遺品整理・退去清掃・害虫駆除など生活の困りごとを解決してくれる「オコマリ」運営、デジタルベースキャピタルなどからシード資金を調達

SHARE:
左から:垣屋美智子氏(modecas CFO、Skyland Ventures コーポレートマネージャー)、齊藤祐輔氏(modecas 代表取締役)、桜井駿氏(デジタルベースキャピタル 代表パートナー)
Image credit: modecas​

遺品整理・退去清掃・片付け・害虫駆除など生活の困りごとを一括解決できるサービス「オコマリ」を運営する modecas(モードキャス)は、シードラウンドで PropTech 特化 VC のデジタルベースキャピタル、ファインドスターグループ、Skyland Ventures、「小さなお葬式」を展開するユニクエストの創業者で、自宅で栄養管理できるデリバリフードを展開するナッシュの代表取締役・田中智也氏、さらに名前非開示のエンジェル複数から資金調達したと発表した。調達額は明らかにされていないが、関係者らの話を考慮すると、一部デットを含め9,000万円前後とみられる。

modecas は2015年6月、ストックフォトのピクスタ(東証:3416)で海外展開などを担当していた齊藤祐輔氏により創業。社名からも推測できる通り、当初はモデルのためのキャリアアップできる招待制プラットフォームを運営していたがピボット。動画アプリの運営を経て、「遺品整理.com」というサービスの立ち上げに行き着いた。インターネットがしばしば得意とする「情報の非対称性」の解決を狙ったサービスだ。確かにこの分野は適正価格というものが分かりにくい。同じ文脈から、退去清掃・片付け・害虫駆除までサービスを広げることになり、オコマリが誕生した。「ゴミ屋敷化してしまった家をなんとかしてほしい」といった悩みの解決にも応じる。

良質・適正価格でのサービス提供で目指したのは、片付け事業者のラクスルモデル

オコマリで部屋を片付た例。上・下写真の部屋はいずれも左が作業前、右が作業後。
Image credit: modecas

印刷サービスなどを提供するラクスル(東証:4384)が当初、発注するユーザと受注する印刷業者のマッチングから始まったのは有名な話だ。その後、ピボットを経て、現在のラクスルがラクスルの名前で印刷注文を受託し、その時点で最適な印刷業者(注文が逼迫しておらず、手の空いている業者)に注文をアウトソースする形で安価なサービスを実現するに至った。オコマリが進めているビジネスモデルもまた、ラクスルが辿ってきた変遷にどことなく似ている。

一般的に片付け業者は個人経営に近い小規模なところが多く、良質なサービスを適正価格で提供するには限界がある。顧客管理が十分に行き届かず、作業と作業の間にムダなアイドリングタイムが生じてしまう。ある片付けをしている最中に別の潜在顧客から電話がかかって来てしまうことだってある。そこで、オコマリでは、片付け業者に代わって営業活動、契約、顧客へのアフターフォローを代行するようにした。片付け業者は目前の作業に集中できるようになるし、顧客にとっても満足度を高められる要素が多い。

オコマリは全国120〜130社の提携業者をネットワークし、これまで C 向けのみでサービスを展開。今期上半期で1,121件の問題解決を図ってきた。今後は、31 Ventures などからも調達したアメリカのオフィス管理プラットフォーム「Eden」的なサービスを B 向けにも提供し、今期通期で5,000件の問題解決を目指す。そして、これもまたラクスルに似ているが、片付け業者と潜在顧客とのマッチングに近かったサービスを、今後はオコマリの名前で注文を受託し、最適な片付け業者にアウトソースする形態へ移行を図るとしている。

片付け業者に、コンサルティングやフルフィルメントなどを提供する計画も

冒頭で紹介したように、今回のシードラウンドには PropTech 特化を謳うデジタルベースキャピタルが参加している。オコマリが果たして PropTech なのか、という点についてはやや疑問は残るものの、デジタルベースキャピタル代表パートナーの桜井駿氏が以前説明してくれた「PropTech は LaaS(Life as a Service)になっていく」という文脈に沿えば、この点は理解しやすいかもしれない。

オコマリでは一部、片付け業者が不用品として預かってきたものを、買取業者に渡して二次流通に載せるサービスを始めている。これまで片付け業者は不用品を処分することが多く、そのための費用がかかっていたが、二次流通への販路をつけることで「売上は上げられないかもしれないが、処分費用は圧縮できるようになる(斎藤氏)」という。結果的に片付け業者は利益を増やせることになり、環境面からもメリットは大きい。将来はオコマリ自らが古物商免許を取得して二次流通を手掛けたり、輸出に携わったりする可能性もあり得るだろう。

オコマリが手掛けるサービスの周辺には、国内のみならず海外にも需要が高く、同じようなビジネスの構築は海外でも可能だろうと斎藤氏は推測している。来年には次のラウンドの資金調達を目指し、不動産やヘルスケア領域、海外展開も視野に事業拡大したい考えだ。

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録