
Image credit: Xmart
スタートアップスタジオ運営の XTech(クロステック)の子会社であるクロスマートは15日、飲食店とサプライヤーをマッチングするプラットフォーム「クロスマート」をローンチした。飲食店にに対しては食材などの仕入れコストの適正化できる機能、サプライヤーに対しては新規顧客を開拓するためのチャネルを提供する。
飲食店において食材原価は3割〜4割を占め(チェーン店舗においては、それより低い傾向にあるが)、仕入コスト削減は利益改善に大きなインパクトを与えるが、実際のところ、飲食店、特に小規模な店舗は付き合いのあるサプライヤー数社から仕入れていて、価格交渉などは効果的に行えていないのが現状だ。
クロスマートでは、ユーザである飲食店が現在仕入れで使っている納品伝票をスマートフォンのカメラで撮影、それをプラットフォーム上にアップロードするだけで、サプライヤーからよりよい条件提案を受けられる仕組みを提供。クロスマートに登録されているサプライヤーには、飲食店の名前が伏せられた状態で提案が促され、飲食店が価格提示を受けて合意すれば、サプライヤーに飲食店の名前が開示され、双方の具体的な交渉が始まる。

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一見すると、この分野で先行しているインフォマート(東証:2492)にも似ているが、インフォマートが飲食店とサプライヤーを結ぶマーケットプレイスを構築し、双方の業務全般を改善するソリューションを提供しているのに対し、クロスマートは飲食店とサプライヤーの繋ぎ込みに特化しているようだ。しかし、双方(特に飲食店側)のリテンションを確保するため、クロスマートでは半年に一度程度、飲食店にリマインドを送る仕掛けを計画している。
ホテルなどでは、半年に一度程度の頻度で、仕入れ先を見直す総チェックを行なっていて、この頻度はそれに倣ったもの。一度、コストの診断で使ってもらった飲食店にリマインドすることで、メニューを変えるタイミングなどで、クロスマートを再び使ってもらえるいい契機になる。(取締役 寺田佳史氏)
クロスマートの事業責任者を務める取締役の寺田氏は、サイバーエージェントで大手企業とのアライアンス事業や Facebook コマース事業に従事。その後、グループ会社のサイバー・バズでヘルスケアメディア「Doctors Me」を立ち上げた人物だ(Doctors Me は、2017年にアドメディカに事業売却されている)。
数ヶ月前にクローズドβ版としてローンチし、これまでに飲食店50店舗、サプライヤー10社が登録。β運用中には、仕入価格を平均で5%下げられることが実証できた。飲食店向けのオンラインサービス各社とのアライアンスにより飲食店を確保、サプライヤーについては、地道な営業展開に加えて、飲食店からの紹介も期待できるという。しかし、飲食店とサプライヤーの関係は信頼で成立しているし保守的な市場とも言えるだろう。前出のインフォマートのようなガリバーもいる中で、この市場に風穴を開けることは可能だろうか?

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飲食店とサプライヤーの契約はあくまで当事者同士のものになるが、現状、クロスマートは飲食店がユーザ登録した際に、飲食店が実在するかどうかのチェックを行なっている。今後、ネットプロテクションズなどを使った事前審査、データが一定量溜まれば、サプライヤーや飲食店の相互のレビュー機能なども充実させていくという。飲食店にとっては閉店時間中の食材納品のためにサプライヤーに店舗の鍵を貸すこともあるし、サプライヤーにとっては一定の掛売りが発生する間柄なので、この点は相互信頼確立のために気になるところだ。
飲食業界は IT リテラシーが高くないと言われたのも今は昔、若年層にスマートフォンやタブレットが浸透し、飲食店経営者も代替わりを迎える中で、この通説も変化してきている。長年の取引先は大事だが、オンラインプラットフォームを通じて、よりよい条件で新たな取引先と信頼を確立できるなら、手間は厭わないという新しい世代が飲食業のメインプレーヤーになりつつある。今秋予定されている消費税率のアップもまた、価格と利益を維持するため、飲食店には仕入コストを圧縮しようとするモチベーションとして働き、クロスマートにとっては追い風になるかもしれない。
クロスマートでは今後、サプライヤーの開拓を進めるため、カスタマーサクセス人材の確保に注力したいとしている。XTech 傘下にはクロスマートのほか、XTech Ventures、イークラウド、エキサイト、地球の歩き方 T&E、M&A BASE などが存在する。
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