上場まもない起業家3人が、上場までにやるべき鉄則を直伝〜IVS 2021 Fall in 那須から

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本稿は、11月17〜19日に開催される、IVS 2021 Fall in 那須の取材の一部。

コロナ禍で全てが変わった。スタートアップイベントもその多くがオンライン形式やバーチャル形式に移行した。スタートアップ村の住人達はデジタルへの適性は高いはずだが、それでも直接出会って話す体験には変えられないものが無いことを誰もが悟った。科学的根拠は不明瞭であるものの、幸いにも日本国内の新型コロナウイルスの新規感染者数は劇的に減少し、先月には、緊急事態宣言が解かれた直後、久しぶりの対面式スタートアップイベントして、B Dash Camp が福岡で開催された

B Dash Camp と共に日本の大型スタートアップイベントの一つに数えられる IVS は、参加者が日常業務から距離を置き、ネットワーキングと情報交換に集中する数日間を創り出す意図から、交通至便な地方都市で開催されてきた。今年秋の IVS はリアル開催を前提に準備されてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、当初予定の9月から延期され、今週17日から19日まで開催されている。秋と呼ぶには少し肌寒いが、感染リスクが低い那須高原ののオープンエア会場には、起業家や投資家が400名以上集まっている。

IVS の代表を務める島川敏明氏

地の利を活かし、屋外テントを使った出展者ブース、キャンピングカーを使ったサウナ、ヴィラ施設でのワークショップ、隣接する遊園地のジェットコースターに乗っての絶叫ピッチなど、エクスカーションやアクティビティにも趣向が凝らされた。また、IVS の代表を務める島川敏明氏が明らかにしたところでは、本イベント恒例のピッチセッション「LaunchPad」の優勝者には、今回の開催施設の運営者から3,000〜4,000万円相当の別荘が贈呈されるそうだ。LaunchPad の模様は BRIDGE でも19日お伝えする予定だ。

イベント1日目の17日の午後には、5つ会場で合計14に及ぶパネルディスカッションやワークショップが進行された。本稿では、この中から、筆者の興味をひいたセッションのひとつ「スタートアップ必見! 上場するまでにやるべき3つの鉄則」を、ポイントをかいつまんで簡単に紹介してみたい。このセッションのスピーカーは以下の通り。モデレータは、WiL General Partner & Co-founder の松本真尚氏が務めた。

  • 小林泰平氏(Sun Asterisk 代表取締役)…… デジタルクリエイティブスタジオ、エンタープライズ向けインキュベーション支援事業など運営。4カ国に従業員1,800人。 昨年7月上場
  • 南章行氏(ココナラ 代表取締役会長)…… スキルのマーケットプレイスを運営。今年3月上場
  • 河端保志氏(Branding Engineer 代表取締役 CEO)…… DX に課題を持つ企業に IT 人材を提案。大学院の時に創業し、昨年7月上場

(以下は発言の要旨をまとめたものであるため、言い回しなどは発言の通りでない場合があります。)

IPO とは、あなたにとって何か?

事業と金融が両輪、バランスよく回っている会社はいい会社。そういう会社を作りたいと思っていた。その集大成が自分にとっての IPO。(南氏)

イグジットには M&A もあるが、会社として大きくしていきたいなと思った。当初は、感情的な目標設定としての意味も大きかった。IPO について知識を得た今とは異なる。(河端氏)

キャッシュフローのいいビジネスやっていて他ので、資金調達的な意図よりも、むしろ、広報活動の延長的な位置づけが強い。エンタープライズにおいては、スタートアップ村でスタートアップがスタートアップを紹介してくれるような営業の伝播は薄板、め、エンタープライズ向けの広報活動と考えれば IPO はコスパが良かった。信用づくりにもなる。(小林氏)

IPO が近づくと、ステイクホルダーが増えてくる。ステイクホルダーとの付き合い方で大事なことは?

小林泰平氏(Sun Asterisk 代表取締役)

主に証券会社と監査法人。証券審査の時には審査してもらう立場。同じ証券会社でも、営業担当と審査担当は、完全に役割が分かれていることを理解する。また、監査法人には、自分の会社が正しく会計しているかを見極めてもらうことが重要で、事業プランを説明してもあまり意味はない。(河端氏)

IPO 時、発行体である自分の会社、VC、証券会社は、それぞれ立場が異なるので意見は異なる。株式を売り出すかどうかは VC、バリュエーションは証券会社が決めるなど。交渉をしたいなら、場当たり的な対応ではなく、数年かけて考えてきたような、一貫したポリシーを共有することが大事。どういう IPO をしたいのか、IPO した後どう事業を展開するのか共有すべき。(南氏)

これまで独自資本で回してきたため、プレ IPO ラウンドが初の外部調達だった。それまで、社員に IPO を目指すと言ったこともなかったし、仲間に IPO して成長していくことをどう共有するか考えた。

2017年から2018年にかけて IPO を決めた後、半年かけて Corporate Identity を作り直した。このプロセスに社員全員に携わってもらい、当事者になってもらった。のちに、信託型 SO を設計し、社員全員にストックオプション(SO)を発行し、社員の生活と会社の価値向上が同期するようにした。(小林氏)

ストックオプション(SO)について、社員にはどのくらい理解してもらえたか?

南章行氏(ココナラ 代表取締役会長)

社員の9割は、SO のことはよくわからなかったかもしれない。みんなが頑張って市場から認められると資産が増えるんだよ、ということを理解してもらった。(小林氏)

SO は経営層に配る、全社員に配るなど、方針は会社によってさまざま。前職(南氏は、アドバンテッジパートナーズで企業買収ファンドに携わっていた)で関わった会社が全社員に SO 配ったところ、社員が皆ハッピーになった経験がある。成功を皆で分かち合うのはいいなと思い、社内ではバリュエーションとは何か、キャッシュフローとは何かなど、社員に講義をして SO の価値を理解してもらえるよう努めた。

ココナラは IPO で株式を売り出した際に6割が海外投資家となった。証券会社からは上限は49.9%なので前例が無いことで無理だと言われたが、財務局に確認してもらったところ、法律には抵触せず、単なる慣例でしないことがわかった。親引け先(証券会社が株券を発行者の指定する販売先へ売りつけること)にフィデリティがいるが、金融機関が親引け先となるのは異例。これも日本証券業協会のルールでは認められないそうだが、フィデリティとシナジーがあると主張したところ、認めてもらえた。

IPO は多くの人にとっては初めての体験なので、情報の非対称性が大きい。証券会社がこう言った、東証がこう言った、と聞くと、皆、そういうルールなんだと思い込んでしまう。でも法律やルールでは決まっておらず、単なる慣習ということが多くあった。何かしら気になるところがあれば、大いに疑ってみた方がいい。ただ、結果的に、SO はモチベーション向上には期待ほど寄与しないというのが実感。(南氏)

小林氏の事業 (Sun Asterisk)と同様に、大きな資金が調達になる事業ではなかったため、CFO という役割は立てず、資本政策も調達も自分が対応していた。南氏がいう SO がモチベーション向上に期待したほど寄与しない、という意見については、自分もそのように思う。事実、自分の会社でも、数千万円の利益が出るかもしれない SO を行使せずに会社を辞めようとした人がいた。(河端氏)

IPO の前と後で大きく変わったことは? IPO の前にやっておいた方がいいことは?

河端保志氏(Branding Engineer 代表取締役 CEO)

事業しか興味なかったので、あまり準備をしていなかったことを反省している。学生起業だったので、当初はいわゆるブラックな会社だったかもしれないが、それでも創業メンバー同士は楽しく仕事ができた。

しかし、その後、優秀な人材が多く辞め、もっと仕組みづくりをしないといけないと思った。ものすごく働かなても会社が成長する仕組みを作り、来月の売上が読めるようにすることが重要。上場すると、株価から時価総額を常に気にするようになるので、その観点でどう事業を作っていくかを考えられるようになる。

仮に自分が何らかの理由で死んだ時、その人のその時点の資産の約半分が相続税で請求される。このとき、遺された家族は、株は売却できないで現金が手元に無ければ借金して税金を支払うしかない。または、破産することになる。これでは遺された人が困ってしまう。個人は死ぬことはあるかもしれないが、法人は死なないので、資産管理会社は作っておいた方がいい。(河端氏)

Investor Meeting をはじめ、社外へ向けた仕事が増えた。 事業に向かう時間が削られている感が否めないが、投資家に対する説明も重要な仕事であることは確か。また、これまで肩書には社長と付けてこなかったが、IPO 後は金融機関からは社長と呼ばれるようになった。

Corporate Identity をアップデートしておいたのはすごく良かった。この時の経験が活かされ、うちの会社のことを一貫性を持って、人に説明することができる。また、南氏の言っていた慣習は疑った方がいいという意見には。自分達は、目論見書を自由にでフルスクラッチで作った。(小林氏)

上場前の段階からテレビ CM を展開しておいてよかった。赤字だったが、上場前からあれだけ大きいことをやっておいたから、上場後も赤字ながらトップラインを伸ばすことに注力していると投資家に説明できる。

CM はすごく難しい。いろんな会社がいろんな CM を売っているが、CM を打っても無風なところが多い。うちは最初の CM が当たったので、その後、軸をいろいろ変えながらやっているが、上場後に初めて、恐る恐る数億円かけて CM を受けてこけたら、もう二度と CM 展開できない。CM に限らず、大型のマーケティング投資は、上場してからだと投資家に納得してもらうのが難しい。VC がステイクホルダーのうちから試しておくべき。(南氏)

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