なぜメディアの向上がアジアのオンライン・クリエイティブ・エコノミーにとって重要なのか

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【原文】

この記事は元の記事を編集したもので、最初の記事はこちらに掲載されている。著者のDaylon Sohは、自営の芸術家や工芸家がオンラインビデオショッピングチャンネルを通して創造的な作品を販売するのを支援するCuriousCatchのデザイン創設者だ。

SGEの編集補佐Terenceは最近「アジアにおけるプラットフォーム化された創造性の高まり – クリエイターと消費者をいかに結びつけるか」という興味深い記事を執筆した。同氏は記事内で、創造的な商品やサービスが交換され得るオンラインのプラットフォームや売り込み市場で高まる有用性に触れた。

当社のオンラインストアCuriouCatch.comも含め、言及されたスタートアップの多くは比較的新しいチャンネルで、海外の同様サービスがしていることを新しく作り直したり、もしくは複製している。それら海外のサイトには、Fab、Etsy、Kiackstarterなどがあり、私たちが提供しているほとんどのサービスよりも、より確立されたものとなっており、十分な資金も持っている。

7月31日にCuriousCatch.comのローンチを発表して以来、私たちは今年、顧客からさまざまなフィードバックや提案を受けている。そして、私は、アメリカもしくは中国などの市場と比較して地元の市場がクリエイティブなグッズやサービスをどのように消費しているのかということを個人的に学ぶようになった。また、複数のブランドを扱うブティックやフリーマーケットなど、同業界で実店舗を持つ従来型のビジネスからも学ぶことはたくさんある。

Terenceが語ったことを紐解き、アジア、特にシンガポールで、プラットフォームクリエティビティの成功に必要な前提条件とは何かを模索したいと思う。

ニューヨークはアジアのクリエーティブ起業家にとってのお手本

ニューヨーカーはシンガポール人と比べて消費の仕方が異なる。

ある友人が、面白い話をしてくれた。映画を学ぶ学生として、ニューヨークの富裕層が住む地区でゴミあさりをし、いかに安く舞台セットを作ることができるかという面白い話をしてくれた。おそらく3〜6か月ほどしか使われていないのに、道ばたに捨ててあった比較的新しい家具を彼は見つけた。その地区の家庭には働くビジネスパーソンが多く、いつでも自由に使えるお金を持っている。

彼らは、Amazon.comなどの大手eコマース企業のオンラインショッピングで買い物をして、国内に即出荷してもらうという考え方に慣れている。Fab、Etsy、Kickstarterなどのデザインを中心としたテック系企業の多くはニューヨークに拠点をおいている。ニューヨークはここ数十年、Andy Warholなどのアーティスト、Bob Dylanのようなシンガー、そしてMadison Avenueの広告代理店にとっての安息の場となっている(このことは、TVドラマシリーズのMad Menでもよく描かれている)。

毎年数千人もの熱心な生徒が世界中から集まり、New York Academy of the Dramatic Arts (NYADA)からParsons New School of Designまで、国内最高水準のアートスクールに通っている。ブロードウェーで成功する者もいれば、かの有名なArt Directors Clubから栄誉を受ける人もいる。

同じく毎年250万人の熱狂的なファンがニューヨーク近代美術館(MoMA)を訪れ、名高いMoMA Storeでの購入を含めて地元と国際色豊かな産業デザイナーを支えている(例:日本の小売業者MUJI等)。今年前半、ニューヨーク市長Michael Bloomberg氏は新進気鋭の技術シーンの育成のためのキャンペーンを開始した。Mashableによると、ニューヨーク市はアメリカでシリコンバレーに次いで2番目にベンチャーキャピタルの資金を引き寄せているという。

ニューヨークは広く読まれているInternational Herald TribuneからファッションバイブルVOGUEまでを擁するメディアパワーハウスでもある。市のメディア集合体にはTime Warner、News CorporationとViacomが含まれる。おそらくニューヨークにはメディアが火付け役となり、代々のクリエイティブな先駆者達が牽引してきた素晴らしいアイデアの宝庫という表現がピッタリだろう。

メディア規制が誰の手によるものであっても…

つまり、ニューヨークは、アジアの都市がこれから数十年かけて到達しようとしている創造性と技術の融合のお手本なのだ。文化の違いと、メディアがビジネス標準言語である英語でアジア全域にアイデアを拡散することができるかということが大きな課題となる。

メディアの消費パターンが変化する中、インターネットのおかげで、多くのオンライン報道機関は白紙の状態から始めて、既存のメディアを混乱させることができるようになった。ジャーナリストとライターたちはインターネットにおいて世界的に有名なコンテンツを作りあげるチャンスがあるが、我々はアメリカの同業者よりもすでに遅れている。

私の個人的な考えだが、TechinAsiae27やSGEのようなテクノロジー関連情報を伝えるサイトの仕事は重要だ。なぜなら、彼らの成功は将来のシンガポールの技術系スタートアップが地域レベルで情報を広め、そして時間的優位を得ることができることを意味するからだ。私は多くの人々が多言語での情報普及に取り組んでおり、読者ベースの拡大を目指して地域市場において地元での提携を働きかけていることを聞いて元気づけられている。

同地域でのオンラインメディアは今では狂気の場となっており、ここで大きな分け前を得た者が次世代の消費者を動かしていく。どのベンチャーキャピタリストにとっても、この大望に満ち溢れ成長株とされているインターネットメディア企業を後援するチャンスを逃してしまうことほど馬鹿げた話はない。新たなWall Street JournalとMonocleを支えていくのは一体誰なのだろうか?

アジア人はブランド志向だがデザイン志向ではない。

芸術が文化をルーツとするならば社会は芸術家に好きなように表現させればよい
~John F. Kennedy。

シンガポールはその厳しい検閲とメディア関連の法律のため、クリエイティブな都市とみられることはほぼない。地元の芸術家たちは表現の自由と市民としての従順さの狭間で葛藤しなければならない。歴史的に見て、地元の才能ある人々はサービス業や金融業といった稼ぎのいい仕事についたり、他に活躍の場を求めたりしている。

しかし、国際的に高く評価されたHyper Islandの様な機関やCreativeMornings/Singapore(注:筆者はこのイベントの主催者である)の様なイベントによって、海外の才能ある人達とそこで生まれたものが結びつく事で、状況は変わりつつある。シンガポール政府も、クリエイティブな文化が根付き、盛んになる様インフラを整備し、財政的な支援も今まで以上に行っている。

しかし現段階では、韓国や日本等の東アジアの近隣諸国に比べると、デザインに関して知識のある人達が少ない市場と向き合っている。つまり、デザイン重視のスタートアップは、この市場にデザインの概念を浸透させ、デザインの価値が分かる可処分所得の多い中間層の人達が現れるのを待つ必要があるだろう。

消費者がなぜ数カ月分の給料をブランド品には惜しみなく支払い、フリーマーケットの手工芸品を値切りたがるのかは理解に苦しむ。地元の医師によると、整形手術には大枚をはたくのに、風邪や熱で医者に診てもらった時は診察料が高いと文句を言う人が多いと言う。

創造性のある経済へのソリューション

確かに、クリエイティブなプラットフォームの出現数と、クリエイティブな商品やサービスに対する消費を惜しまない市場の規模は比例しないという。それはただ単に創造性と技術を兼ね備えた市場に変えて行こういう地元企業家達のやる気と情熱に過ぎない。

地元で長く活動し、地域の消費者啓蒙に勤しむ企業家たちは大規模な(そしておそらく忠実に)支持者のネットワークを築こうとするだろう。スタートアップは現在流行りのインターネットメディアチャンネルにアクセスできるので、市場のサイクルを短縮し、好ましくない状況から才能ある人々がもっと良い仕事に就けるよう手助けできる。

今後の5年間で企業家たちが創造性と技術をどう掛けあわせていくのか楽しみだ。特に我々は海外の才能の流入が地元の文化に浸透し、ファッションから映画まで創造性を押しこめていた壁を打ち破るクリエイティブなプロジェクトの誕生を目にすることができるのだ。

メディアはもっと大きなスケールで海外も視野に入れておく必要がある。アメリカは戦後のソフトパワーを支配した最初の国である。過去20年間、東アジア諸国は韓国や日本の文化を皮切りに、世界的な音楽界と映画界に進出してきた。今日の中国の追随は目覚ましい勢いだ。才能ある人々が繰り出すコンテンツは世界に輸出され、未来のソフトパワーとしての足固めとなりつつある。消費者スタートアップも乗り遅れてはいられない。

それがメインストリームにおけるメディアの軸となる役割で、東南アジアのテクノロジースタートアップを押し上げて行かなければならない。EtsyやKickstarter等のインキュベーション期間の成長を見たまえ。我々が知るサクセスストーリーには、ニュースでは取り上げられない名もない多くの人々が支えがあるのだ。

メディアはまだEtsyやKickstarterの成長を推進している。地元の消費者の心を捉えんとするアジアの企業家にとって、パズルのピースはまだ見つかっていない。しかし、手さぐりの作業が先駆者の醍醐味というもの。市場をかき回し、足場を固めながらルールを決めるのだ。

【via SGE.io】 @SGEio

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