スタートアップとキーパーソンをつなぐSNS「STORIUM」公開、トップティアVC中心に200社集う

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ニュースサマリ: グランストーリーは4月20日、スタートアップと国内外の投資家、大企業キーパーソンをつなぐSNS、「STORIUM(ストリウム)」を正式公開した。また、これに併せて、スタートアップの新規登録の受付開始も伝えている。登録できるのはSTORIUMに登録済みのVC・CVC・事業会社より出資を受けているスタートアップで、スタートアップ側の利用料は無料。投資会社および事業会社については夏頃を目処に料金プランが発表される予定。

STORIUMは利用基準を満たしたスタートアップとベンチャーキャピタル、事業会社が運営するCVCなどのキーパーソンが集まるビジネスソーシャルネットワーク。各社に用意される企業ページではチームのプロフィールや企業のミッション・ビジョン、協業・共創を求める企業に向けての課題やケイパビリティなどが示される。また、タイムラインには自社のニュースや活動を掲載することができ、将来的にステークホルダーになる可能性のある企業・人物に対して情報提供ができる。

完全クローズドのため、追加投資や事業提携など、関係者のみに伝えたい情報をオンライン上で共有し、効率的に正しい人物にコンタクトが取れるようになっている。なお、不特定多数に対してオンライン上で出資を募ることは金融商品取引法等の法律に触れる可能性があるため、財務情報などの情報は開示しない方針になっている。必要な場合は個別にメッセージを送る機能があるので相対で対応する。

登録されているVC・CVCは日本ベンチャーキャピタル協会に加盟している事業者が中心で、スタートアップ側を含めて約200社が登録されている。2021年1月からクローズドベータで運用を開始し、4月から正式版として公開した。企業やVCの参加については問い合わせが必要。

話題のポイント:スタートアップ・エコシステムをオンラインで効率化するというアイデアは古く、例えば、データベースであれば米TechCrunchが運営していたCrunchBase(現在はTCから独立)やCB Insights、ソーシャルネットワーク的な形式であればAngelListなどが有名です。日本でもスタートアップの登記情報などを掲載するデータベースや、オープンイノベーションの文脈でCreww、AUBAなどがこの領域にチャレンジしています。

さらにベンチャーキャピタル自体もメディア化を進めており、Andreessen Horowitzが立ち上げた「Future」などをお手本に、国内でもベンチャーキャピタルやファンドがオウンドメディアやイベントを開催することは特に珍しいものではなくなりました。

これだけ数多くあっても「これが一番」という一極集中が起こらないのは、扱う情報が未公開株というセンシティブなものであり、また、事業の状況によってはシビアな交渉が求められるという性質のネットワーキングだからなのかもしれません。スタートアップエコシステムが複雑と言われる所以です。

さて、そんな中、新しいプラットフォームが登場しました。STORIUMに期待するのはやはり運営サイドの顔ぶれです。グランストーリー代表取締役の越智敬之さんはサイバーエージェントでデジタルマーケティングを経験された人物なのですが、彼と共同創業したのがジェネシア・ベンチャーズの田島聡一さんなんですね。田島さんはジェネシアの代表であると同時にこのグランストーリーの取締役も務めます。お二人とも元・サイバーエージェントなんですが、在籍した当時は特にお仕事での絡みはなく、ただ、ご近所ということもあってこれまでお付き合いがあったそうです。

田島さんは現在、日本ベンチャーキャピタル協会の理事であると同時にオープンイノベーション委員会の大企業連携部会で部会長も務めています。STORIUM自体、コロナ禍でなかなか密なコミュニケーションができない中、スタートアップの成長機会を損なってしまうのではという課題感が背景にあったのは言うまでもありません。

一方、オンラインで複雑なコミュニケーションをどこまでできるのか、また、持続可能性をどう担保するのか、という点も非常に重要です。ちょうど、長年に渡って国内のスタートアップ情報を配信してきたTechCrunch Japanが廃刊を決定し、5月末で全ての情報へのアクセスを打ち切ると発表しています。情報を掲載されてきたスタートアップにとっては、過去の取り組みがオンライン上から「なかったことになる」わけで、この責任は非常に重いはずです。

ということで、越智さんにいろいろお話を聞いてきました。特に田島さんが重要なポジションを担うこともあり、ジェネシア・ベンチャーズとの兼ね合い、公平性の部分や、持続性を持たせる方法など、ポッドキャストでお話いただいています。

ポッドキャスト全文

BRIDGE編集部・ポッドキャストではテクノロジースタートアップや起業家に関する話題をお届けいたします。 今回の取材では新たに立ち上がったスタートアップのSNS、STRORIUMを運営するグランストーリーの越智さんにお話を伺ってきました。

STORIUMは利用基準を満たしたスタートアップとベンチャーキャピタル、事業会社が運営するCVCなどのキーパーソンが集まるビジネスソーシャルネットワークです。完全クローズドで追加投資や事業提携など、スタートアップ関係者のみに伝えたい情報をオンライン上で共有し、効率的に正しい人物にコンタクトが取れるようになっているそうです。

登録されているVC・CVCは日本ベンチャーキャピタル協会に加盟している事業者が中心で、スタートアップ側を含めて約200社が登録されているSTORIUM。その立ち上げの背景や気になるポイントをお聞きしてきました。

まずはサービスの説明からお願いできますか?

越智:こちらはですね、スタートアップの成功確率を上げるということが一番のミッションになっていまして、スタートアップを取り巻くエコシステム、つまり投資家や大企業のイノベーターの方々、オープイノベーションやスタートアップとの協業や共創っていうテーマをお持ちだと思うんですが、こういった方々をイコールパートナーでお繋ぎできるようなことを目指して作ったのがSTORIUMというプラットフォームとなっております。

どのような企業さんが参加されていますか?

越智:まず、投資家からお話しさせていただけますと、国内トップティアの投資家のVC さん、CVCの企業さんに多く入っていただいていて、主に日本ベンチャーキャピタル協会に加盟されてる投資家の方々を中心にお声がけさせていただいております。あと、大企業の方々はイノベーターチーム、事業やビジネス投資などをされているような方々ですね。スタートアップをリスペクトしてフラットにお話をされている、事業部やみなさまとの協業マッチング等もしっかりやられている、そういったイノベーターチームという方々に来ていただいています。

みなさんの期待値は?

越智:投資家の方々で言うと、優れたスタートアップのソーシングというのが、当初の大きなニーズと考えていました。しかし、投資家の方々がすでに支援してるスタートアップの方々をご紹介する流れになってきてから気づいたのが、こういったスタートアップを支援する場所として、STORIUMをみなさんお使いいただいているという感じが出てきています。

スタートアップのバリューアップ施策としてSTORIUMの中にいらっしゃれば、その後の例えば次の投資家への関係値を作ったりとか、IT企業さんとのアライアンスによって協業、共創やバリューチェーンで一緒に連携したりとか、こういった部分が深まっていくとスタートアップはやはりスケールしていきます。そういった一期一会の機会、N対Nの出会いをつくる場面として投資家の方がさらにスタートアップを招待していただいたりして、そこに結構ベネフィットを感じていただいているところが、投資家に関しては大きいですね。

同様の活動をVCやその他の事業者がやっているが重複しているのでは

越智:投資家の方々も今、選ばれる側としてスタートアップのみなさんに色々なバリューアップ施策を、表向きにも裏側の施策などでもされていらっしゃると思いますので、どちらがどうかという競合的な思考は全くありません。ただ、投資先となる支援先やスタートアップが増えてらっしゃる中で、キャピタリストの方も、やっぱり体おひとつで、なかなか全スタートアップに対しての行き届いたサービスがフルにできてるかっていうと必ずしもそうではないと思っています。

そういう状況の中で、(スタートアップが)自らの力で別の追加投資だったり、別のキャピタリストの方とネットワーキングを持たれて、結果、その企業活動が活性化していくっていう流れが、自律的に動いていくってことは結果的にはあらゆる面でメリットがあるのかなと思っています。相対的にいろんな選択肢がおありだと思うのですが、その中のひとつとしてお使いいただければと考えています。

いろんな繋がりがあって、その中の少し大きめなハブとしてSTORIUMがある

越智:ハブというところもありますし、我々の捉え方としてみなさん色々なインサイドネットワークをお持ちで、それが独立的にコミュニティとして存在してるのですが、このインサイドネットワークの中にあって、STORIUMはあくまでクローズドなブラッドホームなんですね。この中だからこそ、みなさんに共有資産的に(コミュニティを)開放していただくことが、大きなエコノミクスになっていくんじゃないかと我々は考えているんです。独占的にという目的は全然持っていないですし、クローズだからこそ開けるというか、そういったメリットというのは出していけるんじゃないかと考えています。

クローズドな情報の扱いはどのように考えられてますか?

越智:まず大前提として出資法などはシビアに考えていて、基本的には財務情報、結構数字に関わるところ全般は基本的に非開示とさせていただいております。投資家がご覧になられる起業家に見立てるポイントなどあると思うんですが、最終的な投資評価のアセスメントをするまでの財務情報等々については個別共有の中ということに据え置いてます。その手前のところで大事なのがチームがどのような役割やミッションを持っていて、事業自体のトラクションの手前にあるビジョンやミッション、過去のニュースとかトピックス、こういったものを総合的に奥行きがある形で見れるような情報設計をしております。

まず会って話を聞いてみたい。そこでもちろん内容についての情報の非統一性がお互いあるけど、それを埋めた状態で会える。さらにチャットでやり取りができるので、気軽でスマートなコミュニケーションができる。本質的な出資協議、アライアンスにおけるパートナー協議なども同じですね、そこを解像度が高い状態でお話いただけるっていうのが、非常に大きな効率化になる部分かなと思っています。これまでの一期一会が最適じゃなかったという課題感からこのような設計にしています。

ビジネスモデルは

越智:これはまだ模索中で、夏ごろからの予定でCVCや大企業の方から費用をいただくというモデルを考えております。スタートアップからは費用をいただかないと言うのが基本的な考え方です。エコシステムにおいては、それを支える互助会といいますか、そういった会費として月額や年会費をいただくことを考えていて、STORIUM単体としてはトップラインを目指していくビジネスというよりは、まずこのインフラとして、プラットフォームとして持続的な状況を確立するというのが目下のテーマになっています。

ジェネシア・ベンチャーズの田島さんの存在がありますが、公平性は

越智:確かに田島自身が当社の取締役でもあるのですが、STORIUM自体は産業界活性や創造的な発展を目指したもので、ジェネシア・ベンチャーズの域を超えた公的な発展性を目指して始まったものです。私は常にここを意識しておりまして、例えばジェネシアの支援先と競合するスタートアップの方を入れる・入れないの話は当然、入れさせていただきますし、ジェネシア自体の我田引水、自社の利益供与ということは全く考えてないということは約束できます。田島も同じことを言うと思います。

こういったスタートアップ支援の事業を考える上で、エコシステムを支えるということと、ビジネスとして拡大させることは相反する部分も出てくるかもしれない。その点についてはどういう考え方でしょうか

越智:我々が何者かと言うところを明確にすることが必要で、これはロマンで申し上げることではなく、我々がこの事業をやっている1番の大義、存在意義というところで言うと、スタートアップの方々がいかに日本で脚光を浴びて成功確率上がっていくか、ここに尽きると思っています。そしてそのみなさんに対して私たちがどんなことで貢献できたかという価値、ここがやっぱり作れない限りですね、ビジネスとして費用をいただくのは難しいかなと思ってるんです。

当たり前のことを申し上げていますが、持続性大丈夫なの?と、よくプラットフォーマーとして言われますが、やはり短期的な収益や成長ではなく、例えばスタートアップが費用を頂かないって判断はそこに尽きるかなと考えています。ペインとか課題に対してソリューションしていく、エコシステム全体の中に更に追加で何かを載せていく、というのが「STORIUM×何か」と思っています。

例えば大企業のみなさんの例えばアライアンス共創の伴走サービスを作ったり、あとはCVCのみなさんが今、非常に増えてらっしゃいますので、スタートアップとのマッチング、あるいは出資のアシストをさせていただいたりとか、出会うところまではお届けできてますけど、出会った後にプロジェクト化して、ここに私たちがより伴走をさせていたようなことも考えています。こういったワークショップを提供したりとか、シンクタンク的な役割も含めて今後、拡張していこうっていうのが、次のビジネスにもなっているでしょうし、ソリューションになっていくのかなと考えています。

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