Atomicoパートナーの岩田真一氏、プログラマー起業家/ソフトウェアスタートアップのためのファンド「MIRAISE(ミレイズ)」をローンチ

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MIRAISE を立ち上げた岩田真一氏(中央)と、同ファンド初の投資先となった、いまチカ の CPO Lifu Yi(伊利夫)氏(左)、Pegara CEO の市原俊亮氏(右)
Image credit: Masaru Ikeda

自らもエンジニア、起業家出身で、これまでに Skype Japan 代表取締役を務め、現在は Atomico のパートナーを務める岩田真一氏が新ファンド「MIRAISE(ミレイズ)」を立ち上げる。特にソフトウェアセントリックな、プログラマーやエンジニア自らが立ち上げたスタートアップに積極的にシード投資を行う。

現時点での出資者は、東京理科大学インベストメント・マネジメント、TransferWise 共同創業者の Taavet Hinrikus 氏など。資金払込日や出資契約の関係で全出資者の名前はまだ明らかになっていないが、錚々たる面々が名を連ねているようだ。また、ファンドには珍しく、多数のメンター陣がスタートアップや起業家の育成に協力する。

MIRAISE のメンターに就任するのは、

  • 坂本孝治氏(TBM 取締役 COO)
  • Zach Tan 氏(PROWLER.io、元  Infocomm)
  • 三島健氏(JTB Web 販売部戦略統括部長、元 Expedia 北アジア CEO)
  • 松村映子氏(連続起業家)
  • 首藤一幸氏(東京工業大学 准教授)
  • 海野弘成氏(Increments ファウンダー CEO)
  • 尾下順治氏(AXEL MARK CEO)
  • 佐々木康弘氏(Takram ディレクター、ビジネスデザイナー)  など

起業家が考え出した素晴らしいテクノロジーは、常に多くの投資家にポジティブに受け入れてもらえるとは限らない。時として投資家には投資家の事情があるだろうし、そのテクノロジーを投資家が理解できない場合だってあるだろうし、テクノロジーは素晴らしくてもビジネスモデルに難がある場合もあるだろう。シリコンバレーは投資家の層が日本より厚いためか、例えば、日本で資金調達に難航したテクノロジーセントリックなスタートアップを運営する起業家が、シリコンバレーでピッチしたところ二つ返事でタームシートにサインした、というような話も時に耳にする。

この傾向を語るには、Alphabet 傘下の X のプロジェクトとなった、東大発のロボティクススタートアップ SCHAFT のストーリーが好例だろう。アーリーステージで TomyK と常石パートナーズから資金を獲得した SCHAFT は、その後、Andy Rubin 氏に支援を求め Google に買収されることとなった。5年以上前のことで時代背景や資金調達環境は現在と異なるものの、長期的な展望が必要となるテクノロジーへの投資が軽視されがちなのは、現在でも助成金の減少など政府の姿勢変化などにさえ見え隠れする。加えて、テクノロジーの中でも、ことさらソフトウェアへの評価は見落とされがちだ。

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MIRAISE は、ソフトウェア起業家の発掘とシード投資を積極的に行う。これは、自身もプログラマで Skype を立ち上げた Niklas Zennström 氏が後に Atomico を立ち上げた思想にも合致するかもしれない(現在では、Atomico はミドル、レイターステージ以降の出資に参画することが多い)。千葉功太郎氏がドローンスタートアップに特化したファンドを立ち上げ、ユーグレナ・SMBC 日興証券・リバネスが足の長い投資が必要となるリアルテックに特化したファンドを立ち上げたように、ソフトウェアスタートアップに特化したファンドも有ってもいいのではないか、と岩田氏は MIRAISE に賭ける思いを語ってくれた。

今回、スタートアップ3社への出資も明らかになった。「GPU Eater」を開発する Pegara、店舗横断 CRM を開発する「いまチカ」、そして、エストニアにあるステルススタートアップ1社だ。Pegara は 500 Startups KobeTech in Asia Tokyo 2018 の Arena に採択されている。これらのスタートアップは目下追加の資金調達や PMF(Product Market Fit)を実施しており、現ラウンドがクロージングする際に改めてサービスの詳細をお伝えしたいと思う。

MIRAISE では今後、ファンドとしての資金調達を進めながら、毎月数社のペースで、国内外のソフトウェアスタートアップへの出資を展開していく。ソフトウェアに特化したファンドは日本国内はもとより世界的にも数が多くなく、アーリーステージのファンドが増えつつある領域においてもブルーオーシャンの状態を堅持できるだろう、と岩田氏の見通しは楽観的だ。Sergey Brin と Larry Page という2人のコンピュータサイエンティストが創った Google を、後に Eric Schmitt というビジネスのプロがスケールさせたことはあまりに有名だが、岩田氏は次代の Sergey や Larry の発掘を夢見ているようだ。

前述した岩田氏の長年の盟友である Niklas Zennström 氏は、MIRAISE のローンチに次のようなコメントを寄せている。

世界で最も大きな成功を遂げている企業のいくつかは若きエンジニアによって創立されました。一方で投資家サイドは彼らをサポートできるほど大胆であるかということには疑問を持ちます。

MIRAISE を創業した岩田は自身もエンジニア出身でテクノロジーに精通しており、スカイプジャパンの代表としてビジネス経験も豊富、そして投資家として Atomico で6年以上パートナーを努めています。

彼はこれらの経験を生かして、今の状況を変えようとしており、その姿勢に共感しています。

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