M&A支援のスパイラルコンサルティングがローンチ、バイアウトだけで終わらせない企業価値の向上で差別化を目指す

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左から:松栄遥氏(取締役)、太田諭哉氏(代表取締役)、土橋裕太氏(代表取締役)
Image credit: Spiralll Consulting

スタートアップのイグジット手段の一つとして M&A が増える中、そうした M&A を支援する企業も増えてきている。THE BRIDGE が最近取り扱った中では、TIGALAM&A クラウドFUNDBOOKM&A BASE といった名前が記憶に新しい。そして、今日また新たに M&A を支援する会社が本格的にサービスを開始する。

東京・渋谷に拠点を置き、関連会社や法人に会計サービス事業や税理士法人などを有するスパイラルグループは16日、企業の M&A 支援のための専門会社スパイラルコンサルティングを設立したことを明らかにした。

スパイラルコンサルティングの経営陣には、スパイラルグループの代表で公認会計士の太田諭哉氏のほか、ゼイヴェル(現在のブランディング)で girlswalker.com の初代プロデューサーを務めた後、自身が創業した育児支援サイト「ママスタジアム」をインタースペースに売却、最近まで satisfaction guaranteed の日本法人代表を務めていた土橋裕太氏が代表取締役に就任(太田氏と土橋氏による共同代表)。キーエンス出身で、2016年から日本 M&A センター(東証:2127)で多数の M&A 案件を手がけていた松栄遥氏が取締役に就任する。

スパイラルコンサルティングが特化するのは、企業価値向上に注力した M&A 支援だ。同社ではこのサービスを「SCALE」と名付けている。近年の M&A 支援が、バイアウトしたい創業者(売り手)と、そういった事業の買収に関心のある企業側(買い手)のマッチングに終始しているケースが多い一方、SCALE では創業者が一度事業を売却後に自ら出資し、企業価値をさらに高めるなどの形で新たなイグジット(IPO)を目指すという。

スパイラルコンサルティングの M&A 支援サービス「SCALE」と、既存類似サービスとの比較
Image credit: Spiralll Consulting

ここでポイントとなるのは、M&A を仲介する側、あるいは、買収する側の事業に対するより深い理解だ。

事業分野に詳しい人がアドバイザーとして中に入ることによって、見えてくる数字もある。その事業の歴史や将来のことを、半年や一年かけて見極め理解できないと、売り手に対しても事業の可能性を的確に説明できない。(土橋氏)

この仕組みを後ろ支えするのが、スパイラルコンサルティングが各界から集めた6名のアドバイザー陣だ。また、これまでに同社がスパイラルグループの事業の一環として手がけた M&A 支援の中には、M&A によって株主構成は変わったものの、創業者が経営者として、あるいは、アドバイザーとして事業に関わり続けるものもそうだ。

同社チームが関わった案件として、今のところ開示されている事案には飲食業が多いのだが、「つけめん TETSU」で知られる YUNARI はクリエイト・レストランツ・ホールディングス(東証:3387)に、「らーめん せたが屋」の運営会社せたが屋は吉野家ホールディングス(東証:9861)に、「めん徳二代目つじ田 金子半之助」の運営会社は PE ファンドのアドバンテッジ・パートナーズへの事業譲渡に成功している。いずれも創業者たちの当初売却希望額を上回る金額での売却を実現しているそうだ。

M&A 支援を売り切り、買い切りだけの関係で終わらせず、創業者に対して、その後のマネーフローも供給できるようなサービスをしていきたい。創業者には、別の会社のアドバイザーになってもらったり、売却益やアドバイザーフィーでお金が入ってきたり、(現在計画中の)ファンドに参加してもらったりすることも考えられるだろう。(土橋氏)

社会の高齢化が進む中で、現在は経営的に健康優良の企業が次を担う経営者を求めたり、事業承継してくれる企業を求めたりするケースは増える傾向にある。M&A やその後の PMI も含めてイグジット手段が多様化することは、この国の起業の気運の高まりやサステイナブルなビジネスの活性化にも前向きに作用するだろう。

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