はじまる「シン・副業」:副業からはじまる“独立・起業”の可能性(5/5)

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タイミーは「スキマバイト」で躍進した(同社ウェブサイトより)

(前回からのつづき) コロナ禍以前、副(複)業の考え方といえば内職に近いものがほとんどだった。当然、企業は余計な仕事を禁止したいだろうし、実際そういうケースが多かったように思う。感染症拡大で全てが一気にがらりと変わったわけではない。元々、副業を上手に考え、採用活動のステップに活用したり、自分のキャリアの役に立てたりする人たちがじわじわ増えていったのだ。

ここまでの連載でその変化についてお伝えしてきた。そしてこの一連の取材の最後に「副業からの独立・起業」という可能性について触れてみたい。

ギグワークのタイミーに訪れた変化

隙間時間で即アルバイトができる「タイミー」はここ1、2年のHRテックの中でもトップクラスの注目株だ。昨年3月のサービスイン(創業自体は2017年8月)ながら、昨年10月に20億円調達、先月9月には13億円超の資金を集めている。飲食店やコンビニエンスなどで発生する人手不足を、細切れの時間活用でカバーしようというアイデアはヒットし、公表している今年6月時点での導入店舗数は1万9,000箇所で、利用者は135万人(※同社ウェブサイトより)を数えた。

訂正:タイミーの現時点での導入店舗数は2万5.000箇所、利用者数は150万人となっているそうだ。追記させていただく。

ともするとギグワーク(極めて短時間のスポット仕事)の象徴とも言えるタイミーだが、少し変わった使い方、きっかけの提供が発生しているという。それが「お試しワーク」とも言える利用方法だ。

タイミーを100回以上利用してカフェ開業にこぎつけた平林さん(写真提供:タイミー)

タイミー利用者である平林明菜さんは、前職にて飲食関連のコンサルティングを手掛けていた人物で、飲食のビジネスに関わり続ける一方、いつか自分でカフェを開業したいと考えていたそうだ。現場での経験が必要と考えた彼女はカフェで実際に働いていたそうなのだが、より幅広い経験を求めてタイミーを利用するようになった。その回数は昨年6月から100回以上というから本気度は高い。

飲食店のホールやキッチンスタッフとしてギグワークを続ける中で、ある日、ゴーストレストランの仕組みで運営している飲食店のヘルプに入ることになった。ゴーストレストランは自分では店舗を持たず、既存レストランなどの空き時間に厨房を借り、UberEatsなどのデリバリーを使って販売するモデルのことだ。

平林さんはこの仕組みが気に入り、結果、タイミーで知り合ったこの飲食店のオーナーからフランチャイズでの開業を打診されて今年、2月に自身のカフェを開業するに至ったそうだ。

副業をきっかけとした起業のあり方

この平林さんの開業ストーリーはもちろん、まだタイミーの事業全体から言えばレアケースだろう。また、平林さんも開業を目指してタイミーを利用していたので、純粋な意味での副業とは異なるかもしれない。

一方で可能性は広がる。例えば同じように小さなカフェを開業したいと思っていたとして、幅広い仕事を短時間だけ経験することは難しい。インターンのようなものかもしれないが、受け入れ側としてこうしたスポットの考え方がなければ無理だろう。

逆に言えば受け入れ側に、起業前提であったとしても本当に必要な時間だけ手伝って欲しいという合意があればそれと引き換えに人手不足の問題をクリアできる。平林さんのケースでは、結果的にフランチャイズとして事業拡大もできている。

タイミーにこういった「幅広い仕事を体験できる」ようなケースを増やしていく考え方はあるのかと尋ねたところ、このように回答してくれた。

「あります。以前は「タイミー=飲食店でのアルバイト」とのイメージが強くありましたが、現在はコロナ禍での方針転換もあり、物流や小売などの業種もかなり増えてきています。今後もより幅の広い業種の企業様にご導入いただけるように成長してまいります。

また経験者に限定した案件や有資格者向けの案件も増加させることによって、より幅の広い職種でのお仕事を提供してまいります。様々な業種・職種を気軽に体験できるプラットフォームになっていきたいと考えています」(タイミー代表取締役の小川嶺氏)。

ーーということで数回に渡って、インターネット・テクノロジーを活用した、新しい副業の形についてお伝えしてきた。働き方は多様化しなければならない時代に入っているし、固定的な概念に囚われていたのでは経営側も、また働く側も損をすることになりそうーー。そんな感想をいただいた取材活動となった。これらの特集が現在の働き方についての参考になれば幸いだ。