ライバルが一転「顧客」にーーNvidiaがArmを買収、ARMエコシステムの行方(前編)

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Simon Segars氏(Arm TechCon 2019にて)
Image Credit: Dean Takahashi

ここ数週間、NvidiaがソフトバンクからArmを買収するための交渉中だという噂が出回っている。Wall Street Journalが匿名情報に基づいて報じたところによると、買収額は400億米ドルを超えるという(編集部注:記事初出は現地時間9月12日のもの。14日にNvidiaは正式に買収に契約したと公表している)。

ソフトバンクは2016年に320億米ドルでArmを買収した。当時、ソフトバンクCEOの孫正義氏は、AIが人類の知能を超える日である「Singularity」に向けて準備を進めていると語っていた。だがソフトバンクは、パンデミックおよびUberとWeWorkへの投資の失敗によって多額の資金を失い、財政危機に陥っている。

Armの価値の高さには疑う余地がない。なぜならArmがライセンス供与したチップは年間200億個も出荷されており、スマートフォンやタブレットからモノのインターネットに使われるセンサーに至るまで、ありとあらゆるものに組み込まれているからだ。ARMベースのチップは今年すでに1,600億個以上も出荷されているそうだ。Arm自身はチップを製造していないが、同社はプロセッサの開発・設計を行い、それを他社が利用してさまざまな電子機器用に独自のチップを製造するためのライセンスを管理している。AppleはArmベースのプロセッサを利用してIntelプロセッサに代わるものをMacの次期モデルに組み込む計画を立てている。

問題はNvidiaが買収に成功した場合、どのようにしてARMエコシステムを維持するかということだ。NvidiaはIntelやAMDといった競合と激しく争っている。AppleのiOSデバイスはGPUにImagination Technologiesの技術を採用しており、MacもNvidiaの大口顧客ではない。NvidiaはPC業界の最大手になるための競争の中、130億米ドルの売上高(過去12か月ベース)と3,300億米ドルの市場価値を誇っている。後者はIntelの1,440億米ドルという価値よりも高い。

契約が成立すれば、これらの大手ライバルがNvidiaの顧客になる。

NvidiaがArmを独立した子会社として扱い、プロセッサ事業でライバルとのオープンな顧客関係を継続することは理にかなっている。Armの競合としては、ロイヤリティのないRISC-Vアーキテクチャなどがあり、Armのライセンス料にうんざりした企業からの支持をますます得ている。(後編につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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