クックパッドダイエット、ルナルナ、handiii、FiNCーーデジタルヘルスの一線で活躍するプレイヤーたちがヘルスケアサービスの未来を語る

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グリーベンチャーズは1月22日、健康領域でスタートアップする企業を交えたイベント「Digital Health Meetup Vol.1」を開催した。

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同イベント内で開催されたパネルディスカッションには、「デジタルヘルス」領域で活動するプレイヤーたちがパネリストとして登壇。モバイル、データアナリティクス、クラウドソーシング、遺伝子検査、ロボティクスなど、多岐に渡って話が展開された。

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登壇したパネリストは、クックパッドダイエットラボ代表取締役 高木 鈴子氏、エムティーアイ ライフ・ヘルスケア事業本部 ルナルナ事業部事業部長 日根 麻綾氏、FiNC 代表取締役 溝口 勇児氏、イクシー 代表取締役 近藤 玄大氏の4名。野村リサーチ・アンド・アドバイザリー 澤山 陽平氏がコーディネーターを務めた。

デジタルヘルスはどこまでが事業範囲か?

澤山氏:ルナルナは長く事業を継続するなかで、かなり領域を広げてますよね。生理日予測の「ルナルナ」、妊活・妊娠・育児をサポートする「ルナルナファミリー」、ウェアラブルデバイスと連携する「カラダフィット」、遺伝子解析サービスの「DearGene」など。根底にあるテーマはなんだったんですか?やはりヘルスケア?

日根氏:ルナルナは最初からヘルスケアという意識ではやっていないですね。ルナルナは、初潮から閉経まですべての女性を対象として生理周期の予測サービスを提供していて、社内では子宮関連なんて言っています。会社全体のヘルスケアとしてはもう少し広いですが、それでも医療までは踏み込まないで、未病、予防といった領域で活動しています。医療機関へのつなぎ込み、連携などはあり得ますね。

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澤山氏:医師が質問に24時間以内に答えるQ&Aサイト「カラダメディカ」はかなり医療に近い立ち位置ですよね?

日根氏:そうですね。カラダメディカは医療の少し手前です。

澤山氏:クックパッドダイエットラボも女性のユーザが多いですが、健康やQOLを重視しているということも発信されていますよね?色々事業を展開する中で、軸はどこまでとっているんでしょうか?

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高木氏:クックパッドダイエットラボでは、専門家がダイエット指導をする「COOKPADダイエット」、生活習慣病発症のリスクが高いと判定された方の「特定保健指導」専用の「ウェルネスプラス」、その他6つのダイエットアプリを提供しています。色々提供していますが、ヘルスケアや健康というよりは、食べるということにフォーカスしています。

モバイルで可能になった「継続」

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澤山氏:FiNCはアプリを通じたダイエット支援や栄養士のクラウドソーシングなど色々な活動をされていますが、検査がスタートだと聞きました。事業の幅は広がってきていますが、どのあたりまで範囲だと考えていますか?

溝口氏:将来はスマホやタブレットなどのデバイスに、バイタルデータが集約される時代がくると考えています。すべてのパーソナルデータがモバイルに蓄積される。蓄積されたデータを使ったサービスを提供することを軸にしていきたいと考えています。ヘルスケアに限らず、抜けているのが「継続」という視点です。

澤山氏:「継続」ですか。

溝口氏:そうです。勉強でもそうですが、多くのプレイヤーの目はコンテンツに向いています。ですが、大切なことは継続するための仕組みです。継続することができれば成果が出ることは多いですから。これまではパーソナライズすることや、インセンティブを設計することにもコストがかかっていましたが、スマートフォンが普及したことで継続させるためにかかるコストが下がってきていると思います。

澤山氏:たしかに、教育とヘルスケアは似ていますね。継続のためには人が重要になるのかな、と思うのですが、管理栄養士のネットワークを作られている高木さんも、専門家の指導が重要になるとお考えですか?

高木氏:健康指導に関しては、デバイスを活用して提供するのが手っ取り早い気はしますが、現状、対面で専門家と話すのが一番早いという状態です。

ロボティクスとヘルスケア

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澤山氏:イクシーは、ロボット技術を活用して障がい者の人々向けに筋電義手を提供しているんですよね。

近藤氏:そうですね。「handiii」は、腕の生体信号を使って動かすことができる義手です。これまで義手は画一的なデザインのものしかなくパーソナライズはできておらず、かつひとつあたりの値段が150万円近くになるため、普及率が1%に満たないというのが現状です。「handiii」は、スマートフォンや3Dプリンターを使っていて、義手の価格を下げることに取り組んでいます。

澤山氏:今後も障がい者の方々向けにプロダクトを開発していく予定なんでしょうか?

近藤氏:デザインとロボティクスでどこまで人に精神的な高揚を与えたいと考えています。そのため、障がい者にかぎらず、人々が精神的に豊かになるプロダクトを作っていきたいと思っています。

デジタルヘルスは儲かるのか?

澤山氏:ヘルスケアというと大きなビジョンを描くことがありますが、理想を実現するためには一歩一歩進まないといけません。事業性の部分もかなり重要かと思いますので、そのあたりについてお話を聞ければ。

今後伸びるデジタルヘルス市場

高木氏:私は、デジタルヘルスの領域は今後もっと盛り上がるはずだと考えています。ヘルスケアに携わって十数年が経過しますが、以前と比較すると消費者の意識がかなり異なります。国の支援もかなり力が入ってきていますし、医療費の精算が主な業務だった健康保険組合も、健康増進を厚労省から課されてから活動を初めていて、市場全体が変わってきています。

溝口氏:マズローの5段階欲求と呼ばれるフレームでは、一番上の欲求が自己実現、その次が認知欲求と言われています。現在の若者にとって、その欲求を満たすための要素が車や時計といったものではなくなってきています。これらはマイナーアップデートと呼べるようなものが増え、コモデティ化が進んでいます。お金は持っていても、使う先がない。その流れの中で、自分の見た目にお金をかけ、いつまでも若若しくいることにお金を使おうという動きが見られます。また、こうした動きは、実体経済とつながりやすい。アプリだけだと月額数百円の課金ですが、実体経済とつながると桁が違ってきます。これからデジタルヘルスは伸びると思いますね。

澤山氏:「handiii」のようなロボティクスはどうでしょうか?

近藤氏:筋電義手の価格を下げることに成功したので、もっといろんな人に提供できると考えています。ただ、現状の1%に満たない普及率を上げるためには、国の福祉としてやる必要があると思います。その次に、さきほど溝口さんがおっしゃっていたように、一番上の欲求である自己実現の欲求を満たすことが可能なプロダクトを作っていければと思います。

データを「記録」する価値

澤山氏:ルナルナは最初から「記録」することにフォーカスしたサービスですが、なぜこれだけ広く受け入れられたのでしょうか?

日根氏:ひとつは継続性にあると思います。ルナルナは最初から継続することが前提のサービスで、元々存在していた欲求、習慣をアプリで便利にしたものです。一生の女性の月経回数は400〜500回と言われていて、そこに対する不便さをなくすことが受け入れられたのではと思います。

澤山氏:クックパッドダイエットラボでは、BtoCのビジネスとBtoBtoCのビジネスの両方を実施されています。この2つで顧客の特徴は異っていますか?

高木氏:特徴は異なりますね。特に継続のしやすさが異なります。BtoBtoCである「ウェルネスプラス」のユーザーで、健保組合経由で来る人は、「来ることを強制されている」こともあり、指導する側が悲しくなるくらい継続することが難しい。そのため、サービス設計自体も異なります。ただ、BtoCとBtoBtoCは互いを補っています。BtoBtoCで継続させることに苦労すると、BtoCのサービスの質がブラッシュアップされ、会社全体としてサービスが磨かれていると思います。

澤山氏:将来的に儲かるのはBtoCとBtoBtoC、どちらだとお考えですか?

高木氏:個人に受け入れられることがビジネスの基本だと思うので、BtoCではないでしょうか。

パネルディスカッション終わり

パネルディスカッションの終わりに、溝口氏は「ヘルスケアベンチャーは医療費問題などの社会的背景を見れば、最もイノベーションが起きないといけない領域」だとコメント。

高木氏も「色んな業態の企業がヘルスケアに参入してきたことが、ヘルスケアが盛り上がっている背景のひとつ。ヘルスケア領域は忍耐強くやらないといけない。忍耐強くて優秀な人たちがどんどん進出してきてほしい」と語った。

個人の健康というレベルから、国の医療費問題というレベルまで、ヘルスケアが関係する領域は広い。この領域に変化をもたらすヘルスケアスタートアップの登場と躍進に期待したい。

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