Web3で変わる? スタートアップ支援の構造 / GB 一宮・Knot 小林対談(前編)

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

CryptoPunksなどを発端とする、ここ数年のNFT・クリプト(暗号資産)マーケット加熱によって顕在化したのがWeb3と呼ばれるトレンドです。

透明性高く改ざんが困難なブロックチェーン技術を基礎に、DAOと呼ばれるガバナンスを伴ったコミュニティ、発行されるトークンによる経済圏、そして小さな活動のスケーリングを実現するトラストレスな仕組み。こういった新しいコンセプトによって、国境や人種、名前さえも問わない新たなエコシステムが生み出されようとしています。

急速に立ち上がり、各方面に影響を与えつつあるこのWeb3トレンドをどのように捉えればよいのでしょうか。本稿では前後編にわたって、グローバル・ブレイン Partnerの一宮翔平と、現在、米国にてブロックチェーン・スタートアップ「Knot」をスタートアップさせた連続起業家、小林清剛さんの対談でそのキーワードを探ることにしました。

小林清剛:1981年生まれ。大学在学中にコーヒー通販の事業を手がけ、2009年に創業したモバイル広告「ノボット」は2011年にKDDIグループへ売却するなど、国内のテクノロジー系スタートアップシーンを牽引してきた。2013年に渡米してからは、数社の事業を創業しつつ、2015年に友人らと設立した「TokyoFoundersFund」などを通じて数十社に投資をするエンジェルとしての顔も持つ。

一宮翔平:1991年生まれ。Sonyにてゲーム&ネットワークサービスのシステム構築・ 運用業務及びM&Aやスタートアップへの投資実行推進業務に従事。 グローバル・ ブレインのPartnerとしてシリコンバレー拠点からグローバルのFinTech/Crypto投資を担当。 カリフォルニア大学バークレー校修辞学部卒。

Web3スタートアップと課題

小林:さて、最初はこの話題からいきましょうか。例えば会社がトークンを保有していると税金がかかるみたいな話もあり、日本の起業家が海外に行ってしまう。たとえばドバイ、シンガポール、アメリカ、ヨーロッパとか。今後日本で税制がよくなっていくというのはもちろんあると思うんですけど、Web3っていう最新のトレンドで日本人の起業家が日本から出てしまうことに関してどう思われますか?

一宮:やはり起業家が一番成功確率の高い手段を選ぶのは当たり前だと思うんですよね。日本で起業しようがクリプトで起業しようが、成功確率を上げるのが一番合理的なので、起業家はやらなきゃいけないことをやる。起業家側からすると理解できます。

ただ、残念だなという気持ちも正直あります。日本から海外へ出て、有名なクリプトファンドから調達する事例が普通に出てきてますが、日本の資本が入っても全然おかしくないと思うんです。資金調達としてそういうファンドを用意していれば、可能だったはずです。なので、国や税制だけじゃないと思うんですよね。我々が足りてない部分もあるかもしれません。

小林:グローバル・ブレインのように世界中に拠点があると有利ではないかと思っていて、世界各地でスタートアップとかVCとかエンジェルなどに繋がりがあることがすごく大事になってきてると思っています。

最近、僕はいろいろとWeb3のクローズドコミュニティに入ってるのですが、やっぱりヨーロッパ、アメリカ、アジアがそれぞれ3分の1くらいずつ参加してる感じで、Web3の世界地図ってそうなってるんだなと思っていて。世界中のステークホルダーを最初から集めるという視点も結構大事だなと思っています。そういった世界中の繋がりといった面では、結構グローバル・ブレインとしても相性がいいんじゃないかなという風に思ってるんですけど。

一宮:そうですね。これまでのテックって、特にアーリー・ステージの会社だとローカルビジネスの側面があったと思います。シリコンバレーでYCに応募して、サンフランシスコのアパートでガリガリとコードを書いて、シリコンバレーで大きく伸びていくと、いろんなところにオフィスが増えていくといった具合です。

ヨーロッパだったらロンドン、ドイツだとベルリンなどの場所があると思うんですね。そういう場所でまずチームを作って伸ばしていくみたいな。オフィスを大きくしながら拡大していくっていう考え方が強かったと思うんです。ただ、クリプトだとプロダクト出したらグローバルにいきなり出すっていう前提なので、チームもグローバルでみんな分散してやるっていうスタイル。

我々のように大手でジェネラリストのファンドだと、グローバルで大きいラウンドに投資してきているので、いろんな国に拠点があります。そういうプレーヤーが、ローカルに特化したファンドや組織よりはエッジがある気もしますね。

投資ストラクチャの何が変わる?

小林:最近Web3では特に顕著なのがインフルエンサーというか、影響力のある起業家とか投資を巻き込むっていうことがすごく大事で、彼らを起点にプロダクトが広まっていると思うんです。最近の資金調達でよく見かける、数千ドルという少額でたとえば30人、40人、50人っていう投資家を集めたうえで、それに加えてVC数社が入る場合もあるし、入んない場合もあるみたいなところもあって。

今までのようにVC数社で決めちゃうみたいなところから、多くのエンジェルやファウンダーが投資して、それに加えてVCが入るといった資金調達の変化に関してはどう思われますか?

一宮:一部のトップティアVCはシェアしないことで有名です。全部自分たちで投資するか、そうでなくてもファウンダーと仲のいい2〜3人を加えるだけ、みたいな状態が一般的だったと思うんですけど、だんだんそういうやり方が嫌われる傾向が出てきている気がします。

クリプトのような分散型の世界でグローバルファーストなプロダクトを作ってると、それを嫌うっていうのはすごく合理的だと思います。できるだけいろんな人にモノを使ってもらうためには、ステークホルダーになってもらうのが手っ取り早いですから。

テックのコミュニティで知人の多いVCが全部牛耳るような世界から、日本もヨーロッパもブラジルもアフリカも世界中のファンドが参加している世界への変化というか。

世界中から参加した人たちがプロダクトをそれぞれのローカルで売ってくれるし、マーケしてくれるし、お金を拠出したからこそコミットも強い。今後はそういう流れになっていくかもしれません。

クリプトの世界観は、トップティアのVCがB2Bのソフトウェアの会社に投資して、自分たちのポートフォリオで成功した企業のCEOに売っていくみたいなスタイルじゃないと思うんですよね。やっぱりファウンダーがよりパーティラウンド、ないしはグローバルなオファリングみたいなのをもっと取り入れていくのかなっていうのは個人的に思ってるところです。

小林:そういう状況の中でやっぱり日本の起業家って世界中に対してコネクションがない。そこは世界中に拠点があるVCがかなり貢献できるところじゃないかなという風に思っていて、是非GBさんにも日本の起業家にそこのコネクションを提供して欲しいなと僕も含めて思ってます(笑

一宮:頑張ります(笑

VCに与える影響

小林:一宮さんと言えば「DeFiに精通している」というイメージが強いですけども、インベストメントDAOとか、今後、投資の情報がオンチェーンになっていくといった流れをどう思われてるのかっていうのを聞きたいなと思ってます。

たとえば少し前にSyndicateというプロトコルが「Web3 Investment Clubs」っていう簡単に投資クラブを作れる仕組みを作っていていました。それによって誰でも株式でもトークンでも両方で出資できるインベストメントDAOを、少額のコストですぐに作ることができます。

例えば、インベストメントDAOではメンバーが協力して一緒にソーシングをするといったように、投資家のディールソーシングの方法から、USドルとか円、さらにトークンという投資の形態も大きく変わってきてます。今後スタートアップの投資がどう変化していくのか、また、それを見てVCの視点からはどう思うのかというところは是非ご意見を伺ってみたいです。

一宮:そうですね。恐ろしいと思います。

ベンチャーキャピタルっていろんな案件を数多く見ていて、マーケットのトレンドに精通しているし、ネットワークもあるから案件をソーシングできて精査ができる。

この前提を真っ向から否定するような仕組みなので、そういう世界になっていくと特定の数人で意思決定をして回してる投資の人たちのエッジがだんだんなくなっていく可能性はあると思います。そうすると、VCって自分たちがセントライズドな仕組みだけど、それによってメリットがあるっていうのを何かしら証明しなきゃいけない。

ただ、一気に変わるものではないとも思います。結局今の仕組みってこれまでの背景があって作られてるんですよね。LPがファンドマネージャーとリレーションシップを持ってて、数百億、数千億というお金を預けている。契約もVCファンドだったら10年、ないしはもっと長いものもありますけど、一気にその価値がなくなって、その人たちのお金はいらなくなるとは考えにくいと思います。

小林:あとは最近だとYCの卒業生が集まってつくったWeb3企業に投資をする「Orange DAO」ってありますけど、YCの卒業生のネットワークを活用して多くのWeb3の案件が集まるみたいなところとか、投資もコミュニティの力を活用するように移行して行く流れがあると思っています。

一宮:重要ですよね。一方で、投資って複雑な意思決定を求められるので、必ずしもみんなが集まって民主主義で決めたものが正しいとは限りません。みんなが「いいと思います」と言うものが果たして一番いいリターンを生むかどうかは分からない。

VCっていわゆる工場だと思うんですよね。1人が全部やってる訳じゃないんです。投資をソースする人がいて、それを精査することが得意な、経験があるGPがいて、バリューアップする仕組みがある。それが分散化された時に同じようなものが作れるかどうか、同じようなクオリティのものができるかっていうところが肝になってくるかなと思っています。

ディスラプトされる側にもこれまで存在してきた理由がやっぱりあるんですよね。1年後に全部崩れるようなことはない。徐々に徐々に進化していってディスラプトするっていうのが基本的な流れだと思うんです。なので分散化された投資プロセスをどうやって今のものより良くするのかが肝になってくるのかなと思います。

後半に続く)

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