中国の農村向けEコマースは大多数の農家を弱体化させ、駆逐する

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中国・西安の朝市
Image credit: Liu Weiqi

もしあなたが農家ではないのであれば、中国の農村Eコマース産業は大きな成功ストーリーだったと言って間違いないだろう。なぜなら、仮に農家が利益を生み出していなかったとしても、Eコマースプラットフォームを展開するテック大手はマーケットシェアとレピュテーションを増やし続け、政府は政策目標の達成に浮き足立ち、消費者は低価格な農業製品に歓喜できるからだ。

Eコマースは、一部の農村に莫大な利益を集中させる。主力企業 JD.com(京東)のCSR(社会的責任)プロジェクト「Running Chicken(京東扶貧跑步雞)」は、中国武夷山の農村の各農家の収入を数千元上昇させるという題目で提供されている。しかし同プログラムは、実際には勝者総取りシステムで、多くの商品が失敗に終わっている。そして同マーケット内で商品の販売に失敗すると、販売手続きに生じたコストにより、農村コミュニティは多くの資産を失ってしまう。多くの農家が苦しみ、長い期間、国による買取を頼りに回復するしかなくなってしまうという。

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JD(京東)の貧困緩和プログラム「Running Chicken(京東扶貧跑步雞)」で提供されるプレミアム鶏肉は1kgあたり190.90人民元(約3,000円)。
Screenshot: Liu Weiqi

巨大テック企業の参入

主要なEコマースプラットフォームは、どこも農業製品の販売マーケティングを行うプログラムを実施している。Alibaba(阿里巴巴)は、数千のオンライン農業製品を提供するサプライヤー「 Taobao Villages(淘宝村)」を組織し、農村地域に就労・ビジネス機会をもたらしている。JDは、従来の典型的な農手法ではなく、社内流通を構築するためのドローンも完備した、農村サービスセンターを設置している。短尺動画配信プラットフォームである「Kuaishou(快手)」は、農村地域のインフルエンサーを育成し、同サービス内のデータ資源を農業生産のプロモーションに投資している。

これらのプレイヤーの中で最も成功しているのは、昨年成長率3倍・売上高650億人民元(約1兆円)を達成した、貧困撲滅プログラムを通した農業商品販売を行う「Pinduoduo(拼多多)」だ。同社は低所得層をターゲットとし、十分な購買力を持たない人々でも安心できる価格帯で商品を提供していることから、競合他社と比較すると、より農村コミュニティにフレンドリーであると言える。2018年に30億ドルの調達を成功させて以降、同社は16億ドルの資金を注ぎ込んだプロジェクトを開始している。

なぜEコマースは魅力的なのか

Eコマースは、農業製品のマーケティングにおける多くの問題を解決することができる。農業品は腐りやすく、標準化不足であり、こと中国においては、非常に小さな規模で、計画性なしに生産されている。農村コミュニティが発展するためには、より統一的な秩序、大きな市場、顧客との透明な相互接続、作付け計画を立てるためのより正確な需要推定などが必要とされている。以上の観点で考えると、地理的・情報的な障壁を取っ払うことのできるEコマースという解決策は、自然な選択だと言える。

また農村Eコマースは、地域のステイクホルダーの需要に沿って展開されもので、中国の貧困撲滅アジェンダの推進を目的とする政府による援助に大きく恩恵を受けている。そして都市部市場の飽和も、テック大手が農村地域を収入源と考える大きな要因の一つである。さらに言えば、都市部にいる出稼ぎの農業労働者が帰郷と共に専門性を田舎の農村地域に持ち帰ることで、農村地域の発展を後押しされている。

農家が失っているもの

Eコマースが農村エリアに移行するにしたがって、従来型の非形式的な販売ネットワークは悪化している。農業製品は、従来あまり制度化されていないマーケティングネットワークを通し、多種多様な代理店を介して販売されていた。この販売ネットワークは、個人間の私的な信用と現金経済の上に成り立っており、全ての参加者が共生し、リスクを共有し、各業者が固有の情報優位性により利益を得ることができていた。仲介者がより特権的なポジションを確立していたことは確かだが、彼らは農家の経営が成り立つように、数年に渡りローンを提供するといった動機を持っていたので、農家が潰れることはなかった。

上述のようなバリューチェーンは、小規模な土地所有者と制度化された市場の間のバッファのように機能していた。しかしこれらの非形式的なシステムは現在、Eコマースによって激しい競争にさらされ、都市計画の変化の中で、都市から追い出されてしまっている。都市部の卸売業者と小売店は、中国の都市部から刻々と姿を消しているのが事実なのである。

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西安で見られるこの通りは、農村の生産者と都市部の消費者の昔からのつながりを表している。
Image credit: Liu Weiqi

Eコマースは上述の衰退を補填することはなく、着実に農村コミュニティを構造的に脆弱な体質へと変化させている。非形式ネットワークは、持続可能で、包括的で、農村コミュニティの回復力を保証していた。権力は比較的分散されていたし、部分的に何かが崩れても、農家は代替手段を簡単に発見することができた。

一方でEコマースは強固に制度化されているため、アルゴリズムが一部の目立った成績を持つ農家ばかりをプロモートし、収益が不平等に分配される。さらに言えば、プラットフォームというのは生来的に独占体質であり、農村は旧来の非形式ネットワークにおける仲買人と違い、プラットフォームと交渉する余地を持たない。

Eコマースサイトはしばしば、仲介者を排除することを売り文句とするが、実際のところは、新しい類の仲介者を生み出しているだけなのである。CUHK(香港中文大学)人類学博士の Sun Rui 氏のフィールドスタディによれば、ほとんどのオンラインショップは特定企業によって運営されており、e コマースの時代には仲介者としての彼らの立場は、依然として重大なものなのである。

近視眼的なEコマース企業によるマーケティング戦略は、地域の製品評価を破壊しかねない。数千の競合に勝つことを切望する販売者は、しばしば、非倫理的かつ持続可能性のない宣伝・マーケティングを乱用する。有名な例で言えば、臨沂市から流通したリンゴによって、山西省ではマーケティングキャンペーン後にウイルスが流行した。原因は強欲な販売者が、物乞いの人々に対し、既に食べることのできない劣化した商品を大量に販売していたためである。

広告は消費者の同情心に訴えかるが、その多くは誇張され、農村の現実から切り離されている。多くの人が、Eコマース企業が同情マーケティングとして同じ老人の農家の写真を何回も使い回している事実に既に気づいているかもしれない。当然このようなやり口は政府の目にも留まっていて、2018年には、臨沂市政府は、ネガティブかつ近視眼的なマーケティング戦略に対し、公式に非難を行っている。

ブランディングに過ぎない

今日のオンライン農業製品マーケティングの成功は、政府による有利な政策、補助金、法的正当性の提供などの施策の結果であり、 また、Eコマースプラットフォームは、資金、インフラストラクチャーの構築、教育、データ資源を投資し続けている。

ただし、一般的な農村コミュニティはこれらのメリットを享受できない。未だEコマースに従事している農村コミュニティは少数だが、 さらに多くの農村が e コマース市場に参入すると、さらに不利益を被る農家が増加していく。ネットワーク効果により、後発者は簡単に取り残され、市場から除外されてしまう。

革新的なテクノロジーと貧困緩和運動の背後にある、農村地域におけるEコマースの活用とその変革に関するストーリーは、まさにブランディングそのものである。Eコマースを使用して農産物を販売しても、中国の経済構造における農村コミュニティの脆弱な地位を向上させることはできない。 この一連のプロセスは、実際に農村地域の無形資産を破壊すると同時に、中央集権的なビジネスグループに莫大な利益をもたらしているだけなのである。

Eコマースプラットフォームは、平均的な農村コミュニティにとって信頼できるパートナーだろうか。 そうではない。農産物は一般的に需要弾力性がなく、また地方のコミュニティは、実際には「Hema(盒馬鮮生)」のような新しい小売業者によって、単一の市場でグローバルなサプライヤーと競争することを余儀なくされており、非常に過酷な状況に立たされている。

この問題を解決し、中国の農村を救うためには、テクノロジーやマーケティングを超えた対策を行う必要がある。 私たちは、農村経済に不都合な、構造を本当に変えることができるのかと自問すべきではないだろうか。

【via TechNode】 @technodechina

【原文】

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