テーマは「Cross the Boundaries」——スタートアップカンファレンス「 #IVS2024 」が京都で開幕

SHARE:
左から:京都市長 松井孝治氏、IVS CEO 島川敏明氏、京都府知事 西脇隆俊氏
Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、7月4〜6日に開催されている、IVS 2024 KYOTO の一部。

日本のスタートアップ界で最も注目されるイベントの一つ「IVS2024 KYOTO」が華々しく幕を開けた。古都・京都の地で開催されるこのカンファレンスは、革新的なアイデアと熱意あふれる起業家たちが一堂に会する場として、回を重ねるごとに、その規模と影響力を拡大している。

今年のIVSは「Cross the Boundaries」をテーマに掲げ、既存の枠組みや障壁を越えて新たな価値を創造することの重要性を強調している。オープニングセレモニーでは、主催者や来賓らが次々と登壇し、スタートアップエコシステムの更なる発展への期待と展望を語った。

IVS CEO 島川敏明氏は冒頭の挨拶で、スタートアップ界に依然として存在する多くの壁について言及。IVS が夢を語り合い、共鳴し、未来の協業につながる場となることへの期待を表明した。

東京とか、地域とか、多くの壁がまだまだスタートアップ界にあると思っています。それを乗り越えていこう、ここにいる参加者の皆さんで一緒に乗り越えていこう、ということをテーマにしています。そして、夢を持つことを恐れちゃいけないと思います。僕たち、スタートアップや起業家は、夢に共鳴している人たちだと思うんです。

Image credit: Masaru Ikeda

京都府知事の西脇隆俊氏は、京都の産業の歴史的背景に触れつつ、IVSの意義を語った。

京都の産業を紐解くと、若い起業者が大先輩経営者から助言を得ながら成長を重ねて、世界的な企業になってからも、本社を京都に構え続け、次なる経営者を育ててきた歴史があります。世代、大企業、研究者、学生といった立場を超えて「Cross the Boundaries」の旗印のもとに日頃、お付き合いのない方のない方同士も積極的に教え学び合って、最後は新しいビジネスを作る仲間を作っていただければ幸いです。

京都市長の松井孝治氏は、自身の選挙キャッチフレーズであった「突き抜ける世界都市京都」に触れ、多様性と融合の重要性を強調。「京都ぬか床論」という独自の概念を用いて、「ぬか床のような、いろんなものが混じり合って新しい価値を発信するまち京都でありたい」と述べ、IVS がそうした価値創造の場となることへの期待を表明した。

Image credit: Masaru Ikeda

IVS2024 KYOTO は、メイン会場でのセッションや展示に加え、京都市内で300を超えるサイドイベントが開催される予定だ。この多彩なプログラムは、参加者間の活発な交流と新たなビジネスアイデアの創出を促進することが期待されている。イベントは今後3日間にわたって続き、スタートアップ界の最新トレンドや革新的なアイデア、成功事例などが共有される。

新産業創出に向けて、リーダーたちが語る壁の突破と未来

Image credit: Masaru Ikeda

オープンニングに引き続き、「Cross the Boundaries」をテーマに、京都府知事の西脇隆俊氏、インテグラルでパートナーを務める佐山展生氏、りそな銀行代表取締役の岩永省一氏、衆議院議員の小林史明氏を招いてのパネルディスカッションが持たれた。モデレータは、Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香氏が務めた。このパネルでは、既存の枠組みを超えた新たな価値創造の可能性が多角的に探られ、参加者たちに深い示唆を与えた。

京都府知事 西脇隆俊氏
Image credit: Masaru Ikeda

西脇氏は、京都が持つ独自の強みを活かしながら、産学公連携や国際交流を通じて新たな産業創造の拠点となることを目指していると力強く述べた。また、京都の文化的背景がイノベーションの土壌となっていることにも言及した。

京都で国際会議とか学会をやれば、一番参加者が多くなるということは、もうずっと言われていますが、それがようやくこういうスタートアップの世界でも、京都であれば人が集まるようになった。文化と産業の融合がもたらす可能性をテコに、若者が住んで働いて家庭を持ちたい京都にするしたい。

インテグラル パートナー 佐山展生氏
Image credit: Masaru Ikeda

佐山氏は、優秀な人材を集めるための税制改革の必要性を指摘した。また、インフラ整備や住環境の改善が人材誘致に重要だと述べた。

例えば、京都が金融特区をして、税制優遇をするとトップが言えば、人が集まると思います。言ったら人が集まるんですよね。京都は住み心地がいいですから、いろんな税制面の整理をしていただいて、優秀な人が集まれば、どんどん新しいビジネスができてくる。新しいことをやろうと周りに話すとそんなことやめとけと言われるでしょうが、既存の常識にとらわれない発想が重要です。

りそな銀行 代表取締役 岩永省一氏
Image credit: Masaru Ikeda

岩永氏は、銀行がスタートアップへの融資を積極的に行う姿勢を示し、金融界からの強力な支援を約束した。

銀行は、(従来からの融資の考え方を大きく変え)新しい若い会社に融資をする形を作る必要があります。そして、銀行が取引先とスタートアップを結びつけるが重要です。銀行自体が皆さんの応援団なんです。これまで、スタートアップの皆さんとのアクセスポイントが、自分たちはすごく少なかったなっていう反省をしております。これから改善します。

衆議院議員 小林史明氏
Image credit: Masaru Ikeda

衆議院議員の小林史明氏は、規制改革の重要性を強く訴えた。特に完全なライドシェアの解禁に向けた取り組みについて言及し、また、省人化や自動化への投資の重要性を強調した。

ライドシェアについては、完全解禁の方向で、今年中に決着をつけさせていただきます。また、2040年から2050年にかけての人口が2割減少しますが、これをを見据え、生産性向上のための投資が必要です。10人でやってる仕事を8人で回す社会。これが明確な KPI です。

パネリストたちは共通して、既存の枠組みや慣習にとらわれない新しい発想の重要性を繰り返し指摘した。佐山氏は「誰もやったことない、できたら面白いということ」を重視すべきだと述べ、挑戦の重要性を訴えた。小林氏も「慣習や思い込み、そして制度、これは変えられるものだ」と述べ、意識改革の必要性を強調した。

特に、多様性(ダイバーシティ)の確保や、異なる分野間の連携(Cross the Boundaries)が、イノベーション創出には不可欠だという点で意見が一致した。特に小林氏は、異業種間の連携の可能性を示唆した。

自らダイバーシティを獲得していく。そして、それは皆さんの組織もそうです。特に優秀な中堅企業は、地方に眠ってるんすよ。この人たちと皆さんが出会えば、1桁2桁大きな成長は必ずできると思います。

議論を通じて、日本の新産業創出に向けた具体的な課題と方向性が浮き彫りになった。技術革新と人材育成の両面からのアプローチが必要であり、それを支える環境整備が急務ということだろう。今後、これらの提言がどのように実行に移されていくか、特に、地方創生と新産業創出の融合、大企業とスタートアップの連携、国際競争力の強化といった観点から、具体的な施策の展開が期待される。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する