IBM とコーヒー製造業者が協力して、ブロックチェーンの追跡機能をコーヒーの調達に利用している。「Thank My Farmer」という新しいアプリを利用すると、コーヒーを飲んでいる人が、自分が飲んでいるコーヒー豆を作った農家までさかのぼることができるようになる。
このアプリはコーヒーの消費者がコーヒーについてより多くのことを学ぶと同時に豆を栽培した農家をサポートできるようにしている。つまり、2,000億ドル産業のコーヒーサプライチェーン全体にトレーサビリティ、効率、公平性、コミュニケーションをもたらすことだ。IBM は今週(1月第2週)ラスベガスで開催される大規模な技術見本市 CES 2020 でこのプロジェクトを展示する予定だ。
IBM Blockchain は、トレーサビリティプラットフォーム「Farmer Connect」の開発を支援し、Beyers Koffie、コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)、伊藤忠、Jacobs Douwe Egberts(JDE)、The J.M. Smucker Company、Rabobank、RGC Coffee、Volcafe、Sucafina、Yara International などのグローバルコーヒーサプライチェーン企業と協働した。
ブロックチェーンとは、仮想通貨が可能になる、透明性が高く安全な分散台帳のことである。製品が確実に識別できるため、詐欺や偽装などの問題を回避するのに役立つ。
現在コーヒーは年間で5,000億杯以上消費されており、調査対象の19歳から24歳までの消費者のうち3分の2に及ぶ人が、持続的な方法で栽培され責任を持って調達されたコーヒーを購入したいと回答している。

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しかし、国際的な認証機関が進展させているにもかかわらず、コーヒー農家には、製品を市場に出して十分な生活費を稼ぐために必要とされる知識と説明責任がいまだに不足していると IBM は述べた。
コーヒーのグローバルサプライチェーンは大規模なため、トレーサビリティの実現は困難である。栽培されたコーヒー豆は最終的に消費者に届く前に、協同組合、輸出業者、荷送人、輸入業者、焙煎業者、流通業者、小売業者など多くの場所を経由する。この複雑なシステム内にいる関係者らは全行程のうち小さな一部分のみを追跡し、独自のシステムを使用してデータを記録する。そのため製品についての情報が断片化されてしまう。
IBM Food Trust が有するブロックチェーンテクノロジーのおかげで、近隣のバリスタとコーヒー栽培農家との間のギャップを埋めたいと考えている消費者には、現在ソリューションがある。
Farmer Connect は、業界全体で使用できる標準化された方法でブロックチェーンから直接情報を引き出す消費者向けアプリ「Thank My Farmer」を開発している。ユーザと農家、取引業者、焙煎業者、ブランドをつなぐものだ。情報はインタラクティブなマップに表示され、各製品がシンプルでスケーラブルな方法でストーリーを伝えることができる。また、このアプリはコーヒーコミュニティでの持続可能プロジェクトも展開しており、消費者がそれらをサポートする機会も提供している。
ブロックチェーンテクノロジーは、コーヒーサプライチェーンの全ての関係者を結び付け、情報や支払いのやり取りと追跡を簡素化し、信頼性を高める。このテクノロジーは変更ができない永続的にデジタル化されたトランザクションチェーンを作成する。ネットワーク上の各関係者はデータの正確なコピーを持ち、ブロックチェーンへの追加は各参加者の許可レベルに基づいてネットワーク全体で共有される。農家、卸売業者、取引業者、小売業者は包括的でリアルタイムに近いデータアクセスによって効率的にやり取りでき、消費者は自分が消費する製品の原産地について新たな洞察を得ることができる。
Farmer Connect の社長 David Behrends 氏は声明の中で、コーヒーを飲む人と毎日の一杯との関係を人間らしくすることが目的だと述べた。消費者が発展途上国のコーヒー農家を支援することにより、持続可能性ガバナンスにおいて積極的な役割を果たすことができるという。ブロックチェーンとコンシューマーアプリを使用して好循環を作り出すことができる。

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この新しいモバイルアプリは2020年の初めに一般市場にリリースされる予定だ。アメリカとカナダのユーザは1,850ブランドのプレミアムシングルオリジンコーヒーで QR コードをスキャンできる。ヨーロッパの消費者は、Beyers Koffie が焙煎する新しいシングルオリジンブランド Beyers 1769を介してアプリ Thank My Farmer にアクセスできる。
2020年にアプリが拡大すると、大企業と中小企業が参加するよう招待され、コーヒーを飲む人は地元のプロジェクトに資金を提供することで、コーヒーが栽培されるコミュニティをサポートできるようになる。Farmer Connect は現在 Sovrin Foundation と協力して、分散型台帳技術に基づいて構築された新しい形式のデジタルアイデンティティである自己主権型アイデンティティを取り入れている。これにより循環経済のループが閉じ、小規模農家の生計が向上すると同時に消費者に透明性とより良いエクスペリエンスがもたらされる。
Farmer Connect とのこの取り組みは、多くの業界やユースケースでブロックチェーンテクノロジーの採用を拡大し、より多くの洞察を消費者にもたらす IBM の1つの事例である。IBM は食品安全、グローバル配送、貿易金融、責任ある採掘などの分野でブロックチェーンネットワークを集約している。
IBM Food Trust のゼネラルマネージャー Raj Rao 氏は声明の中で、このプロジェクトがブロックチェーンによって消費者が自ら消費する商品と生産者を信頼できるような、真の変化を起こす手段になれる方法の一例であると述べた。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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