2020年に注目すべき国内ブロックチェーン企業10選

SHARE:
abstract art blur bright
Photo by Pixabay on Pexels.com

2019年は、世界的に「ブロックチェーン」というムーブメントが改めて大きく注目された年だったのではないでしょうか。

少し振り返ると、まず何と言っても、最も大きな話題となったニュースはFacebookのステーブルコイン・プロジェクト「Libra」の発表です。そして国家首席・習近平氏の「ブロックチェーン推進」発言や人民元デジタル通貨構想など。ブロックチェーン業界外の人々からも目を引く大きなニュースがいくつかありました。

これらの大きなブロックチェーン関連のニュースが業界を大きく賑わせた2019年でしたが、年末ということで、本記事では2020年以降に飛躍が期待される国内のブロックチェーン・ベンチャー企業を10つ紹介してみたいと思います。

※国内には数多くの有望なブロックチェーン関連企業がありますが、本記事で紹介するのは、特に以下の特徴を満たしていると見受けられるベンチャー企業です。

  • 国内発であること
  • 独自のプロジェクトを開発・提供していること
  • 創業から数年の、独立したベンチャー企業であること
  • 実績(調達・ユーザー数・提携など)があること
  • パブリックチェーン領域により近い事業を行なっていること

1. LayerX

概要:ブロックチェーン・プロトコルの研究開発・金融機関向けコンサルティング

Screenshot 2019-12-17 at 1.03.53 PM.png
Image Credit : LayerX

「Layer X」は、ブロックチェーンのプロトコルレイヤーの研究開発や金融機関向けコンサルティング、システム開発・企画・運用などでいくつかの実績を残しています。

研究開発の実績としては、1つ目にEthereumブロックチェーンの合意形成プロトコルの技術「CBC Casper」に関する研究を評価され、Ethereum Foundationから日本で初めての助成金獲得を達成しています。そして2つ目に、秘匿化ブロックチェーン「Zerochain」の研究開発においても、Web3 Foundationから助成金を獲得しています。

また、事業支援・コンサルティング面では、日本Microsoftなどの企業らと提携を行なっており、つい先日にはMUFGによる次世代金融サービス構築に向けた実証実験に際した協業を発表しています。

創業からわずか約1年半にも関わらず、研究開発・ビジネスの両輪においてここまで推進力のあるブロックチェーン企業は国内でも珍しく、翌年以降のさらなる飛躍に期待が高まっています。

<参考記事>

2. BlockBase

概要:NFT交換マーケット「Bazaaar」開発・非金融領域コンサルティング

Screenshot 2019-12-17 at 1.02.22 PM.png
Image Credit : BlockBase

BlockBaseは、研究開発・ビジネス(コンサルティング)両面で事業を展開するベンチャー・企業です。同社は昨年8月に設立され、シード向けベンチャー・キャピタル「NOW」により資金調達を実施しています。

研究開発領域においては、今年1月、ブロックチェーン技術を用いて発行されるNFT(Non-Fungible Token)トークン(デジタルなアイテムなど)を交換できる取引プラットフォーム「bazaaar」を公開しました。

※NFT(Non-Fungible Token):代替することができない独自性を備えたトークンのこと。

また5月、NFT取引マッチング・プラットフォーム構想が、分散型取引プロトコルを開発する「0x」のアクセラレーション・プログラムに採択されて助成金を獲得。インターネットメディア・ソーシャル事業を手掛けるモバイル・ファクトリー社との、ブロックチェーン事業の開発・推進に関する業務提携を発表しています。

先述のLayer X社と同様に独自のサービス開発及びビジネス・コンサル事業の両方を推進する同社ですが、対照的な点として、Blockbase社は主にブロックチェーンの非金融ユースケースの創出にフォーカスしている点が挙げられます。

<参考記事>

3. Nayuta

概要:ビットコインの処理能力向上を目指す2ndレイヤーソリューション「Lightning Network」

Screenshot 2019-12-17 at 1.00.58 PM.png
Image Credit : Nayuta

Nayuta社は、主にビットコインの2ndレイヤーの決済処理能力向上技術「Lightning Network」の研究・開発を行う、福岡を拠点とするベンチャー企業です。2017年にジャフコらから1.7億円の資金調達を実施しています。

Lightning Networkはビットコインの決済処理能力向上手段として、現段階で最も可能性のある技術として知られています。同社は早い時期から同技術の研究開発に開始し、世界的に競争力のある企業として知られています。

今年5月、同社は「Lightning Network」を用いたリアルタイム決済を実店舗へ導入し、1か月間の試験運用実施を発表しています。なお、同アプリケーションの実装には同社が開発するLightning Network実装OSS「Ptarmigan」を使用しています。

また12月9日、ビットコインのLightning Network決済に対応し、かつビットコイン・フルノードとしても機能するモバイルウォレット「Nayuta Wallet」(Android対応)のリリースが公表されました。

Lightning Networkの研究開発をメイン事業とする同社は、将来的には同技術をIoT分野で実装することを目指しているといいます。

<参考記事>

4. Chaintope

概要:パブリックブロックチェーン・2ndレイヤー研究開発・サプライチェーン・地域通貨など

Screenshot 2019-12-17 at 12.54.00 PM.png
Image Credit : Chaintope

Chaintopeはブロックチェーンのプロトコル及び2ndレイヤー技術開発など、高い技術力をベースにしたR&D事業を主軸に、他にもサプライチェーンや地域通貨プロジェクトの開発支援、エンジニア教育など幅広く事業を展開するブロックチェーン企業です。

福岡を拠点に、マレーシアにもオフィスを構え、新興国におけるビジネス展開も行なっています。2018年9月にはANRIよりシリーズAにて1.1億円の資金調達を実施しています。

これまで同社は、ビットコインの2ndレイヤー技術Lightning Networkを拡張し、高速処理が可能なトークン・コイン発行プラットフォーム「Inazma」、ブロックチェーンの透明性を活用したサプライチェーン・ソリューション「Paradium」などを開発・提供してきました。

また同社は先月11月に、誰でもネットワークに参加できると同時に、より効率的かつ迅速に社会実装を進められるようなガバナンス設計がなされたパブリック・ブロックチェーン「Tapyrus」を発表しました。複数企業により利用される単一のブロックチェーンとして、商用化が期待されています。

<参考記事>

5. Cryptoeconomics Lab

概要:Ethereum処理能力向上を試みる2ndレイヤーソリューション「Plasma」

Screenshot 2019-12-17 at 1.07.09 PM.png
Image Credit : Cryptoeconomics Lab

Cryptoeconomics Labは、パブリックブロックチェーンの2ndレイヤーの処理能力向上技術「Plasma」を研究・開発しています。ちなみに同社も、NayutaとChaintope同様に福岡を拠点とする企業です。

同技術はEtheruem創設者のヴィタリク・ブテリン氏らによって考案され、世界中に研究組織が点在していますが、現在同社はPlasmaの開発コミュニティをリードするポジションにまで成長しています。

際立った実績としては、中部電力と共同で行われた、Plasma技術を活用した個人間電力取引システムの実証実験などが挙げられます。また上述のLayer X同様、Ethereum Foundationから、Plasmaの研究開発に対する助成金を獲得しています。

加えて、元々PlasmaはEthereumブロックチェーンの処理能力向上技術として発案されたものの、同社は今年夏にTezos財団からの助成金も獲得していることから、Plasmaをパブリックチェーン共通の2ndレイヤー技術へと押し上げる取り組みも行なっていることが分かります。

※Tezos : ビットコインやEthereumの問題点を解決する別のパブリック・ブロックチェーン

<参考記事>

6. Stake Technologies

概要:Substrateブロックチェーンの処理能力向上技術「Plasm」

Screenshot 2019-12-17 at 1.14.52 PM.png
Image Credit : Stake Technologies

Stake Technologiesが開発・提供するのは、誰でも独自ブロックチェーンを構築できるフレームワーク「Substrate」のパフォーマンス(トランザクション処理速度)を向上させることを目的とした独自ブロックチェーン「Plasm Network」。

Plasm Networkに関しては、先日テストネットをローンチしたばかりですが、来年以降の商用化に向け高いスピードで開発が進んでいます。

また、これまで同社は世界最大級のブロックチェーン財団「Web3 Foundation」から3度に渡って助成金を獲得しています。(そのうち1つはLayerXの「Zerochain」と同様の助成金プログラムから)

ちなみに、同社のPlasmは上述のCryptoeconomics Labが開発するPlasmaに影響を受け設計されたプロダクトです。実際、両社は提携を実施しており、知見・技術に関してEthereumに強いCryptoeconomics Labと、Substrateに強い2企業で協力することで、ブロックチェーン処理速度の低さといった問題の解決を目指しています。

<参考記事>

7. EtherSecurity

概要:ステーキング「Stir Network」・リサーチラボ「Token Lab」・メディア「Stir Lab」

Screenshot 2019-12-17 at 1.20.48 PM.png
Image Credit : Stir

EtherSecurityは、主軸事業としてパブリックブロックチェーンのノード運用サービス「Stir Network」を開発・提供しています。同社は今年6月にはEast Venturesからシードラウンドで数千万円の資金調達を実施しました。

近年、数多くのブロックチェーンが、合意形成アルゴリズムとして PoS(Proof of Stake)を採用し始めています。PoSでは、参加するノードは仮想通貨のステーク量(保有量)に応じて報酬を得やすくなります。

Stir Networkが行うのはそのノード運用受託サービスで、顧客から仮想通貨を預かりステーキング代行を行うことで、手数料という形で利益を生み出します。

運営企業EtherSecurity によれば、Stir は現在、Tezos、Cosmos、IOST といった仮想通貨の DPoS(委任 PoS)と、NEM の SuperNode 運用に対応しています。今後は Ethereum、Polkadot、NEM2 への対応も行う計画です。

また以前から「Stir Lab」の運営を行なっているのに加え、先月にはリサーチ・コミュニティ「Token Lab」を事業譲受していることから、メディア事業の拡大・多角化も行なっていることが分かります。

<参考記事>

8. HashHub

概要:コワーキング・スペース・Lightning Network・ステーキング・オンラインサロン・コンサルティング

Screenshot 2019-12-17 at 1.25.36 PM.png
Image Credit : HashHub

HashHubは、ブロックチェーン企業向けコワーキング・スペースを主軸事業として提供する企業として、昨年7月ごろにスタートしました。現在では独自のLightning Network関連プロダクトの開発をはじめ、ステーキング・リサーチラボ・エンジニア教育・企業向けコンサルティングなどの分野にも参入し、事業の多角化を図っています。

独自プロダクトに関しては、Microsoft社との提携を通したAzure Marketplace上でLightning Networkの決済と開発ソリューションを可能にする「LN on Azure」の提供などがあります。

また今年9月には、Ethereum共同創業者のJoseph Lubin氏がCEOを務め、世界的にもブロックチェーンをエンタープライズで利用する取り組みの実例数が最も多い企業の1つ「ConsenSys」との提携を発表しています。日本国内で、同社の法人向けソリューション導入をサポートし、日本のブロックチェーン産業の推進を目指すそうです。

未だコワーキング・スペース企業だという印象も強いですが、実際、今では業界内でも最も幅広くブロックチェーン関連事業を展開できている企業の一つだと見受けられます。翌年のさらなる成長が期待されます。

<参考記事>

9. StartBahn

概要:アート×ブロックチェーン

Screenshot 2019-12-17 at 1.43.34 PM.png
Image Credit : スタートバーン

スタートバーンは、アート領域にブロックチェーンの活用を試みる稀有なスタートアップです。「新時代のアート流通・評価のインフラを構築し、アートの可能性を拡げる」ことをビジョンに、自社プロダクト開発・アート展示会の企画及び運営・アート関連ビジネス向けのエンタープライズ・ソリューションなどの事業を展開しています。

メイン事業である「startbahn」は、アート作品の登録・売買機能を提供すると同時に、ブロックチェーンの技術を用いた「改ざんや紛失することなく、永遠に作品の価値が残る」作品証明書発行・来歴証明が可能なサービスです。

またエンタープライズ向け領域では、「SBIアートオークション」やウェブメディア美術手帖の出版企業「BTCompany」などに対しサービス提供を行なった実績を持ち、国内のアート市場活性化に貢献しています。

世界的に見ても、アート×ブロックチェーン領域に取り組むスタートアップは珍しく、日本ではStartbahnが間違いなくその代表的プロジェクトとなっています。アートは真贋証明や流通の透明性の部分でブロックチェーンの応用が期待される分野であり、今後の同社の成長に大きな期待が集まっています。

<参考記事>

10. doublejump.tokyo

概要:世界最大のブロックチェーン・ゲーム「My Crypto Heroes」

Screenshot 2019-12-17 at 1.51.10 PM.png
Image Credit : doublejump.tokyo

doublejump.tokyoは、ブロックチェーンゲーム開発企業であり、取引高・取引量・DAUで世界1位を獲得したブロックチェーンゲーム「MyCryptoHeros」を提供する企業として、国内ブロックチェーン・ゲーム業界を牽引するスタートアップです。

昨年12月にはgumiより2億円の資金調達を実施し、業界初のテレビCM放送を行っています。また今年に入ってからは、「Coincheck」や「Deccuret」などの仮想通貨取引や、手塚プロダクションとのコラボ企画を連発するなど、事業拡大を目指し様々なチャレンジを実施しています。

著名VCのa16zは、パブリック・ブロックチェーン領域で最初に立ち上がる主要分野として、「分散型金融」・「Webインフラストラクチャー」・「ゲーム」の3つを挙げています。そのうち、デジタルアセット分野の主要活用例はゲーム領域なのですが、日本国内発のプロジェクトが、その領域で世界で首位の位置につけている事実は、驚くべきことです。

<参考記事>

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録