スマートな企業がデータをユーザに還元するべき理由

Brent Dykes氏はAdobeのCustomer Analyticsエバンジェリストで、Adobeの解析ソリューションに関するヴィジョンの指導と宣伝を担当している。ここ8年間は、企業レベルのWeb解析コンサルティングに重点的に取り組み、Microsoftやソニー、Dell、Comcast、Nikeなど、多数の業界のリーダーと協働してきた。Dykes氏は著述家でもあり、処女作『Web Analytics Action Hero』を最近、出版した。この本では、デジタルデータから実際の行動を促進できるアナリストになる方法を概説している。

via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “Discos Konfort“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

過去数年にマーケティング関連のカンファレンスに足を運んだことがあるなら、データこそがデジタル経済における貴重な資源であると耳にしているだろう。多くの企業がポイント制度やウェブ解析ツール、CRMシステムを通してこの新しいデジタル界の燃料を蓄積している。

ところが、そういったデータは表舞台に出てくることはない。自動化されたマーケティングが、どのようにデータを処理するのか消費者が目にすることはないのだ。広告や商品のオファーが最近の検索行動に何かしらの関係があるのだろうな、と思うことはあっても、それを目にするまでに実際に使われるアルゴリズムやビジネス戦略に触れることは決してない。このように、データに基づくマーケティングの仕組みが透明性を欠いていることで、消費者が企業に見張られてるような感覚を持つようになってしまった。こうして、ブランドと消費者の間に本来望まれていなかった気持ち悪さが生まれてしまった。データがブランドと消費者の溝を深く広げてしまうのではなく、両者をより密接にすることはできないものだろうか? その答えはどうも、単にデータを集めることではなく、共有することにありそうだ。

データを消費者のもとに還元する

顧客データは、インプットとアウトプット両方の性質を持つものとして双方向に行き来するべきだ。その結果、企業と消費者の両者にとって相互に有用なものとなるようなデータの循環が生み出されるという考えがある。以下に詳しく説明したい。

最近のことだが、Pandora Radioから興味深いメールを受け取り、データ循環の可能性を垣間見ることがあった。私はPandora Radioオンライン音楽サービスのヘビーユーザであり、様々なプロモーションメールを定期的に受け取っている。ほとんどは様々なアーティストの特集やアップグレードの勧誘なのだが、私が注目したのは以下のシンプルな3つのデータの観点を教えてくれたマンスリーメールであった。

1. 過去1ヶ月に聞いた曲数(214)
2. 過去1ヶ月にいいねした曲数(6)
3. お気に入りのチャンネル(Thievery Corporation)

これら3つの情報以外には洒落たチャートも何もなく、ただ1つ質問があるだけだった。「今月は何をする予定ですか?」それと、大きな「今すぐ視聴する」ボタンである。そこで私はこのメールの核心にあるデータを俄然知りたくなった。LinkedInが同じようなことをしているのはおそらくご存知だろう。何人があなたのプロフィールを見たか、あなたのネットワークに何人いるかといった統計情報を共有してくれる。どちらにしても、これらの企業はユーザが必ずしも見ることはないような個人データを共有しているのだ。これらの有益なデータは、多くの企業にメリットをもたらす可能性があるのではないだろうか。

企業と消費者の間でのデータの共有は今までになかった概念ではないが、主としてカスタマーサービスのためにこそあるものとされてきた。私自身がデータをもとにしたお知らせを受け取ったことがあるのは、口座残高が少なくなったときに銀行から送られてきたものと、家族のデータ使用量が制限を超えそうになったときに携帯電話プロバイダから送られてきたものくらいだった。

セルフサービス系のウェブサイトでは、アカウント情報のデータが表になっているものを上から下まで定期的に確認するようにはしているが、多くの場合、データが価値を生み出そうとする視点から私の役に立つように表示されたりまとめられたりしてて、先見の明のある分析がされていることはなかった。長く、データを共有することが顧客との関係を強化したり競争力をつけたりするための方法としては考えられてこなかったのだ。本質的には、データの共有はコストが高く、労働集約的なチャネル(メール、コールセンター、店頭での接客対応など)を顧客がなるべく使わないようにする手段であり、それ以上の意味はなかった。

企業としては、貴重なデータインサイトを顧客に開示することで、関係性を強化したり売り損じを減らしたり、商品やサービスの利用を増やしたりすることができる。私の中のデータオタクの血が騒ぎ出した。Pandoraが他にどのような統計情報を共有してくれたら、私とPandoraの関係がさらに価値あるものになるだろうかと考え始めた。

私が選んだアーティストやジャンル、サブジャンルの詳細情報を教えてくれたら、新しい音楽を発掘するのに有益だろう。時間帯ごとの視聴傾向や平均的なPandoraユーザーとの比較データがあれば、どれだけ私がこのサービスを活用しているかが分かるだろう。明らかに、Pandoraのデータには音楽サービスがユーザをもっと惹き付けるのに活用できるポテンシャルが残されている。

情報に通じたマーケターほどより良い選択ができるようになるのだが、それは消費者も同じことである。自動車メーカーならドライバーの運転の仕方をみてより良い運転手になるコツを教えてくれることもできるだろう(たとえば、本来使うべきときにはあまり使われない6速にギアを入れればx%のガソリンを使わずに済む、など)。Adobeのようなソフトウェアプロバイダであれば、あるユーザが使う機能と他のユーザの使い方を比較して、使われない機能の解説ビデオをシェアすることもできるだろう。どちらにしても、製品のユーザに情報が伝わり、企業は先を見越したデータ共有から生まれるポジティブなハロー効果によって得をすることになるのだ。

消費者から集めている、あるいは集めることができるデータを見て、どんなインサイトを消費者に共有することができるだろうか? そのインサイトから消費者はどんな利便性が享受できるだろうか? 企業はより多くの情報を共有することによってどのように利益を上げることができるだろうか? 競合他社の製品と自社のブランドや商品をどうしたら差別化することができるだろうか? データ共有の可能性に目を向けてみれば、顧客データから今よりもっと大きなリターンを生み出すことができるかもしれない。

データ共有には難題がつきものだ。顧客には知られたくない弱点や問題が露呈してしまう可能性がある。顧客が製品やサービスをどれほど非効率的に使っていても、あるいは誤用していても、顧客はそのことにずっと気づかず、そして企業の側はそれで大満足、という場合も中にはある。データが多すぎると顧客が混乱することもある。共有するデータと共有しないデータ、共有の方法、共有の頻度については、企業が注意深く選択する必要があるだろう。

データ共有を成功させるには、重要なメトリクスの識別、効果的なデータ視覚化の活用、ちょうど良い歩調の選択が非常に重要だ。企業はさらに、パーソナライズされたデータの共有に最適なチャネル(テキストメッセージ、モバイル向けアプリ、eメール、ウェブサイト、製品上に直接など)も決める必要があるだろう。

供給に限りのある化石燃料とは異なり、データは無限の資源であり、その拡大にはモノのインターネット(IoT)が不可欠だ。データがどんどん浸透していくにつれ、ブランドとの健全なデータの循環がデータ通の顧客からより期待され、価値あるものとみなされるようになるだろう。大事なのは、顧客のデータから企業がいかにして貴重な本質を引き出せるか、ということだけでなく、そのデータからどうすれば顧客にとっての価値を生み出せるかということである。

あなたの会社も、双方向での情報共有をどのように活用するか、新たに出現しているデータ循環をどうやって攻略するかという点について、プランを練り始めるべき時期にきている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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