
VR 業界は、深刻な「ニワトリと卵の問題」に取り組んでいる。市場、アクセスしやすいハードウェア、キラーコンテンツを解放するのは何か? という問題だ。シリコンバレーを拠点とする VR 企業の uSens(凌感) は、この質問の捉え方が間違っていると考えている。
誰もが VR の世界にはコンテンツが不足していると不満を漏らします。しかし、実際の問題は HMD(ヘッドマウントデバイス)です。これにはトラッキングセンサーがなく、誰も HMD の効果的な使い方を知らないので、このデバイスはまだ不十分なのです。
uSens でジェネラルマネージャーを務める Eunseok Park 博士は TechNode(動点科技)にこう語った。Park 博士は以前、Samsung でリサーチャーと国外 R&D ディレクターを6年務め、現在はシリコンバレーで uSens の事業拡張を手助けしている。
拡張現実(AR)と仮想現実(VR)向けに、手と頭を使ったトラッキングテクノロジーを開発している uSens は先週(1月第1週)、同社のテクノロジーが Epson の AR スマートグラスに対応できるようになったと発表した。Epson Moverio BT-300のデベロッパー版 AR スマートグラスは、uSens Fingo モジュールに USB 接続することで uSens のハンドトラッキング機能を追加できる。
Park 博士は次のように述べている。
HMD は、頭と手を使ったトラッキングテクノロジーを装備すべきです。当社は、この VR の世界にアイトラッキングとハンドトラッキングのセンサーで貢献できます。そして、VR 企業はさらに多くのユースケースやコンテンツを考案することができるのです。
uSens は昨年、VR・AR ヘッドセット向けのハンドトラッキングモジュール Fingo を発表した(価格100米ドル)。Fingo を使えば、VR・AR のヘッドセット企業は、テクノロジーリードスタッフを雇うことなく自社のヘッドセットに頭と手を使ったトラッキングテクノロジーを装備することができる。
新任のジェネラルマネージャーとして、Park 氏は2つのことに注力すると述べた。それは、uSens で中心となるコアテクノロジーを改善すること、もう一つは、AR と VR のデベロッパーを手助けしてソリューション開発に取り組むことだ。
今年、当社はデベロッパーキットをローンチする予定です。現在、HMD デバイスに当社のソリューションを装備してもらうよう OEM メーカーや VR ヘッドセット企業と交渉中です。(Park 博士)

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商機が増す2つの市場:VR アーケード市場とローエンドヘッドセット市場
2017年における VR への投資は前年と比べて減速すると見込まれているものの、VR の応用は発展を続けるとみられている。中国には巨大な VR 市場があり、それに加えてユニークな特徴がある。それは VR アーケード市場の急成長とローエンドヘッドセットの多様化だ。
VR アーケードとは OOH(家庭外)エンターテイメントのことで、マネタイズの機会をもたらしている。ハイエンドでパソコン対応の VR 体験は、中国にいる大部分の人にとってはまだまだ高価で容易にアクセスできるようなものではないため、VR アーケードは、平均的な消費者に対し平均レベル以上の厳選された VR コンテンツを提供している。
中国の VR でもう一つ興味深いのは、ローエンドヘッドセットの数が多いことだ。中国には100を超える種類の VR ヘッドセットがあり、そのほとんどが Google Cardboard と比べてローエンドモデルである。当初から市場をリードしている HMD メーカーには、3Glasses、DeePoon(大朋)、Baofeng Mojing (暴風魔鏡)などがある。
uSens は、この2つの市場で資本化する準備ができているという。TechNode の2016年「China Bang」で最も優れたテクノロジー系スタートアップに選ばれた uSens は、ヘッドセットそれ自体ではなく、VR ヘッドセット向けの VR トラッキングセンサーにフォーカスしている。
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多くのシリコンバレースタートアップは、ホームマーケットが安定するまで待ちの姿勢を取るが、uSens は違う。同社は2014年の設立後まもなく、中国市場に進出した。
事業開発部門を率いる Jan Olaf Gaudestad 氏は次のように述べている。
当社が中国に注力する理由は、当社がヘッドセットメーカーではなく、VR トラッキングテクノロジーの会社だからです。当社の目標は、このトラッキングセンサーをできるだけ多くのヘッドセットに搭載して稼働させることです。

uSens が目指す業界標準になるためには中国はとても魅力的な市場である。この国の VR 市場の成長は米国を凌駕しているからだ。
Jan 氏は次のように強調している。
Oculus や Leap Motion といった大手企業の存在する米国こそ VR の中心だと私たちは考えがちです。しかし、こうしたハイエンドのヘッドセットは一般向けに広く流通するものではありません。一方中国では、購入されるヘッドセットの絶対数は(米国より)相当多くなっています。多くの世帯がローエンドの廉価なヘッドセットを保有しています。当社のターゲットはこうしたローエンド、低価格のものですが、ユーザ体験を向上させるには、当社のテクノロジーが必要なのです。
Baofeng Mojing が2016年初めに公表した中国の VR ユーザ行動調査によると、これまでに一回でも VR ヘッドセットを使用したことのある中国人は1,700万人以上で、VR ヘッドセットを購入した経験のある人は96万人に及ぶ。潜在的なユーザは2億8,600万人、全人口の約5分の1の割合となっている。
中国には実に多くのヘッドセット企業がある。その理由は、OEM メーカーが VR ヘッドセットを製造している深圳にはたくさんのメーカーが集まっているからだ。中国の VR 企業の強みは技術力レベルというよりは価格競争力にあり、その多くが、モバイル VR に注力するという選択を行っている。
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