

1円でもいいからお金をいただくこと

五つ目は、どんな案件でも1円でもいいからお金をもらうこと。無料はいつまでたっても無料のままだ。大事なことは、お金をいただいたという事実が、相手と次の関係を築くきっかけとなる。そして、お金をいただいたら、1万円の仕事でも100万円くらいの仕事の価値を提供することで、次の仕事を引き出すことができる。

大切なのは、楽しむこと

ベンチャーで忘れてはいけないことは、とことん楽しむことだ。自分の好きなことをやったほうが絶対いいし、世の中のためになることをやったほうがいい。自分自身が楽しく、そして世の中をあっと言わせることができるかどうか。そこに楽しさを見出して行動してもらいたい。

プロダクトそのものではなく、プロダクトを通じて世界をどのように変えるか

ベンチャーとしてなにより大事なことは、あなたのプロダクトが世界をどのように変えるかだ。あなたのプロダクトやサービスそのものが売れることではなく、あなたのプロダクトやサービスが拡がり、変える世界が大事なのだ。

世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」からうまれる、ということを胸に刻んで日々を過ごしてもらいたい。

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