2019年のエンタメ・ファンビジネスは伸びるーーM&Aを経験した若き経営者が語る「買収を選択したワケ」/LOB代表取締役、竹林さん(リレーインタビュー)

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本稿は朝日メディアラボベンチャーズによる寄稿。運営するスタートアップ支援プログラム「Asahi Media Accelerator Program」では、シードステージからアーリーステージのスタートアップ支援をおこなっている

前回からの続き。本稿では3回に渡ってM&Aを経験した若手経営者にその理由と注目のトレンドをお聞きします。最終回はサムライト代表取締役CEOの池戸聡さんからバトンを受け取ったLOB代表取締役の竹林史貴さんです。

新卒でサイバーエージェントに入社後、2012年からスマホ広告「AMoAd」の代表取締役に就任。AbemaTVスポーツ局を経て、2016年にLOBを創業された人物です。2018年10月に楽天グループ入りを果たし、現在はグループ内で広告配信の基盤開発および事業開発に従事されています。(太字の質問は全て筆者。回答は竹林氏)

3回に渡って若手経営者のみなさんにM&A選択の理由をお伺いしています。竹林さんは昨年に楽天グループ入りされました

竹林:実は創業者である私の強みや経験(インターネット広告)を優先するか、ただただ自分がやりたい事業領域を優先するかで、創業当初からずっと悩んでは事業を潰したりピボットをしたりを繰り返してて、事業領域を明確に選定できずにいたんです。

サイバーエージェントグループでの活動を見ると広告一本のように思えて葛藤あったんですね

竹林:はい、最終的には広告とマーケティング領域に改めて軸足を戻して事業を考案する選択に至りました。そして2017年以降に広告テクノロジー関連のスタートアップを大きく成長させるためには、大きな企業との提携やグループ参画をした方が可能性が高くなると判断してグループ入りを決意したんです。

その選択をしたくてもできないスタートアップは多いです

竹林:もしグループ入りしなければ、OEM製品の提供にとどまっていたと思います。

確かに広告テクノロジーの会社として、大きなアセットを持つ企業とのシナジーを生む製品を作れることはなかなか経験のできることではありません。会社にとってもメンバーにとっても、もちろん私にとっても、良い成長と経験を得られる機会になっていると考えています。

竹林さんは大企業子会社の代表経験もお持ちで、さらに今回の創業、そしてグループ入りと様々なスタイルで組織を渡り歩かれています。スタートアップが大きな企業グループに入る際、留意すべき点はどこにあるでしょうか

竹林:「個社の存続」と「完全統合」のバランスには気を使うべきだと思います。つまり、買収の目的を双方ですり合わせて明確化し、統合する部分や協業する部分はどこなのかをハッキリさせるべきです。

具体的なポイントは

竹林:プロダクトが欲しいのか、人が欲しいのか、事業成長を加速する形のグループ入りなのか、などです。売却先の企業では就業規則、評価制度、給与制度、福利厚生、オフィスの場所、親会社の介入方法(マネジメント方法)など、スタートアップでは考えられないほど多数の盤石な(時にレガシーな)制度が存在しています。

大企業のこういった制度には参考になる秀逸なシステムと、受け入れづらい文化と両側面あると思うんです。しかし、買収で実現したいことはなんなのか?という目的が明確になっていて、統合のバランスを握っておくと、双方気持ちの良いグループ参画になると思っています。

特にチームに新しいルールの適用を求める際にも、目的の共有は大切になりますよね。ビジョンやバリューなどの話題に通じるところです。では逆に大企業側の留意点は

竹林:同じですね。買収目的の明確化とすり合わせだと思います。加えてこれができている前提だとすると「買収後にワクワクする仕事が提供できているか」だと思います。

買って終わりではない

竹林:M&Aがうまくいっている会社は、買収先の取締役の方々がそのままグループ内で活躍したり、場合によっては取締役に就任したりしているケースが多いように思います。事業の成長性やシナジーで買収の意思決定をするとは思いますが、入ってきてくれた彼らに、面白く大きいテーマの仕事ができる環境を用意してあげることで、買収後もビジネスマンとして成長できる環境と捉えてくれ、長く働いてくれるのではないでしょうか。

買収時のロックアップ期間が過ぎても人材として活躍している例を見ると確かによい買収だったと感じることは多いです。少し質問を変えて、これから買収が進むと考える分野を教えてください

竹林:エンターテイメント領域やファンビジネス領域は割とありそうな気がします。大手インターネット企業との親和性が高そう、というのが理由ですね。

大きなユーザーアセットを持つインターネットサービス企業と、ファンビジネスが提供するプラットフォームやサービスとのシナジー、VR/ARなどのエンタメコンテンツとのシナジーは容易に想像できるので、どのような形態のサービスモデルが成立し始めるのか、非常に楽しみです。

竹林さん自身は今後、どのような展開を考えておられるのでしょうか

竹林:楽天の広告ビジネスに携わっているので「巨大なアセットを使わないと実現・スケールしなかった広告ビジネス」を展開したいですね。スマホを始めとしたデジタルの広告配信面の伸びが鈍化している現在、よりリアルの場でのデジタルマーケティングの機会を広げていけるような商品を構想中です。

ありがとうございました。

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