「人間の創造性2.0」の時代がやってきた【ゲスト寄稿】

本稿は、Cherubic Ventures(心元資本)によるものだ。2014年に設立された同社は、アメリカとアジアの両方で活動するアーリーステージ・ベンチャーキャピタルであり、運用総資産(AUM)は4億米ドルだ。シードステージ投資を中心に、次の象徴的な企業の最初の機関投資家になることを目指し、大きな夢と世界を変える勇気を持つ創業者を支援している。同社は、サンフランシスコ、シンガポール、台北に拠点を置いている。(過去の寄稿

The guest post is first appeared on Cherubic Ventures’s blog.  Founded in 2014, they are an early-stage venture capital firm that’s active in both the US and Asia, with a total AUM of 400 million USD. Focusing on seed stage investments, Cherubic aims to be the first institutional investor of the next iconic company and back founders who dare to dream big and change the world. Their team sits across San Francisco, Singapore, and Taipei.


Image by Mike MacKenzie via Wikimedia.
Used under tthe CC BY 2.0 license.

ジェネレーティブ AI ツールが登場する以前から、私たちはソーシャルメディアやモバイルアプリによって、コンテンツの制作や配信のハードルが劇的に下がった世界に生きていた。この時代を「創造性 1.0」と呼ぼう。そして今、AI ツールは、コンテンツ制作能力や効率を大幅に向上させるだけでなく、クリエイターが今まで知らなかったようなものを開発できるようにし、突然、急速に「創造性 2.0」の時代に突入させたのだ。

わずか数カ月前にスタートしたジェネレーティブ AI「ChatGPT」は、すでに Amazon の Kindle ストアで販売されている200冊以上の AI 生成書籍を生み出している。伝統的な職人技を重んじる日本でも、ある出版社から、AI だけで描かれた初のマンガが発売されたばかりだ。ジェネレーティブ AI は、実用的なスキルや才能を持たない人々が、想像の中にある創造的なアイデアを実現することを可能にしているのだ。

同時に、ディープフェイク AI 技術は、高齢の出演者が年齢の限界を超えることを可能にしている。例えば、ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演の期待作「Here」は、ディープフェイク技術を使って、ハンクスが若い頃の自分を演じられるようになると、メディアで話題になっている。また、世界的なスーパーバンドである ABBA は、AI とホログラム技術によって全盛期のステージに戻り、年配のファンが青春時代を追体験できる新しいハイブリッドコンサート体験「ABBA Voyage」を実現している。

年齢や才能に関係する制約をテクノロジーが克服し続けることで、エンターテインメントや IP マネジメント、さまざまな形態のコンテンツ制作の風景が劇的に変化していくことが予想される。これまで考えもしなかったような新しいアイデア、体験、フォーマットが、私たちの視点を新鮮にし、人間の想像力を新たな高みへと導いてくれるかもしれない。

AI は特定の分野を破壊する一方で、これまでできなかった夢を実現するための新たな機会を私たちに与えてくれている。人間の創造性 2.0の時代は、私たちの能力ではなく、想像力によってのみ制限される時代であることは間違いない。すべての人がその創造力を存分に発揮できる、そんな新しい時代を迎えている。

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