Sillicon Mac:それでもやっぱり期待していたあの機能たち(4/4)

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Image Credit : Apple

(前回からのつづき)AppleのグラフィックスにまつわるストーリーはCPUの話と似ている。Appleは、M1の統合GPUの5~6倍の高速化を約束して、Intelの統合グラフィックスチップを打ち負かしたかのように見える。しかしそもそもIntelの基本的なCore i3やi5のCPUのように、そのIris PlusとUHDグラフィックスは、必ずしも最先端というわけではなかったし、現行のPCが提供する最高のものでもない。だから、M1が公表している生のGPUの数値(※)は統合グラフィックスの基準では素晴らしいものだと思うが、現時点でハイエンドのMacやPCはどちらもIntelの統合グラフィックスには依存していない。

(※毎秒41ギガピクセル、毎秒82ギガテクセル、処理能力の2.6テラフロップス、および128実行単位というピーク時理論値は、Intelが新たに出したIris Xe Maxグラフィックスチップが公表する毎秒39.6ギガピクセル、毎秒79.2ギガテクセル、FP32性能の2.5テラフロップス、および96実行単位よりもわずかに高い)

改めて伝えるが、Intelの数値は10ナノメートル・プロセッサの話で、AppleのものはCPUと同じチップパッケージ内にある5ナノメートルのGPUの話だ。IntelはIris Xe Maxを軽量の主力ノートブックに投入するかもしれないが、Appleのソリューションは同時により力強く、かなり小さく、そして電力消費は少ない。

M1のMacがIntel製のマシンと変わらないと文句を言うのは簡単だ。

本当の問題は、6月にSrouji氏が言及した「カスタムテクノロジー」にもかかわらず、iPadやiPhoneをそれぞれの領域でトップ・ティアにしてきた大きな機能を、Macには持ってこなかったことの方が大きい。直観的なマルチタッチディスプレイ、先進的な写真やビデオ、ポートレートカメラ、もしくはこれまでにない軽さと薄さを持ったボディ。

少なくとも2年という準備の後、Appleは以前のIntel Macと同じようなM1 Macを立ち上げたのだ。唯一の違いは内部に異なるチップを持つ、という点だけだ。現時点でどうやらAppleはコンピューターのパフォーマンスの底上げに焦点を当てているらしい。

1日で3台の最も手頃な価格のコンピュータを入れ替え、そのうちの1台については価格を下げたAppleは、このホリデーシーズンにM1ベースのMacを難なく売り上げるだろう。過去10年間にAppleに期待してきた中でも安全で、かつ予測可能な結果であり、最終的にはウォール街を満足させる結果となるに違いない。

しかし、だ。残念なことに、ユーザーに向けたMacのイノベーションは2021年以降まで待たねばならない。

チップメーカーやデバイスメーカーのライバルであるQualcommSamsungLenovoなどは、最新のMacをリーダーではなく、遅れてるかのように見せる新機能を搭載したARMベースのPCを発表する機会を再び得た。

Appleは超低消費電力チップでリードしてきたかもしれない。しかし過去15年間のIntel Macの歴史は、PCの世界でシェアを獲得するためには、ワットあたりの性能やクロック速度の高速化だけでは、ユーザーがより汎用性の高い便利なデバイスを使い続けるのに十分ではない、ということを証明している。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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