バンクーバー発・工業労働者向けウエアラブルARデバイスを開発するRealWear、シリーズAラウンドで1,700万米ドルを調達

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建設業界やその他重工業の労働者をターゲットとするウエアラブル AR デバイスを開発する RealWear が1,700万米ドルを調達した。

バンクーバーを本拠とする RealWear は、頭部や安全ヘルメットにバンドを巻いて固定するハンズフリーの「HMT-1」をすでに出荷している。HMT-1 はウエアラブルデバイスだが、RealWear のCEO Andy Lowery 氏は「ヘッドマウント型タブレット」と呼んでいる。なぜなら、作業しながらでも7インチの Android タブレットと同等サイズの画面を見ることができるからだ。

今回調達した資金は、厳しい職場環境で勤務する労働者を雇用している世界中の顧客に向け、同デバイスの増産に活用される予定。このラウンドは Columbia Ventures がリードし、Realmax も参加した。

Lowery 氏は VentureBeat とのインタビューで次のように話した。

当社は産業界をこの製品のターゲットにしてきました。

固いヘルメットにパチッとはめられるような、防具にフィットするウエアラブルコンピュータを設計したのです。Google Glass(販売終了済)に似ていますが、屋外での使用向けにデザインしました。

HMT-1 は利き目で見やすいように調整できる。ビューイングポッドを視線のすぐ下になるように調整できるので、目の前にある全てのものを両目で見ることが可能だ。眼鏡とは違い、ディスプレイを片目で見ながらボイスコマンドで端末をコントロールできる。

RealWear の AR ウエアラブルデバイス(ヘルメットは含まない)
Image Credit: Realwear

同社は石油業界、エネルギー業界、通信業界、電気・水道・ガス関係、製造業、運送業などの労働者をターゲットとしている。こうした業界の労働者は建設現場や精錬所など旧来型のコンピュータデバイスやスマートフォンでさえ使用できない場所に行くことが多々ある。複雑な修復作業を行う人にとって、ウエアラブルは「第3の手」となると Lowery 氏は話す。

HMT-1 はリモートメンタービデオ通話やドキュメントナビゲーション、ガイド付きワークフローやモバイルフォーム、産業用IoTデータ視覚化を提供し、現在10言語で使用可能だ。このデバイスであれば、業務に必要な他のツールを使用することができる。建設現場の足場やタワーを登っている最中、また、騒音やホコリの多い環境や危険な環境であってもだ。労働者が周囲の状況に注意を払うこともできるので、HMT-1 はタブレットやスマートグラスよりも素早く、安全かつスマートだと Lowery 氏は話す。

ボイスコマンドで指導員に電話をかけ、見えているものを見せることもできます。(Lowery 氏)

Lowery 氏は別の AR グラスメーカー Daqri で2014年から2016年に社長職を務めていた。しかし同氏は Daqri を辞め、2016年8月に RealWear を立ち上げた。

Columbia Ventures の CEO Ken Peterson氏は声明の中で次のように述べている。

産業施設の現場でHMT-1を目にした後、それがARとウエアラブルの価値をいま産業界に実際に提供できる唯一の製品であることは明白でした。

私たちにとってRealWearのビジョンは説得力があります。産業界での作業のやり方を変革する可能性があり、産業界の知的労働者は現場に出向かなくても、リアルタイムの情報を得ることができます。RealWearはARとウエアラブルソリューションを実際の産業界のユースケースで機能させ、さらにその他の限りない使い方を探求する経験と意欲があることを証明したと言えます。

RealWear は設立後たった8ヶ月の2017年初頭に同デバイスのベータ版を出荷開始し、その半年後には量産に移行した。これまでに200社を超える顧客に数千台を出荷し、現在は1週間あたり約1,000台のペースで生産している。

デバイスは様々なヘッドギアにクリップ留めが可能で、頭部に巻いて着けることもできる。バッテリー持続は12時間、グラスやヘッドマウントディスプレイなどとして身につけるその他多くの端末よりも強力な処理能力とメモリーを実装している。

Raytheon に長年勤務した Lowery 氏に加え、同社のリーダーには CPO の Sanjay Jhawar 氏、CTO の Chris Parkinson 氏、CRO(最高売上責任者)の Brian Hamilton 氏、産業デザイン兼人間工学担当 VP の Stephen Pombo 氏がいる。

同社はこれまでに1,700万米ドルを調達しており、今後数ヶ月でさらに300万米ドルを追加する見込み。従業員数は70名だ。

RealWear は、目の前に7インチの Android タブレットと同等サイズのスクリーンを投影可能
Image Credit: Realwear

この製品は厳しい非難を浴びた Google Glass を連想させるが、見た目の美しさは狙っていない。見た目を気にするのであれば、Lowery 氏が以前勤めていた Daqri が作っている AR グラスのようなものの方がおそらく気に入るだろう。しかし RealWear は安全を重視しており、そのため、端末をヘッドマウントウエアラブルとしてデザインした。

この製品はクールな見た目である必要はないのです。不格好なヘルメットに装着されるのですから。(Lowery 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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