創業者が「モノを作ったことのある人」かどうか見抜けーーグリーを支え続ける藤本氏が語る、スタートアップに参加する方法と意義【社員番号一桁インタビュー】

本稿は社員数10人未満のスタートアップに飛び込んだ人、すなわち「社員番号1桁」な方に、時を経て当時のことを振り返ってもらう連続インタビュー企画。起業家の柴田陽氏と川村亮介氏が「社員がほとんどいない最初期のスタートアップのリアルな情報や認知が少ない」という問題意識に端を発した連載である。

日本を代表するインターネット企業のひとつがグリーだ。

GREEは創業者である田中良和氏の個人プロジェクトとして2004年2月にスタートし、10カ月後の2004年12月にグリー株式会社として法人化。今回、インタビューさせていただいた藤本真樹氏は、その登記されたばかりの2004年12月頃からパートタイムで開発をサポートし、2005年6月に取締役に就任。現在も約1500人を擁するグリーの開発をCTOとして率いている。

グリーだけは真剣さが全然違った

「なぜグリーに入ったのかはよく聞かれるんですが、とにかく真剣さが全然違ってて、そのままひたすら巻き込まれちゃったんですよねー」。

藤本氏は飄々とした雰囲気で「スタートアップの真剣さ」について語り始める。グリーに関わりはじめた当時、藤本氏は開発会社に所属しながら、個人として複数のプロジェクトを手伝っていた。まだグリーは当時楽天の社員だった田中氏の個人プロジェクトに過ぎなかったが、他のプロジェクトとは真剣さが全く異なっていたという。

「手伝い初めたころ、そもそも自分の役割も明確に定義されてない頃から、サービスが落ちたら(田中氏に)普通に怒られてました」と振り返る藤本氏は当時、無茶だなと感じつつも、同時にこの人達は真剣なんだと感じたそうだ。

「逆に真剣じゃない人や真剣じゃないスタートアップに、自分の人生を賭けたり、背中を預けたりなんてできませんよね?」。

グリーの強い思いやチームの真剣さ、またそれを実現するにあたって自らが必要とされていることを強く感じ、中途半端な遠慮は無用と考えた藤本氏は取締役としてグリーにフルコミットしていくことになった。

創業者が「自分でモノを作ったことのある人」かどうかを見抜け

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創業当時のグリー/写真提供:藤本氏

創業期の良いスタートアップの見分け方として藤本氏は「まず人として背中を預けられるかどうか」と語る。事業は極端な話、ピボットすればいいが、人間、特に創業メンバーはそういう訳にはいかない。

では創業者の真剣さをどのように図ればいいのか?藤本氏はエンジニアらしい視点で「自分でちゃんとモノ作ったことがある人かどうか」だと言う。

「こういうプロダクトを作って、こういうスタートアップをやりたいんだよね、と言うのであれば、まず自分で作ってみようよと。自分では手を動かさずに『いいエンジニアを探しているんだよね』と言う人とは少なくともぼくは一緒に働きたいとは思わない。オモチャっぽくてもいいから、まず自分で作ってみようという姿勢の人かどうかが、すごく大事な指標。特に創業期のスタートアップはできることは何でもやらないといけない。それは創業者にも当然に求められるし、モノを作る苦労や感覚みたいなものをちょっとでも分かっているかどうかは、モノを作っていく仕事においては重要ですよね」。

エンジニアがいなかったとしても、努力して自分ででもやるかどうかは、その人が本当に真剣かどうかのいいバロメーターになるとアドバイスする。

相手を性善説でみれるか

彼が次に重要だと指摘したのは、安武氏と同様に「誠実さ」だった。

創業期は資金も限られているため、入社にあたって給与が下がってしまうケースも少なくない。その時に自分はうまいことこき使われているのではないか?搾取されてるのではないか?と疑心暗鬼になるようでは、上手くいくものも上手くいかなくなると指摘する。

「雇われるエンジニアの側も、資本政策について多少知識をつけてもいいのかもしれない。ただ、資本政策もきちんと深く理解しようとすればそれはそれで大変だし、そんなことしてる暇があったら、1行でも多くコード書こうよというのも真実なんです」。

結局は創業者ないし会社が誠実だと信じられるかどうかで、逆に言えば、創業期には性善説で考えられる人のみで構成されているため、無用なことに神経を使わずに済む良さもある、という見方も教えてくれた。

苦境の時にフルコミットを決意。でもリスクは微塵も感じなかった

藤本氏が取締役としてフルコミットすることを決意する頃、グリーは苦境に立たされていた。(そもそも当時の「GREE」はmixiと同種のSNSサービスだった)。

「Web 2.0」という当時のトレンドには当てはまっていたものの、ユーザ数が思うように伸びず、ライバルであった「mixi」とユーザ数の差が開いていたのだ。二の足を踏んでもおかしくない状況でも藤本氏はフルコミットに対して「リスクは微塵も感じもなかった」と笑いながら語る。

「勝算なんてものは特になかったけど、追いかける方が楽しいと感じる性格なんですよね。負けても当然という局面から勝つことができたらそっちの方が楽しい。それにこの会社がなくなっても食うに困るとは思っていなかったし。その頃にいたメンバーも全員、同じように考えていたかどうかはさておき、実質それだけの実力があったとは思ってます。会社や事業が上手くいって欲しいのは当然だけど、自分自身についてはどうしよう、ということは考えたこともなかったです」。

ちなみに「この会社がなくなっても食うに困らない」というのは、藤本氏が今でも自分に課しているテーマだそうだ。会社・サービスにとって、若手が自分より適任であれば後任に譲る。こういったことが会社にしがみ付いてしまってはできなくなるからだ。藤本氏はこんな風に話していた。

「だって自分の上に立つ人が、この会社をやめたら食うに困るというような人だったら、その下で働くの嫌ですよね」。

必要なことだったら、できることは全部やるのが社員番号一桁台

では初期のスタートアップに入るための条件とはなんだろうか?藤本氏はまず、解決したい問題や作りたいサービスへのコミットメントを挙げる。

「こういう問題を解決したい。こういうインパクトを社会に与えたい。ユーザーさんにこういうサービスを提供したい。というのがまずあって、そのために必要なことだったらできることは全部やる。大事なのは、俺ら何がしたいんだっけ?ということで、それに比べると、個人のキャパシティとか能力とかやりたいとかやりたくないというのは、創業期においては二の次になるんじゃないですかね。例えばエンジニアが2人しかいないとき、自分はサーバーサイドのエンジニアなのでクライアントはやりませんという人は、創業期に参加しても困っちゃいますよね」。

特定の技術に特化した研究開発型のベンチャーではその領域のスペシャリストを志向する技術者が必要とされる場合もあるが、そうでない場合は、より広くモノづくりができるようになりたいと志向する技術者が向いている。

ストレス耐性も重要だ。創業期のスタートアップは、グリーほどのスタートアップであっても、思うように伸びず苦しむ時期もある。公私もあってないようなもので、そこで働く社員にも強いストレスがかかることは避けられない。社員番号一桁で入社する人には、そのストレスを乗り越えられるようなビジョンやタフさが必要である。

スタートアップをやること自体が目的になってしまっている人や、物事を他責で考える人は創業期には向いてないね、という指摘もごもっともだと感じた。

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創業当時のグリー/写真提供:藤本氏

自分たちとして何を作るんだっけ?でいつも揉めてた

筆者(川村)は、アトランティス買収にともない一時期グリーに在籍していたことがあるが、当時のグリーは定量化された数値目標に向かって整然と取り組むカルチャーの会社という印象を持っていた。しかし、初期のグリー社内は意外にも「それなりにギスギスしていた」と藤本氏は振り返る。

「創業期のグリーはメンバー全員が、給与ではなくサービスに強く共感して集まっていた。そのため思うように伸びないサービスを前に、全員が真剣そのものだった。特にSNSの機能開発を検討する際に、競合と類似する機能については『同じものを作っても仕方がない』『でも必要な機能だ』など様々な意見が飛び交い、俺らは結局何をしたいんだっけ?何を作るんだっけ?ということでいつも揉めていましたよ」。

サービスが伸び悩んでいた上に、経営陣が若くマネジメント経験が少なかったため、組織としても若かったのだ。しかし、それは真剣さ故の裏返しでもあったようだ。

社員番号一桁での参加の魅力

この真剣な雰囲気が、社員番号一桁でないと味わえない濃密な時間だったと語る。

「10人とかであれば、社員全員が1つのことに真剣に没頭できる。本当にいいものを作ろうと考え抜いた濃い時間だった。これは1000人だとどうしても難しい。人数が増えてくると、小さいチームに分けてチーム単位で没頭する場面は出て来るが、会社全員が同じことに没頭するというのは5〜10人の頃じゃないとできない体験だった」。

創業期のスタートアップでは状況が目まぐるしく変わり、様々なことが起こるため、ゆっくりと過ごしている人の10年分くらいの経験を、最初の1年で経験できる。これは事業やサービスの成功の方程式が見えていない段階ならではの貴重な経験だ。

早回ししてきた経験の中で、創業期だからこその楽しさを聞いてみたところ、藤本氏は「楽しさか〜…」と目を細め「思い出すのはしんどかったことや苦労したことばかり。ただ不思議と、それがつまらないと感じたことは一度もない」と語っていた。

終わりに

今回のインタビューを通して、藤本氏が語っていたことは終始一貫して「真剣さ」だった。真剣だからこそ、そのスタートアップに人生を賭けられるし、背中を預けられる。時にギスギスすることもあれば、苦境も乗り越えられる。課題解決のためにできることは何でもやる。グリーが創業から幾度の苦境を乗り越えながらも、日本を代表するインターネット企業に登り詰めたその根底に変わらずあるものは、創業期からの強い思いと真剣さであることがよく分かる内容だった。

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