シェアサイクルの悪夢は電動スクーターでも再来するのか

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ピックアップ:Remote-controlled scooters are coming, and Tortoise is (slowly) leading the charge

ニュースサマリー:10月11日、カリフォルニア州サンフランシスコにおいて新たに3つの電動スクーターに対しパイロットプログラムの運用許可が下りたことが公表された。認可が下りたのはUber運営の「JUMP」、「Lime」、Ford運営の「Spin」の3社となる。既に許可を得ていた「Scoot」を加えると、合計4社が市内において運営することとなる。

サンフランシスコ市では昨年6月ごろより、ダウンタウンにおける電動スクーターのオペレーションを完全認可制に切り替え、パイロットプログラムを市主導にしていた。今回許可を得た3社は、500台のスクーター導入を許可されている。

また、既に運営を開始しているScootは現在1,250台までの運営許可を得ているとしている。そのため、最大でも2,750台のスクーターを市内で利用することが可能となりそうだ。

話題のポイント:「ラストワンマイル」をキーワードに、欧州から広まりだした電動スクーターの波。以前デンマーク・コペンハーゲンを訪問した際、見事なまでに電動スクーター文化が街中に浸透していたのには驚きました。

一方、米国に目を向けるとスクーター専用レーンなどの整備はされ始めているものの、まだ完全に受け入れ態勢が整っているとはいいがたい状況です。

テクノロジーの聖地、サンフランシスコでさえ市がスクーターの運営を認可制にしたように、街自体がまだスクーターに対し「拒絶心」を持っているように感じます。

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Lime

サンフランシスコ市の公衆衛生局、並びにザッカーバーグ・サンフランシスコ病院による研究によれば、2018年においてスクーターを起因とした事故は少なくとも32件起きており、特に複数企業が参入し始めた5月に最も多く発生していたそうです。

事故の主な原因には、スクーター同士の接触や車への衝突などが報告されていますが、こういった事故は交通整備が進めば改善していくのではと思います。

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では、なぜ米国においてスクーターに対する「拒絶心」がどうしても抜けないのでしょうか。これにはシェアサイクリングの悪夢が再来する恐怖があるからかもしれません。

既に街中では当たり前の姿になったドッグレス型シェアサイクリングですが、「シェア」であることを理由に乱暴に扱われ、悲惨な姿で放置された光景を目にします。これはもちろん地域により差はあるかもしれませんが、明らかに道のど真ん中に駐輪したり、邪魔だからと蹴り飛ばしている人を見ることも数多くあります。こうした光景を二度とみたくない感情を市民が抱いているため、電動スクータの普及に拒絶反応があるのではないでしょうか。

https://twitter.com/drivingmzstacey/status/1058089387798355968?s=20

もちろん時代が変われば、人の移動手段も進化を遂げていきます。そのため、いずれは自動車も本当の意味で「自動な車」に全てが入れ替わり、ラストワンマイルを目的とした自転車・スクーターも発展を遂げていくでしょう。放置スクーターも技術の進歩と共に解決されるかもしれません。

この点で面白いと思ったスタートアップを最後にご紹介します。元Uberの重役を務めたDmitry Shevelenko氏が立ち上げた「Tortoise」というモビリティー企業です。同社はスクーターに「自動運転」の技術を授けようとしています。

同社はスクーター自体は製造しておらず、既存スクーターへAdd-onの形で自動運転機能を付け足すのですが、面白いのは車における自動運転の定義とは違い、同社の自動運転機能が働くのはユーザーの運転終了後から。つまり、返却を自動でやろうという試みなのです。

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駐輪許可を得ているエリアや、公共交通機関ハブ、また将来的にはオンデマンドで自宅前まで移動させることを目指し、放置スクーター問題の解決を目指します。Tortoiseによると、初期段階は人の手を介した半自動でスクーターの移動をさせるとしています。

「Tortoise」は日本語で「陸ガメ」。移動速度は速くはないけれど、着実に少しずつ目的地へ向かうという意味合いが込められているのでしょうか。自動運転スクーターが、アメリカからシェアエコ恐怖心を取り払うことが出来るのか。SFにスクーターが再上陸するこのタイミングは非常に重要な局面に差し掛かっているといえるでしょう。

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