投資家は1回だけの出会いには投資しませんよーーキヨのシリコンバレー探訪記・BinPressインタビュー

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キヨのシリコンバレー探訪記は連続起業家の小林清剛氏がシリコンバレーでみつけた「気になる」スタートアップをインタビューする不定期連載です。毎回おひとりずつ、小林氏がみつけたスタートアップのサービス紹介とファウンダーの素顔に迫ります。

3回目となる本稿では、前回のAny.Do同様のイスラエル出身で、2010年創業のソフトウェアデベロッパー向けマーケットプレース「BinPress」の創業者兼CEO、Adam Benayoun氏にキヨが話を聞いてきました。

BinPressはオープンソースのプロジェクトをライセンス化しマネタイズすることができるサービスで、500 StartupsやScrum Ventures、FundersClubなどから投資を受けています。

Adam氏によると、現在約1000件ほどのプロジェクトがマーケットプレイスに存在しており、日本からのライセンスの購買もこれまでに100件ほどあったそうです。コンテンツの日本語化も進めており、将来より多くの日本のユーザーに使ってもらえるよう、準備中とのことでした。

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小林:はじめまして。まず、BinPressのサービスについて教えて頂けますか?

Adam:BinPressは商用オープンソースのマーケットプレイスで、ソフトウェアデベロッパーがオープンソースプロジェクトをマネタイズするお手伝いをしています。ライセンシング、SEO、マーケティングなどといった工程が、BinPressを使えばシンプルに実施できます。

小林:Adamさんはイスラエル出身者ですよね。海外からやってきてシリコンバレーでサービスをローンチする際、何が一番大変でしたか?

Adam:BinPressをローンチしたのは2年半前になりますが、会社はそれよりも前に資金なしでスタートしたんです。イスラエルで起業し、売上ゼロからスタートしましたが、徐々に(売上的に)安心できる状態になり、BinPressを次のステップに移行させるために資金調達の必要性を感じるようになったんですね。

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小林:シリコンバレーの方がイスラエルよりも資金調達などで有利と思って渡米した?

Adam:そうなんです。これまでも年に何度かはシリコンバレーには来てました。ただ、迅速に資金を調達し、人員やその他リソースを手に入れるための最善の手段はシリコンバレーに移転し、500 StartupsやY Combinatorといったアクセラレーターに入ることだと気がついたんです。

小林:そう思ったポイントは?

Adam:やはりネットワークを拡大し、多くの投資家に接触できる点ですね。そして500 StartupsとY Combinatorに申込をし、500 Startupsに参加することになりました。このアクセラレーターを通してファンドレイジングを始めて、結果的に当社が資金を調達できる程度になるまで育ててくれました。

小林:500 Startupsのスタートアッププログラムに入る最大のメリットってなんでした?

Adam:ここには多くのメンターがいるので、必要としていることを可能な限り助けてくれます。ただもちろん最後には、スタートアップは自ら前進しなくてはいけません。500 Startupsに受け入れられるということは、世界に何千とあるスタートアップの中で比べられ選ばれる、ということを意味します。つまり、優れているというバッジを身につけることができ、投資家に対しても広い門戸を開くことを意味します。これが一番目のメリットです。

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小林:なるほど、投資家からしてみればここには投資を求めているスタートアップしかいないわけですからね。

Adam:2番目のメリットは、スタートアップと投資家、スタートアップと多くの人をつなぐ指導者やパートナーの方がいることでした。これは素晴らしいことです。私たちは初日から投資家の方と話ができました。

またもう1つの側面として、一種の家族に入るというメリットがあると思います。500 Startupsには500社から600社のスタートアップがいます。彼らの多くは、将来私たちが必要とするかもしれない「何か」を持っています。同じ課題を解決してきた多くの人から回答を得ることができるという強いメリットがあります。

小林:ちょっと話を変えますね。Adamさんが米国市場で成功するために大切にしていることってなんでしょうか?

Adam:米国市場で成功するには「Think Big」つまり、大きなことを考えなくてはいけません。この国は大きな市場です。ここには50の州があり、人口は約3億人です。スタートアップをうまく運ぶとスケールできる環境がここにはあります。しかもその後にこの市場を飛び出して、ほかの市場へいける可能性もあるんです。

シリコンバレーを例にとると、ここには多くの富があり、多くのNGOがあり、多くの人材がいて、ここにいる価値は非常に高いと感じています。そして成功したいのであれば、多くの価値を生み出すことのできるスタートアップを創らなくてはいけないのです。

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小林:もうちょっと具体的なポイントを教えて頂けますか。

Adam:今の世の中から求められているスタートアップというのは、すでに自社の製品があって売上を計上できるところだと思います。パワーポイントの資料やちょっとしたアイデアだけで資金を調達できた7年前とは違いますね。

小林:御社のビジョンについて「大きく考える」点についても教えてください。

Adam:BinPressが目指しているのはソフトウェアのAmazonです。デベロッパーと彼らが作ったオープンソースを活用したい企業、組織がサービスの対象で、この市場が巨大であることは分かっています。市場を見渡すと、MySQL, MongoDBを作り出した会社の多くは合わせて70億から80億ドルの売上を毎年あげているんです。それでもオープンソース市場全体の1%にすぎないのです。

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小林:なるほど規模は大きいですね。

Adam:市場の99%は売上を計上していないことになります。彼らにはマーケティングの専門知識がなく、配信ネットワークがなく、その方法がわからないからです。それでこうしたデベロッパーたちに、市場の99%の人たちがMySQLや他の大手事業者が過去10年にわたって実践してきた同じ方法を採用してもらいたいと思ってサービスを提供しています。

そのためには持続性のあるオープンソースプロジェクトが大切なのです。ソースを使いたい会社がそれから受けられるメリット同様に、デベロッパーはインセンティブを貰うことで、持続可能的なオープンソースのエコシステムができるのです。この数字を、今後10年でこの業界にAmazonがいるという水準まで劇的に引き上げたいと思っています。

小林:日本という市場に興味はありますか?

Adam:日本のデベロッパーがアクセスできるサービスをつくる必要性を感じていて今、まさに全てのコンテンツを日本語に翻訳しています。理由も単純で、日本には多くの優秀なデベロッパーがいるからです。

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小林:おお、そうなんですね。

Adam:今後、日本の企業やデベロッパーがBinPressからオープンソースプロジェクトを簡単に購入し、活用できるようにしてもらいたいと考えています。翻訳の次は日本で、当社製品を使用してくれているソフトウェアデベロッパーのコミュニティを作ろうと考えています。おそらく将来はオフィスを構えるようになるでしょう。

小林:最後に、日本の技術系スタートアップの中には米国市場への進出を目指しているところもありますが、Adamさんから彼らにアドバイスをお願いします。

Adam:私が経験したことと同じアドバイスをしたいと思います。最初、私がシリコンバレーに身を置いたとき、1カ月滞在したあとすぐにイスラエルに帰国しました。そのあとまた1カ月来て、帰国するという具合でした。でも、この方法はうまくいかなかったんです。十分な期間、滞在しなければシリコンバレーの人たちとの関係を構築することはできません。

コミュニティの中に身を置いて人と知り合う。そして同時に進歩を見せる。これが大切なのです。投資家の方は1回だけの出会いには投資しません。だからシリコンバレーで過ごす長い時間が必要なのです。

ここにいることで他の優秀な起業家たちとも出会えますし、スタートアップは多くのエンジェル投資家にも会わなくてはいけません。アメリカ人の起業家だけでなく、イスラエルやインド、中国の起業家とも会えるでしょう。すると優れたものの見方ができるようになります。

最初は1カ月から2カ月の滞在からはじめて、次はもう少し長く滞在したり、最終的にアクセラレーターに参加したり、大グループの一員になったりすることは、ここ米国でのプレゼンスを高める点でとても重要なことだと思うのです。

小林:今日は長い時間どうもありがとうございました。

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