Pepperプロジェクトの崩壊から学べること【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2016.11.2

mark-bivens_portrait本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。英語によるオリジナル原稿は、THE BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Paris- / Tokyo-based venture capitalist Mark Bivens. The original English article is available here on The Bridge English edition.


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先週、Bloomberg が Pepper の失敗したプログラムについて記事を掲載した。この感情を持つインテリジェントなロボットはもともと、フランスの Aldebaran Robotics によって開発され、その後、同社は2012年、日本のソフトバンクに約1億ドルで買収された。

Pepper プロジェクトの崩壊は長きにわたって噂されているが(Rude Baguette は、この話を約2年前に報じている)、日本でもそのことが広く知られるようになったのは、ごく最近のことだ。最近、私が東京へ出張したとき、(私のひどい日本語の発音にもかかわらず)私をインターフォンごしに暖かく迎え、エレベータへ案内し、会議室へ通し、私にコーヒーを出してくれたのは、魅力的でもてなしのうまい Pepper の受付ロボットだった。

憶測や非難については、この Rude Baguette の記事にあるコメントに多く書かれているが、今回の Bloomberg の記事のある部分に、私は特に関心を持った。

Aldebaran とソフトバンクの文化は、あまりうまく調和しなかった。Aldebaran のフランス人エンジニアがバケーションで数週間不在にすると、日本のエンジニアたちは憤慨した。フラットな組織構造に慣れている Aldebaran の従業員は、自分たちの決断の多くに対して、日本にいるマネージャーたちから突如としてとやかく言われることもあった。ソフトバンクは、ロボットビジネスの統括と Pepper の販売のために、ソフトバンクロボティクスを設立した。同社は、この開発プロジェクトの統括に、冨澤文秀氏をビジネスマネージャーに任命した。彼は英語もフランス語も話さない。そして、孫正義氏は、緊密な関係にあるベテランのネットワークエンジニア筒井多圭志氏を技術担当につけた。

ここで、この残念で避けようのない Pepper プロジェクトの崩壊から学べることがある。

買収は、組織の機能不全を魔法のように解決することはない。私は Aldebaran の初期の投資家の話からとして、ソフトバンクが救済する前、Aldebaran が社内での結束力の低下という問題に直面していたのを知っている。聞くところでは、Aldebaran のマネージメントに、我慢ならなかった投資家もいるようだ。フランス企業で人事の問題を解決することは既に地元の株主には難しく、その問題解決は海外の買収企業へと託されることとなる。

このような大陸を横断しての買収においては、文化を超えた訓練が重要になる。ソフトバンクと Aldebaran の社風は、全く対照的なものだった。ヒエラルキーな組織 対 フラットな組織、整理された組織 対 無秩序な組織、オフィスに出勤することが重視される労働環境 対 最低でも5週間のバケーションをとり RTT(Reduction du temps de travail:労働時間短縮法)の取得が賞賛される労働環境だ。

言葉ができたり、海外での勤務経験があったりするなど、社風の隔たりを埋められる可能性のある従業員たちには、このような提携関係においては重要な役割を持たせるべきだ。組織において上級職とかエキスパートと見られていない人たちであっても、人間関係を調整できる人は、合併初期の重要な時期には大変価値のある存在だ。

最後に、ソフトバンクによる Aldebaran の買収という実験は、LaFrenchTech が重視しているであろう努力の必要性に、光を当てることとなった。政治や外交に通じたリソースにアクセスできることから、LaFrenchTech のような政府の活動は、フランスのスタートアップが日本という見知らぬ土地で道を探す上で道先案内ができたということだ。

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