2025年に空飛ぶタクシー実現目指す「Lilium」が描く“街と大自然を20分でつなぐ”生活

SHARE:
Lilium
Above: Dr. Remo Gerber, chief commercial officer at Lilium, speaking at the Slush technology conference in Helsinki, Finland.
Image Credit: Slush/Riikka Vaahtera

※本記事は提携するVentureBeat「Lilium flying taxis go live in 2025: ‘This is how you’re going to experience the future’」の抄訳になります。

もし“空飛ぶタクシー”という「Lilium」のビジョンが数年以内に達成されれば、都市と移動の概念を根本から変えることになるだろう。車や電車と違い、これが実現すれば移動手段がさらに多様になるはずだからだ。

Liliumはこのビジョン実現を目指し、数年以内の商用化を目指していると同社CEOであるDemo Gerber氏が予想している。仮にLiliumの構想が実現すれば、必ずしも職場から近くに住む必要がなくなり、既存公共交通機関と同程度の価格帯で高速・遠距離移動が可能となる。

CEOであるGaber氏はフィンランド・ヘルシンキで開催されたテック系イベントSlashにて、自社が目指す未来について次のように説明している。

「私たちは移動の概念を根本的に変えていくことを目指しています。特に遠距離に住む人たちを対して、いかに早く移動可能な環境を提供できるかが求められていると考えます。こうしたニーズを実現すれば、世の中にとって新たな可能性が生まれることになると信じています」

Liliumはドイツ・ミュンヘンを拠点とするスタートアップ。空飛ぶタクシーを開発する企業の中でも電動自動運転が特徴。同社は2017年に初めて実証実験に成功し、その後数か月で9,000万ドル以上の資金調達に成功している。今春には5人乗りの空飛ぶタクシー構想を公開した。

The Lilium Jet

Lilium

Liliumは2014年に創業し、当初は30人の従業員だったが現在では400名ほどまで成長している。同社が開発する5人乗りの空飛ぶタクシーは、最速185マイルで最大185マイルを1回のバッテリー充電で飛行できるという。翼とエンジン設計に力を入れており、パワー消費を限りなく抑えられているとのこと。また、離着陸は垂直型を採用しているため、飛行機のような滑走路も必要ない。

同社は米国ならびにヨーロッパでの商用利用を目指し、ライセンス取得に向けて力を注いでいる。一方、エンジンの騒音を極力抑えた機内体験を目的とした研究を続けているという。

Gaber氏は「私たちが作っているものは、我々の生活を騒音によって阻害するものではありません。住んでいる場所に関係なく、あなたの職場近く数百メートル以内の範囲まで送り届けてくれるでしょう」と述べる。

Flying taxi network

Gaber氏によれば、空飛ぶタクシーの強みはインフラ構築コストが比較的安く済む点にあるという。それに反して、高速道路などは大きな投資と時間を要するにも関わらず、限定的な通路しか作れないため非効率だと考えを述べている。

大都市圏では高層ビルや公共駐車場などの既存インフラストラクチャーを利用し、Liliumの空飛ぶタクシーが着陸できるようなパッドの設置を実施していく。Gaber氏によると、未だ価格設定の段階に入っていないものの、年間で数百万人の移動客にサービス提供することを目指すとのこと。

また、同社では一般的なMaaSのようにスクーターやライドシェアなどラストワンマイルを含めた設計になることが予想されている。アプリ1つあればラストマイル移動もできる。

Lilium flying taxi
Above: Gerber stands in front of the concept for a flying taxi takeoff pad. Photo by Riikka Vaahtera.

Liliumは都心部だけでなく、あまり交通インフラが発達していない郊外もサービス対象地域として検討している。たとえばフランスのピレネー山脈地域では最も近場の街、トゥールーズまで2時間のドライブが必要。しかし、理論上では空飛ぶタクシーを利用すれば30分でたどり着けることになる。

そこまで需要の多くない街と街の間に道路を作るため、交通インフラ整備のためのインフラ投資をするのは効率的でない。だが、空飛ぶタクシーであれば着陸可能地域とパーキング対応拠点を整えるだけでサービスの運用が可能となる。

Gaber氏は個人の夢としながらも「ワクワクするテクノロジーの中心にいたいと思いつつも、自宅から20分以内で大自然を感じられる環境に住んでいたい。空飛ぶタクシーはこれを実現することが出来るのです」と述べる。

同社はあくまで日常使いでないと根本的なソリューションにならないという点を念頭に置きながら、サービスの価格帯を設定していくとのことだ。既に複数の都市と話し合いが始まっており、2025年を目途に商用利用を目指す。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する