OpenAI競合のAnthropic、今後2年間で50億米ドルの調達を模索——対話型AIの主要産業参入を目論む

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OpenAI の元研究担当副社長 Dario Amodei氏 が2021年5月、妹の Daniela 氏(同じく OpenAI の社員)と共同で設立した Anthropic は、主に AI の安全性に関する研究に注力していると説明した。しかし当時でされ、AI の研究が商業的な価値を生み出す機会が多く見受けられたという。

その商業的な焦点は6日の TechCrunch の記事でも存分に示された。TechCrunch はAnthropic の社内文書にアクセスし、同社が「ライバルの OpenAI に挑み、12以上の主要産業に参入するために今後2年間で50億米ドルの調達を目指している」と明らかにしたのだ。

このニュースは、AI の展望に「産業界による支配(industrial capture)」が迫っているという最近の報道、つまり、「一握りの個人と企業が現在、この分野の資源と知識の多くを支配し、最終的に我々の集団の未来への影響を形作るだろう」ということを強調している。

OpenAI の元社員が設立

Anthropic が「AI の安全性と研究」の会社だと自称していたのがつい昨日のことのように感じている人にとって、このニュースは衝撃的かもしれない。Amodei 兄妹は、「2019年にMicrosoftから画期的な10億米ドルの投資を受けた後のグループの方向性をめぐる相違」を理由に、OpenAI を去っているのだ(そして他の OpenAI 社員9人も連れてきた)。

しかし Anthropic は、1億2,400万米ドルの調達を発表した設立当初から、大金を調達していたことも事実である。それから1年も経たないうちに、いきなりシリーズ B ラウンドで5億8,000万米ドルという巨額の調達を発表した。資金の大半は、Sam Bankman-Fried 氏と、詐欺で告発されて現在は倒産している暗号通貨プラットフォーム「FTX」の人々から得たものであることが判明している。その資金を破産裁判所が回収できるかどうかについては、これまでにも疑問が上がっていた。

Google は2月上旬、Anthropicに3億米ドルの出資を発表した。Anthropic はその時点で、「憲法AI」と呼ばれるプロセスを用いて、AIチャットボット「Claude」をすでに開発しており、同社によれば、声rは「恩恵、非利益、自律」といった概念に基づいているという。

大きな賭けに出る、オープンソース AI 開発各社

産業界による支配に近い兆しがあるのは間違いない。4月7日、New York Times は「OpenAI が2022年11月に ChatGPT を立ち上げて以来、Google と Microsoft が積極的にジェネレーティブAIのコントロールに動いていると」報じた

記事によると、テック業界が突然新しい技術にシフトしたとき、最初に製品を投入した企業は「最初に始めたというだけで長期的な勝者になる。その差がたった数週間であっても…。」と、Microsoft の技術幹部である Sam Schillace 氏は社内メールで書いている。

しかし先週、サンフランシスコでオープンソース AI のミートアップイベントを開催し、瞬く間に5,000人規模の「AI のウッドストック」へと瞬く間にに変貌した Hugging Face のリーダーたちは、オープンソース AI のパワーと影響力を熱心に指摘した。

もし「Attention Is All You Need」論文(編注:Transformer を提案した論文)、「The BERT」論文、「Latent Diffusion」論文がなかったら、AI の能力や可能性という点で、現在の状況から20、30、40、50年離れていたかもしれません。オープンソースのライブラリや言語がなかったら、PyTorch、TensorFlow、Keras、Hugging Face、トランスフォーマー、ディフューザーといったフレームワークがなかったら、今の状況はなかったでしょう。(Hugging Face の CEO Clement Delangue 氏)

また、3月はオープンソース AI が特に好調で、Sebastian Raschka 氏はブログ記事で、「AI 開発がクローズドソースに傾くことが懸念された後(GPT-4を参照)、オープンソースが第二の風を受けて上昇傾向にあり、これはとても素晴らしいことだ。」と記載した。

PyTorch 2.0 や Lightning 2.0 に加え、Meta の大規模言語モデル(LLM)「LLaMA」を書き直した「Lit-LaMA」が存在する。また、スタンフォード大学がリリースした「Alpaca」、複数の大学がリリースした「Vicuna」、Databricks がリリースした「Dolly」など、LLaMA から派生したモデルもいくつかある。これらはすべて、ビッグテック/ビッグラボの LLM よりも小規模で、コストが低く、柔軟性が高く、ベンダーロックインを避けることができる。

それでも、資金力のあるオープンソース企業でも無防備ではない。例えば、Stable Diffusion を立ち上げた Stability AI は、Semafor Tech の新しい報道によると、不安定な状態にある。Semafor Tech によると、Stability AI は、昨年末に調達した1億米ドルのかなりの部分を焼き尽くし、匿名を条件に Semafor に話した2人のベンチャー投資家は、同社の評価を4倍の40億ドルにするラウンドへの参加を考え直しているという。

大企業や研究所は、まだまだ足元にも及ばない

明らかに、大企業や研究所はジェレネーティブ AI の競争で優位に立っている。最も顕著な理由は、サーバやコンピューティングリソースへのアクセスである。例えば、OpenAI は Microsoft Azure 上で動作し、Anthropic や DeepMind は Google と連携している。

一方、需要が高い時代には、スタートアップやその他の企業は必要なものにアクセスするのに苦労している。7日の The Information は、「彼らは、自分たちの AI ソフトウェアを作るのに十分な専門的コンピュータが見つからない」と報じている。Amazon Web Services、Microsoft、Google、Oracle を含む主要なクラウドサーバプロバイダは、顧客に利用可能範囲を制限しており、一部の顧客は、ハードウェアをレンタルするのに長い待ち時間を報告していると記事は伝えている。

DeepMind は今のところ議論の外

OpenAI の立ち上げ時に最大のライバルと目されていた AI ラボの DeepMind は、このところ静かである。人類が知るほぼすべてのタンパク質の 3D 構造を予測した「AlphaFold」のデベロッパとして賞賛されているこの研究所は、AI に関する議論が盛んな中、ChatGPT のリリース前からプレスリリースを一切出さず、ほとんどニュースを発信していない。

唯一の例外は、1月に行われた CEO の Demis Hassabis 氏の Time のインタビューである。そのインタビューで Hassabis 氏は、珍しく厳しいメッセージを発して注意を促した。

私は、速く動いて物事を壊さないことを勧める。

Hassabis 氏は Time の取材に対し、DeepMind は「Sparrow」と呼ばれる独自のチャットボットを2023年のある時期に、プライベートベータ版としてリリースすることも検討している(リリースを遅らせたのは「その点では慎重であることが正しいから」)ことを明かした。しかし彼は、DeepMind が方針を転換する必要があるかもしれないことを認めた。

私たちはフリーローダー、つまり読んでいてもその情報基盤に貢献しない人々について考え始めなければならない時代になってきている。そして、その中には国家も含まれている。

Time はどの国を指しているのか聞いたところ、 「誰が考えても明らかだ」と彼は回答を断ったが、AI 業界が調査結果をオープンに公開する文化は、すぐに終わらせる必要があるかもしれないことを彼は示唆している。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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