ライドシェア・ドライバーの収入源を増やす米スタートアップ3選

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本稿は米国のスタートアップを紹介するメルマガ「From the Alley」編集部による寄稿。主要メディアではカバーされにくいアメリカの注目すべきスタートアップを紹介中

UberやLyftのライドシェア・サービスは2012年に導入され、2017年には約513憶ドルの市場規模に達した。この成長は留まることを知らず、2025年には約2兆5千ドルに成長することが見込まれている。 一方で、ライドシェアのドライバーに対する報酬は減少し続けている。

ドライバー収入減少の傾向

JP Morgan Chase Instituteの調査によると、ドライバーの平均月収は2013年に1,469ドルだったものが、2017年には783ドルまで減少し、実に約53%の減少になっているという。このドライバーの収入減少の主な原因は、ライドシェア市場の動きと共に急激に増加したドライバーの数である。例えば、全世界のUberのドライバーは、2013年から2017年の間で16万人から2,000万人まで急増している。ドライバーが急増する反面、UberやLyftの複雑で理解しにくい価格の算出方法によりライドシェアの価格が大幅に低下する結果となった。

ドライバーに対する規定も年々厳しくなっている。ニューヨークやシカゴなどの大都市では交通渋滞を緩和するため、追加料金を課するようになった。この追加料金はライドシェアの乗客が支払うが、総料金が高くなったためライドシェアの需要は減少している。

ドライバー収入低下問題は悪化する

アメリカのライドシェア市場はUber、Lyftの2社が占めている。両社ともブランド力と資金力を支配しており、競合他社は参入しにくい市場環境になっている。このダイナミクスが続く中、両社のビジネスモデルが大きく変革することは考えにくいため、ドライバーの収入減少は今後も続くことが見込まれている。

又、UberとLyftは2019年に上場し、上場会社として投資家から採算性のプレッシャーが強くなる傾向にある。既に、Uberは第二四半期決算で52億ドルの損失を計上し、7月にマーケティング部門で400人の人員削減が行われた。

この様な状況が続く中、ドライバーに対する新たな収入源のニーズは高まり、今後も新たなスタートアップが組成されることが見込まれる。

ドライバーを支援するスタートアップ3選

ドライバーにとってグッドニュースもある。それはドライバーを支援するスタートアップが数々とあらわれていることである。今回は注目すべきスタートアップを以下に紹介する。

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Cargo: ライドシェアのスナック販売

ウェブサイト:https://drivecargo.com

Cargoはスナック販売をライドシェア中に提供するニューヨーク発スタートアップ。同サービスを利用するドライバーはCargoが準備するキャンディー、お菓子、飲み物などの商品が入っている箱を車の中に置き、スナック販売の売上の一部を得ることができる。

乗客はライドシェア中にCargoの箱の中に欲しいものがあればCargoのアプリを使い購入する事ができる。ドライバーは売上の25%をコミッションと、各商品につき1ドルを得られる仕組みになっている。箱の中には無料のアイテムもあり、当アイテムに対してもコミッションを得られる。このサービスを利用する事でドライバーは月300ドルのコミッションを稼ぐこともできる。

注目すべき点はCargo の主な収入源は商品販売ではなく、食品ブランド等との広告収入である。そのため、ドライバーの売上による取り分は希釈化されない。

同社についての紹介記事はこちら

Vugo:車内のディスプレイ広告

ウェブサイト:https://govugo.com

Vugoはライドシェア車内でディスプレイ広告を配信するサービスである。ドライバーはタブレットを車中に設置し、Vugoのアプリを起動するだけで収入を得られる。

Vugoの広告収入モデルは簡単。Vugoは広告主と提携し、広告内容や条件を決め、広告の表示回数を基に広告収入を得る。ドライバーはVugoが得る広告収入の6割を受け取る事ができる。ドライバーの収入は広告の表示回数1千回に対して平均25ドルであり、月100ドル~300ドルを稼ぐ事ができる。

当サービスはただ広告を掲載するサービスではなく、乗客に対してもバリューを提供している。乗客は広告を挟んだミュージックビデオ、コメディー、スポーツ等あらゆるチャンネルを移動中に楽しむことができる。

同社のビジョンはライドシェアの料金が全て広告主にスポンサーされ、乗客が無料でライドシェアを利用できる環境を作る事である。

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Uzurv: 患者向けのライドシェア

ウェブサイト:https://uzurv.com/

ヘルスケア市場でもライドシェアのドライバーにとって収入を得るチャンスがある。Uzurvはハンディキャップのある人や病人などの乗客とドライバーを繋げるライドシェアサービスを提供する。

乗客はUzurvのアプリでドライバーを選び、必要に応じて配車の予約ができる。ドライバーは乗客の車の乗り降りなど、様々なニーズに対応する特別なライドシェアサービスを行う。このようなサービスは特殊であり、ドライバーは通常のライドシェアよりも高い料金を得る事ができる。

同サービスはドライバーに対して他の面でも有益である。それは乗客がドライバーを選べる事である。そのため、ドライバーはリピーターのお客を得る事も可能になる。このリピーターの乗客によりドライバーは安定したキャッシュフローを得ることができ、スケジュールも管理しやすくなる。また、Uzurvで働きながらUberやLyftなどのドライバーとして働くこともでき、更なる福収入源になる。

同社についての紹介記事はこちら

まとめ

ライドシェアの市場が成熟化する中、ドライバー収入減少の問題は悪化することが見込まれている。このような状況に直面するライドシェア会社もドライバー収入を増やす方法を検討せざる得ない(Cargoは既に2018年にUberと提携している)。この問題を解決しようとするアーリーステージのスタートアップは今後も増えると考えられるので、引き続き注目すべきだろう。

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