【Web3起業家シリーズ】D2C・小売の未来形?——まもなく開業、大東氏が米国で試す「DAO型店舗」とは

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DeStore 代表取締役 大東樹生氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

MUGENLABO Magazine では、ブロックチェーン技術をもとにしたNFTや仮想通貨をはじめとする、いわゆるWeb3ビジネスの起業家にシリーズで話を伺います。Web3についてはまだバズワードな要素も含んでいるため、人によってはその定義や理解も微妙に異なりますが、敢えていろいろな方々の話を伺うことで、その輪郭を明らかにしていこうと考えました。

7回目は、サンフランシスコを拠点に活動されるKinomis, Inc.の大東樹生さんです。バーチャルの世界で実現可能なことをいかにリアルの世界とリンクさせていくか、いかに日常社会に実装していくかは、Web3における課題の一つです。大東さんが取り組むのは、D2Cや小売の世界において、商品の作り方や売り方の判断に購入する消費者も積極的に関わっていこうとするアプローチです。

これまでにも、日本では一部の食料品や生活必需品会社などで、ファン消費者に株主というステイクホルダーになってもらうマーケティングが功を奏している事例がありました。DAO が運営する店舗が生まれることで、事業の経営にファン消費者が自ら参画し、判断に影響を与えることができるようになります。DAOがもたらす小売経済の将来について、大東さんに話を聞きました。

現在、カリフォルニアにお住まいなんですよね?

大東:はい。高校3年生の1年間、父の仕事の関係でイギリスに引っ越すことになり、インターナショナルスクールで過ごしていました。元々、スタートアップに興味があって、起業家と話をしたり、イベントに参加したりしていて、当初はスタートアップはなんとなく格好いいなあという感覚だったんです。その後、卒業するタイミングで進路を決めることになり、起業をしたいと思っていたこと、英語が使えること、世界で一番でかいところでやろうと考えたところ、サンフランシスコが最も適しているだろうという結論に至り、高校を卒業した直後、2019年の秋に渡米しました。

イギリスで過ごした経験から起業したいと思ったのでしょうか? それとも、やってみたい事業があって起業したのでしょうか?

大東:起業したくて起業したという感じですね。

幼少期から、ざっくり何か大きなことをしたいという気持ちがありました。僕が中学生の頃、YouTube上でファッションコンテンツが伸びていたにも関わらず専門チャンネルがないことに気づき、YouTubeなら何か大きくて格好良いのではと思い、日本初のファッション専門YouTuberとしての活動を始めました。

その後、多くの方がファッション業界からYouTubeに参入されまして、自分のチャンネルは2万人くらいで終わったのですが、街中で歩いているときに声をかけていただいたり、自身の影響力でお金を頂いたり、知名度を得た時に起こりうることを最低限の程度で経験することができたんです。

同時に、高校1〜2年生ぐらいの頃から、起業家が良いプロダクトを作って世界に広めているのを見て、格好良さそうだと思うようになりました。

YouTubeの経験から、自分にとって人生で大きなことをしたいということは人生で知名度を最大化したいということではないということに気づきました。実際、僕の動画を見て服を好きになり、服飾専門学校に通ってファッションデザイナーを目指している人がいます。自分が作ったもので誰かの人生に影響を与えたり、喜んで見てくれる人がいたり、価値を作って残していくことが大事だと感じるようになりました。

そんなことを高校を卒業するタイミングで考え、純粋に価値を世の中に生み出すような大きな挑戦をしたいと思い、サンフランシスコに行き起業することを決めました。

現在の事業は、どういった思いから作り上げたのですか?

大東:僕が自分の人生の中で大事にしていることが、仁義を通すこと、約束を守るということです。
僕が今通さなければいけない仁義は、投資家に対して「投資していただいたお金が、大きな額になって戻ってきます」というピッチをしてお金を集めているので、当たり前といえば当たり前ですが、それに忠実に意思決定をすることが大事です。いろんな人に助けてもらっているので、スタートアップとして大きな価値を生み出して、彼らに金銭的なリターンも返すことが一番大事だと思っています。

そうすると、世界に求められているものをつくるために、自分の勝率、ある程度の経済規模がありそうな領域を考えることになりますが、小売、ショッピング周りが自分にとっての答えかなと思っています。また、同時にトレンドというのも非常に大事な要素で、小売×Web3というのをテーマにしています。

現在、展開されている事業「DeStore」について教えてください。

DeStore

大東:DeStoreは、DAOでリアルの小売店舗を運営するというプロダクトです。DAOといってもDeStoreを細かく定義するのであればトークナイズドコミュニティという表現になるかと思いますが、皆で店舗を共同運営することを目指していて、消費者がNFTを買うと、同じ NFTを持っている人たち同士で、実店舗で何を売るか、どんなセールを行うかなど、楽しい経営の意思決定だけができるプロダクトになっています。

昨年、違う小売店舗のコンセプトをテストしまして、実際に店舗を運営しました。そこで得たインサイトとして、ほとんどのお客さんはコミュニティへの帰属意識による購買を行うこと、つまり実店舗の小売のカギはコミュニティであるということでした。それを高めるために、トークンNFTを使って、コミュニティが店を共同所有することで帰属意識を高められないかというのが大きな仮説でして、そんなコミュニティネイティブな体験をつくるためのモバイルdApp(分散型アプリ)を作っています。

弊社自体が手がける一号店はサンフランシスコのヘイズバレー(Hayes Valley)という、世界的 D2Cブランドが並ぶ一等地にあります。NFTは今年末くらいに正式ローンチ、その少し前にソフトローンチができるよう準備している段階です。現在はローンチ前なので店に商品は並んでいませんが、特定のNFTホルダーがコワーキングとして使ったりしています。

DAOが運営するということは、消費者と販売事業者、売る人と買う人が同じになる、というようなイメージなのですか?

大東:おっしゃる通りで、消費者とオーナーが混ざる世界が我々の目指している世界ですね。一番参考にしているのは、元 Benchmarkのパートナーで今はAdobeのCPOをされているScott Belsky氏が書いた「The Stakeholder Economy & The Prospects Of Collective Ownership(ステークホルダー・エコノミーとコレクティブ・オーナーシップの展望)」という記事です。

彼が言うには、地元ビジネスや実店舗を含むブランドと消費者の関係性が、Web2の時代はブランドとエバンジェリストみたいな形でしたが、次は皆がオーナー、つまりステイクホルダーになる、と提唱しています。全員が同じストーリーをシェアして、消費者とオーナーの境目を曖昧にすることができれば、より強固なコミュニティドリブンな店舗形態に繋がると思っています。

世界的なD2Cブランドが並ぶエリアに店舗を設置されるとのことでした。ここに商品を並べたい、販売がしたいと考えるのは、どのような業態が多くなるでしょうか?

DeStore1号店の外観

大東:扱う商品に関しては、今回の1号店ではエリアの特性上、飲食を含むD2Cブランドや古着や雑貨、キャンドルなどの扱いが多くなると思っています。最初はテクノロジー周りの人が多いでしょうし、デザイナーズブランドなどが入ってくるほど、web3が一般にまで浸透しているという感じではまだないでしょう。

ただ、弊社がやろうとしているのは店舗を増やすことよりも、1号店を通じて、「こういう形で運営すると、店舗の効率がこれだけよくなりました」とか、「これが次のボトムアップな店舗作りのフレームワークですよ」ということをソフトウェアで表現することで、そのコミュニティネイティブなソフトウェアをブランドやショッピングモールなどが導入できるような形で提供していきたいと考えています。

ですから、店舗毎に独自のミッションステートメントや商品ラインアップを設定することになると思っています。1号店は世界初のDAO店舗を作ろうという実験に参加したい人が集まる店舗になるでしょう。例えば、サステナビリティに強いミッションをもつブランドが実店舗を開店する際にDeStoreのソフトウェアを使用してもらい、そのミッションに共感した人たちによって商品ラインナップが定義されているお店ができたりするかもしれません。

開発中のdAppはどのようなことに使われるのでしょうか? DAOの意思決定などはDiscordなどでもできると思うのですが。

大東:店舗のファイナンス管理、プロポーザル、などが主な体験です。何が売れているか売れていないかとか、DAOのトレジャリーに入っているお金の状況などが一括して見れるようになっています。また、ホームでは、店のライブストリームを配信して、リアルタイムで商品が売れると売れた商品が表示されるようになっています。

Discordなどでも不可能ではないので初期はある程度Discordなどを使って実験をしていくのですが、やはりコミュニティネイティブな意思決定の体験という観点では自社で開発すべきところだと思っています。DeStoreは、特に仕入れのパートで特定の楽しい意思決定に値するものにコミュニティを巻き込んでいきつつ、そのほかの煩雑なオペレーションはDeStoreが巻き取るという形を取っています。

そうすることで、DAOのメンバーは「この店、俺が関わってるんだよね」って言いたくなる。そういう導線を作るためにも、自社でdAppを開発しています。そして今後他の事業者さんが店舗を開設する場合は、既存よりも良いコミュニティエンゲージメントのツールとして使っていただければと思っています。

1号店に関しては、その店舗をやると言っているのが我々なので、ショップスタッフやマーチャンダイザーも我々が雇って配置することになります。(店舗運営の)事業者向けに、この部分もサービスに組み込む可能性もあるかと思います。

DeStoreはどうなったら成功だと思いますか?

大東:まずは、1号店が平均的な小売店舗よりも高い売上を出す、というのが目標になります。あとは基本的に小売のブレークイーブンには非常に時間がかかるので、それをまた短くできるとか、平均的店舗よりカスタマーエンゲージメントが高いとか、そういう数値を出すことが第1ステップですね。

その次にどうスケールさせていくかという議論になると思うんですが、最終的には我々のDeStoreが有名になっているというよりも、我々が作り出したフレームワークとか、モデルやソフトウェアを使うとか、あるいは、その上にさらにフレームワークを載せる小売事業者とか、Web3プロジェクトとかが来てくれるとうれしいですね。

小売に限らず、レストランやカフェなど実店舗的なステークホルダーエコノミーの一番根幹になるようなプロジェクトになれたらいいなと思います。web3×実経済の観点で一番大きなテーマだと思っています。

アメリカで頑張っておられる立場から、日本の起業家や大企業の方へメッセージをください。

大東:どこの国で起業するか、誰に対して事業をするかは、各々の志や通した仁義によって変わると思いますが、少しでも世界に届けたいとか、アメリカに憧れがあるとか、グローバルでモノを作りたいと思ってらっしゃる方は、一刻も早くアメリカに来て、起業家として経験を積んでいくといいと思います。僕も先輩方から、そういう言葉をもらって来ましたし、それに後悔していることは全くありません。

いろんな理由でいろんな国に行く人はいると思いますが、こと消費者を相手にすることを考えると、アメリカほどいろんな人種が集まっていて、経済的にも大きな規模を誇っている場所は無いので、プロダクトをグローバルに広げるにあたって、効率の良い場所はここだろうと思っています。

DeStore はアメリカのスタートアップですが、今後十分に成長し日本に進出できる日が来た時には、ビジネスで手を組ませていただいたり、日本の外から内から共に日本をよくしていくことに寄与できたりしたらいいなと思います。

ありがとうございました。

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