上場スタートアップ「死の谷」資金を支えるファンズ、予約可能な米ドル建て新商品発表ーー100億円規模も調達可能に #IVSPRWeek #IVS2023

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ファンズ代表取締役の藤田雄一郎氏

#IVSPRWeek はスタートアップカンファレンス「#IVS2023」とプレスリリース配信サービスのPR TIMESが企画する「Startup!PR Week」参加企業による新製品情報をお伝えします。同社のプレスリリースはこちらから

ニュースサマリー:貸付ファンド「Funds」など展開するファンズは6月29日、新たな米ドル建て私募ファンドの取り扱いを公表した。6月16日に組成したもので、借り手はオフィスビルなど不動産運用を手掛けるADワークスグループ(東証プライム:2982)。年利5%超の利回りを目指し、国内企業の米ドル調達の新たな選択肢として提供される。

米ドルファイナンスは、国内企業の海外事業資金調達手段として重要な役割を持つ一方、調達手段は限定的で、公募社債等の発行を行う際には格付けの取得や大量のロット発行が必要となるなどハードルが高い。ファンズの新ファンドは、日本企業が国内の投資家からFundsを通じて米ドルを調達し、海外でファイナンスを行うよりも低コストで機動的なファイナンスを実現する。

また、従来のファンズでは1ファンドあたり1億円から10億円程度のサイズが一般的だったが、今回の商品では大口投資家限定とすることで、1ファンドあたりのサイズを数十億円から100億円に拡大する。さらにこれまでの募集では原則として申込順だったのを予約可能としたのも特徴。1口10万米ドル以上から投資可能な大口とファイナンスニーズのある企業を的確にマッチングさせる。なお、運用期間は2、3年を予定しており、目標とする利回りは5%程度を見込む。申し込みは従来のFundsとは異なり、個別に問い合わせが必要。

話題のポイント:2016年創業のファンズから大口商品の登場です。Fundsは個人が上場企業などに1円単位で資金を間接的に貸付できるファンドを企画しているスタートアップです。ファンド運用数は321本、運用総額は396億円以上で、これまで元本毀損して終わったファンドはなし。平均的な運用期間は14カ月で利回りは2%程度となっています(2023年7月3日時点での数値・サイトより)。

株や仮想通貨(暗号資産)のような激しいボラティリティはなく、かといって銀行金利とは比較にならない利回りを実現している人気の金融商品になっています。

そんなファンズから新しい商品が出たのですが、とてもシンプルに言うと、10万米ドル以上投資できる個人・法人向けのテーラーメイドタイプのもので、特に人気のFundsだと募集開始数分で売り切れてしまうところを予約可能にした、という感じになっています。

ベンチャーの死の谷を救うファイナンス手法

2023年7月時点での実績

ファンズが独特なのは社債によく似たスキームで企業が株や融資以外の手法で資金調達をすることができる「貸付ファンド」という手法を編み出したからなのですが、これが今、また新しい側面で注目を浴びるようになっています。

それが上場後スタートアップの「死の谷」問題です。

これは東証グロース・スタンダード(旧マザーズなど)に上場する企業に襲いかかる頭の痛い問題で、成長途上にあるため時価総額が抑えられ、有利な条件での新株発行などによる資金調達が難しく、かつ、赤字状態で成長優先させることで金融機関による融資の条件も厳しくなる、という「板挟み」状態のことを指します。

特に日本国内では株式市場(日経平均は除いて)の冷え込みが昨年より始まり、2022年のIPOの平均評価額が2021年平均の162億円だったのに対して82億円と半減している状況があります。ファンズ代表取締役の藤田雄一郎さんに京都のIVSで話を聞いたのですが、この死の谷にはまり込みながら、成長資金を用意しなければならない企業を中心に引き合いが増えているという話でした。ということで、藤田さんに最近の状況をお聞きしたので一問一答で掲載させていただきます(太字の質問は全て筆者、回答は藤田氏)。

IVSのプレスセンターで会見した藤田氏

資金調達には株式や融資があるが、改めて企業が資金調達の手段としてファンズを選ぶ理由を教えて欲しい

最近は『上場スタートアップ』と言って、上場してからなお積極的に投資して成長し続ける企業さんがいらっしゃるじゃないですか。ああいう企業さんの成長資金のニーズが結構あって、例えば新規事業やるための資金やM&Aのための資金として活用いただくケースが増えています。

例えば銀行から借りようとしてもまだ上場したてだとそんなに財務諸表的に銀行からたくさんのお金を借りることができなかったり、かといってエクイティで調達しようと思っても、時価総額がまだ高くないので大きい額を調達できない。一方で、いい会社を買おうと思うと5億円とか10億円がかかるじゃないですか。こういう上場スタートアップの成長資金ニーズが増えていますね。

社債は格付けがしっかりしている上場企業の一部しか発行できないし、私募債も銀行融資とそこまで変わらない、であればファンズのスキームを使う

日本の上場企業は米国と比較すると、レイターステージがちょうど日本のグロース市場みたいな感じなので、すごいポテンシャルはあるんです。一方、そこへの資金供給が十分じゃなくて、金融機関も動いているのですが、レギュレーションがやはりカッチリしているので、そこからどうしても外れた資金っていうのが結構あるんですよね。なので、金融機関とは協調融資のような形でご一緒するケースもありますよ。

新しい資金調達の形だと米Pipeが作った成長見合いの与信で融資を実現するようなモデルもあるじゃないですか。今後、国内でもデットファイナンスの選択肢は広がる?

今回発表した外貨建てファンドは、日本の成長企業、海外に進出するときの外貨調達の部分をサポートするものですし、売掛債権をベースにファイナンスするようなプレイヤーがどんどん出てくることによって、デットファイナンスっていうものが選択肢としてあるんだっていうのを、スタートアップの人たちにも認識してもらうよい機会じゃないかなと思ってます。

気になるのが資金調達をする側の調達コスト。ファンズの利回りが平均2パーセントだと投資家はもちろん嬉しいが、調達する側としてはやはりかなり高く感じてしまう

これはですね、合わせ技で金融機関で調達しきれなかった部分をファンズ側で調達したりするので、平均化すると調達するコストは抑えられるんです。あと、資金効率がやはりよくなりますよね。これまで株も融資も条件会わずに手持ち資金だけでやっていたところに数パーセント支払うだけで外部資金を使って事業をすることができるようになる。こういった経済合理性で使うと言ってくださる企業さんもいます。

時価総額で500億円以下、機関投資家のスコープにまだ入らないけど成長している企業ってたくさんあるんです。そこに滞留している1000兆円とも言われる日本の資金を流し込むことが大切なんですよね。そこをやれるプレーヤーとして存在感出していきたいですね。

ありがとうございました

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