IoTは「サービスのモノ化」と考えたほうがわかりやすい

Yasunori Okajima by Yasunori Okajima on 2014.7.30

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ハードウェアベンチャーの盛り上がりとともに「IoT(=Internet of things)」という単語が流行っています。毎日聞くね!とまではいきませんが、3日に一度はニュースサイトなどで見るね!程度は流行っています。そんなIoTですが、「モノのインターネット」と翻訳されているようです。「インターネットにつながるハードウェア」といったところでしょうか。

IoT系ハードウェアの代表例としてはNestfitbitが挙げられることが多いです。これらはサービスとハードウェアを組み合わせた素晴らしい製品だと思います。

一方で「これってとりあえず家電をスマホに繋いだだけじゃ…」と感じる製品もあります。「良いIoT製品」と「変なIoT製品」の違いはどこにあるのでしょう。

以前、FBでそういったことをポストしたところ、チームラボの高須正和さんから「『モノのインターネット』と捉えるより『サービスがモノの形を取る』と捉えたほうが良いのでは?」という旨の指摘をいただきました。この視点は素晴らしいと思います。

IoT系の製品をいざ自分が作ろうと考えた時、「インターネットにつながるハードウェアを作ろう」と考えるのではなく「サービスのモノ化」という視点で考え、「このサービスを提供するためにどうすればいいか?ハードウェアを絡めれば解決できるのか?」という所から製品作りをスタートするとうまくいくかもしれません。

スマートロックが提供するサービス

「サービスのモノ化」の例としてスマートロックを挙げます。スマートロックはWebサービスとハードウェアを組み合わせた例として特に注目されている分野です。スタートアップを含む様々な企業がすでに製品を販売しています。

玄関に取り付けた鍵を無線でスマートフォンから解錠できる、というのが基本的な機能。解錠した人の顔を撮影して家主にメール送信する、といった機能を持つものもあります。

そして彼らは単に「玄関の鍵をネットに繋いだからスマホから鍵を開けられるよね、いつでも自分の家の施錠状態をスマホで確認できるよね」という以上のサービスを描いています。

例えばAugustが販売しているスマートロック「Goji Smart Lock」は、指定のユーザーのスマートフォンに鍵を開けるための電子キーを送ることができます。電子キーを送られたユーザーはそのスマートフォンをGojiに近づけるだけで鍵を開けることができます。ここまではよくあるスマートロック。

Gojiは製品のプロモーションビデオの中で、ユーザーが家にいない間に親戚や家政婦、家を貸す旅行者に電子キーを送り、家の中に入れるようにする利用シーンを紹介しています。
恐らくこの機能は自分の家を旅行者にレンタルできるサービス「Airbnb」を意識したものででしょう。

Airbnbの課題の一つに、家の鍵の受け渡しの煩雑さがありました。家の鍵を自分の家のポストに入れ、部屋を貸す相手に鍵の在処を教えるというのは安全面から考えて少し気が引けます。Gojiなら部屋を貸す相手だけに電子キーをインターネット越しに送ることができるので、別の人に鍵が渡る心配はありません。そしてレンタルが終わればその電子キーを使えなくすればいいので、貸した鍵を元に合鍵を作られる心配もありません。

Gojiを「家というリソースをシェアしやすくするよう、鍵の受け渡しをサポートするサービス(をハードウェアにしたもの)」と考えると、Gojiが鍵の形状をとっているのも納得できますし、Gojiから単なる「インターネットにつながった鍵」というもの以上の潜在能力を感じることができると思います。

生き残る製品

実際にGojiを開発したチームが「サービスのモノ化」という視点で製品を開発したかどうかはわかりませんが、Gojiの機能は「鍵の受け渡しを簡単にするサービスを作る」という発想の延長線上にあると言えます。単に「鍵をインターネットにつなごう」という所から開発していたらその機能に辿り着くまでに時間がかかる、もしくは辿り着かない可能性もあります。

一見どれも同じような機能を持つ製品が並ぶスマートロック業界も、生き残るのはユーザーに受け入れられるサービスを思い描き、それを適切な形でハードウェア製品に落とし込めるチームだけでしょう。スマートロック以外の分野、空調やフィットネス、健康関連も同様です。今は目新しさ重視で多くの企業がWeb+ハードウェアの製品を発表していますが、良いサービスを適切な形で提供できるチームだけが生き残るでしょう。

Gojiのスマートロックが人々に受け入れられる大ヒット製品になるかも今はわかりませんが、全ては「ユーザーが受け入れられるサービスを提供しているか」「そのサービスを提供する最適な形で実装しているか」にかかっているのです。

「サービスのモノ化」で捉えることがおすすめ

IoT系のハードウェアビジネスを作る、分析する上で「ハードウェアをインターネットにつないで何かやろう」という発想では限界があります。「こういうサービスを提供したい!しかしどうやらハードウェアを作る必要がありそうだ、しょうがない作るか」というくらいで丁度いいと思います。

もちろん「俺が思い描くサービスを実現するのに実はハードウェアを作る必要は無かった!iPhoneアプリで十分だった!」という結論に至る場合もあるかもしれません。が、それは余計なハードウェアを作らずとも素晴らしいサービスを提供できるという点で重要な気づきです。ハードウェアはあくまで提供したいサービスをユーザーに使ってもらうためのチャンネルのうちの一つでしかありません。

IoT系の製品紹介を見た際には「彼らはどんなサービスを提供しようとしてハードウェア作ったんだ?」と考えながら見たほうがその製品の新たな活用法が思い描けて面白いです。IoT系の製品を作る際には「我々はどんなサービスを提供したくてハードウェアを作ろうとしているんだっけ?」と考えながら作ったほうがより適切な仕様の製品を設計でき、結果として商売の生き残り確率が上がります。

IoTという単語を見た時は「ネットにつないだハードウェア」ではなく「サービスのモノ化」と捉えることをおすすめします。

“summercamp"/

Yasunori Okajima

Yasunori Okajima

日本電気株式会社、NECビッグローブ株式会社にてWebサービスやハードウェアビジネス企画業務に携わった後、ハードウェア企業を設立。複数のハードウェア試作案件の経験を持ち、センサーデバイスやアプセサリに関する造詣も深い。Prototype.vnではハードウェア企画のコンサルティングや作業マネジメントを行う

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