誠実な経営者を選べーー楽天創業期を支えた安武氏が振り返るスタートアップ参加の方法【社員番号1桁インタビュー】

by ゲストライター ゲストライター on 2017.3.15

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元楽天取締役/カーディナル合同会社の代表社員の安武弘晃氏(2016年5月撮影)

本稿は社員数10人未満のスタートアップに飛び込んだ人、すなわち「社員番号1桁」な方に、時を経て当時のことを振り返ってもらう連続インタビュー企画。起業家の柴田陽氏と川村亮介氏が「社員がほとんどいない最初期のスタートアップのリアルな情報や認知が少ない」という問題意識に端を発した連載である。

今や社員数1万人を超える日本を代表するインターネット企業、楽天。

その楽天が会社になる前からアルバイトのエンジニアとして関わり、後に開発部のトップとして同社の成長とともに歩んだ元楽天取締役の安武弘晃氏に、社員番号1桁(正確には社員番号11番とのことだが)としてスタートアップに参画するということについて話をお聞きする。(編集部注:インタビュアーは柴田陽氏と川村亮介氏のお二人、回答は全て安武氏)

楽天が成功するかしないか、確率は特に考えていなかった

大学院修士の2年生だった安武氏が、本城慎之介氏(楽天創業者の一人)を介して三木谷浩史氏に出会ったのは1996年。まだ楽天は法人化されておらず、ショッピングモールをすることも決まっていなかったタイミングである。最初は、当時楽天の前身である会社が運営していたインターネット教室のアルバイト講師として、軽い気持ちで手伝ったことが同氏の人生を大きく変えることになった。

三木谷氏と本城氏は、インターネット教室の事業がスケールしないとみるやいなや、当時黎明期であったオンラインショッピングモールのシステムを開発することを決断する。安武氏はプロトタイプの制作などを担当するものの、所属研究室の推薦で内定していた日本電信電話(NTT)に新卒として入社。

当初から自分で商売をやりたいという思いを持ち、NTT には「3年位の経験を経て辞めて独立したい」と考えていた安武氏は、実際には1年足らずで楽天に参画することを決断することになる。

では仮に最初の部署が面白くないものであったにせよ、配属先が変わるまで2、3年がんばってみようとならなかったのはなぜなのか。安武氏は間近に見たスター級の先輩たちからこのように感じ取ったという。

「10年経って(自分は)仕事を心から楽しめているのだろうか?」

プロダクトが作りたかった安武氏は NTT を辞めて楽天に入社した当時の気持ちについて、「つぶれるかもしれないし、つぶれてもいいやと思っていた」と振り返る。

「本当にお恥ずかしい話(成功の見込みについては)考えてませんでした。ただ、そもそも社会人経験が浅く、自分の過去の経験と比較することができない多くの若い人たちにとっては、成功するということのイメージ自体が沸かないんじゃないでしょうか」。

確かに一番最初にその選択肢を取る時、勝ち目を考えて行動することというのは難しいはずだ。

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創業期の楽天の様子/安武氏提供

構造的に分不相応なタスクが降ってくる環境がスタートアップの魅力

社員数が10人に満たないような初期のスタートアップでは、自分の能力を超える「分不相応なタスクが構造的に降ってくる」環境が魅力であると安武氏は力説する。

「大企業というのは各人の年次に合わせて能力に見合ったタスクがお膳立てされてるんですね。これは大企業を経営する立場からは、リスクや効率の観点からやむを得ないことかもしれませんが、働く側としてみれば制約が大きくやはりつまらない。分不相応な仕事をやらせてもらえる機会が大企業にあるかというと、本当に少ないと思います」。

一方、初期のスタートアップは常にやることは膨大にあり、できる人は常に不足している構造になってしまう。

「(スタートアップは)出来る能力がなくても重要なことから順に(タスクが)降ってくるじゃないですか。だからこそ構造的に、自分にとって分不相応な仕事を自動的にやらなくてはならない環境になってるんです」。

成長産業であれば仕事ができる人に対して仕事量が過剰になる傾向があり、たくさんのチャンスが生まれる。しかし需要と供給が一致している、もしくは衰退する産業においては先輩が仕事をやってしまい、若手にチャンスが巡ってくる確率は低くなる。

「NTT でとても上の先輩方と飲むとものすごいかっこいい、熱いんですよ。社会的使命があって、日本中に電話を引いて、過疎の地域にも電信柱を立ててって(中略)当時は電話もよく切れてて、その電話を切れなくするという技術的チャレンジもあったり。語ると熱いんですよね」。

当時はインターネット黎明期。主戦場は電話から徐々に次のステージに向かっているものの、その大方針は現場レベルには降りてこない。マーケットが進化しても経営がその場に停まればチャンスは減ってしまう。

「その点スタートアップって成長するしか道がないじゃないですか。成長するか、それとも死ぬか。そこが(チャンスを生むという意味で)いいところなんですよね」。

初期のスタートアップに向いている人とは?

安武氏は初期のスタートアップに向いている人として「正規の道が用意されてなくとも、とりあえず突き進んで掴んでくる無鉄砲な人」を挙げる。例えば楽天には学生で通常の問い合わせフォームから熱い文章を送ったところ、偶然にも三木谷氏との面接にこぎつけて採用された人材もいたそうだ。

転職組では初期の楽天にシャープから転職してきた「シャープ三羽ガラス」を引き合いに出した。20年を経た今、当時の優良企業であったシャープから楽天に転職してきた彼らには先見の明があったと言うべきだろう。

「長期的に見てこの会社この先どうなるかなというのを、漠然とした不安とかに流されず、動物的な本能かもしれませんが、しっかり考えている人が初期のメンバーにはいましたね」。

その一方、初期のスタートアップに向いていない人は「今の会社、今の同僚に文句を言ってる人」と指摘。新しいところに飛び込むため、他責にしがちな人はやはりスタートアップには向いていない。

一番大事なのは「経営者が誠実かどうか」

ではどのようなスタートアップを選べばよいのだろうか?

市場が伸びている、サービスが面白い、待遇がいい。ーー様々な切り口がある中で一番大事なのは「経営者が誠実かどうか」と語る安武氏。創業期の三木谷氏とのエピソードを明かしてくれた。

「三木谷さんがすごいと思うのは、楽天が未公開企業の時にいきなり私に株を買えというんですよね。で、(私は)お金がありませんと。じゃあ俺が貸すから、無利子で、って言うんです。金は後で返せばいいからそれで(株を)買えと。当時はそれが何を意味するか全く分かってませんでした。社員は通常、詳しい資本政策やインセンティブ設計について経営者より理解していないことが多いです。その知識差を逆手に取って利用するのではなく、その先に何があるのかというのを考えて同じ釜の飯を食うやつは裏切らない、という誠実さがある人と付き合わないとやはりしんどいですよね」。

入るべきでないスタートアップは「社員の文句」に注目すればいい。米国の GlassDoor(従業員による企業の口コミサービス)を引き合いに「これから新しいことをやるのに現場が未来を信じられない会社、ネガティブな会社は経営者が改善努力をしていない証拠なんです。だから入るべきじゃない」と指摘する。(後半に続く)

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