カルチャーこそが組織を支える−−Open Network Lab前田氏が語る「成長するスタートアップに必要な基盤」

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スタートアップにとって、立ち上げ時における圧倒的な突破力は重要な要素のひとつになる。創業メンバーと立ち上げたサービスとがマッチしていなかったり、サービスの先に見据えているビジョンをどこに置くか、チーム全体の基盤がしっかりしているかどうかで成長スピードが変わってくる。

Open Network Labのマネージングパートナーを務める前田紘典氏は、米国大学時代に音楽サイトで起業。その後ネットプライスドットコムに入社し、新規事業の立ち上げや海外投資に関わる。IT人材育成プログラム「Open Network Lab」設立後はシリコンバレーのネットワークをもとにスタートアップを支援し、春から第7期を募集している。

前田氏がMOVIDA SCHOOLで語った、成長するスタートアップに必要な基盤についてまとめた。

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スタートアップの多くはピボットしている

Open Network Labで急成長をしているスタートアップの多くは、最初のアイデアからピボットしている。例として、企業やスタートアップにウェブサービスを格安で提供するAnyperkやプログラマーの情報共有サービスのQiitaといったサービスは、最初のアイデアからピボットして今に至り、成長を見せている。世界を見ても、Microsoftのビル・ゲイツ氏やFacebookのマーク・ザッカーバーグ氏も成功したのは2つ目や3つ目のアイデアだ。

優秀なチームであれば、最初のアイデアからピボットしても成功する可能性は高い。Open Network Labでは審査としてアイデアは見るが、それ以上にチームをよく観察し、採用するかどうかを決めている。アイデアよりも、そのアイデアを形にするチームがしっかりしているかが大事だ。

チームに必要な3つの役割

創業メンバーのチーム構成として重要なのは、ハッカー、ハスラー、ヒップスターの3つの役割だ。ハッカーは優秀なプログラミング技術をもち、アイデアを形にする存在。ハスラーは多くの周りを巻き込み、事業を作り上げる存在。ヒップスターは、ユーザ目線を持って素晴らしいプロダクトを作り上げるデザイナーだ。

調和のとれたチームであれば、思い描いたビジョンをもとにどんなサービスでも作り上げることができる。それぞれの役割を意識したチームビルディングをしてもらいたい。

リクルーティングにおける10の基準

スタートアップの社長がすべき大きな仕事は、リクルーティングだ。営業重視なサービスなのか開発重視なサービスなのか。コマースであれば、カスタマーサポートを重視したリクルーティング等、サービスに応じてふさわしい人物を採用しなければいけない。

優秀な人物を採用し、チームを強化していくことが最優先として求められる。Facebookのシニアバイスプレジデントがあげた10の採用基準は、組織を成長させていく上で大きな参考になる。

・高いIQ
・強い目的思考
・成功に対する執着心
・積極的かつ野心的
・完璧主義、品質に対するこだわり
・変化を好むディスラプティブ
・より良くするためのアイデア
・高い整合性
・善良な人々に囲まれていること
・知覚な価値よりも真の価値を作ることへのこだわり

以上の項目を重視し、会社のバリューを上げる強固な組織づくりと、そのためのリクルーティングを実施すべきだ。

カルチャーへの整合性

創業チームは会社のカルチャーを作り上げる。組織にとってカルチャーは必要不可欠であると同時に、メンバーとの整合性は最も気をつけたい要素だ。カルチャーに合わない人物を採用したばかりに、組織が崩壊するのをこれまで何度も目撃してきた。

もちろん頭の良さやスキルの高さは大事な要素だが、それよりもカルチャーへの整合性こそ優先すべきものだ。カルチャーに整合していない人物が一人でも組織にいると、組織全体に取って悪影響を及ぼす。GitHubでは、一緒にビールを飲んでまた次も一緒に飲みたいかを考える「ビアテスト」をもとに採用する。他にも、シリコンバレーの会社の多くも一緒にいて楽しいか、カルチャーに馴染めるかを重要視するところは多い。整合性は、組織全体の環境構築の上で最も重視すべきだと認識しよう。

分析と戦略を考え、次の手を打つ

スタートアップの社長は、リクルーティング以外は分析と戦略を考えることが仕事だ。例えて言うならば3対1でチェスをするようなもの。3人の相手とはつまり市場、ユーザ、そして競合だ。それぞれの動きに応じて自身の次の1手、その先の2手3手を考えなければいけない。常に周りを見ながら分析をし、その場しのぎではない次の明確な1手を打つための戦略を練って欲しい。

ビジョンは頑固に、詳細は柔軟に

スタートアップの創業者は、頑固さと柔軟性の相反する2つの意識を持ちながらバランスを取って行動しなければいけない。メンターやVCから言われた意見を鵜呑みにし、そのまま実行するような柔軟性は自分の意志を明確に持っていない柔軟性であり意味がない。反対に、まわりをシャットアウトして自分の考えに固執してしまっても駄目だ。

良いバランスとは、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が語ったStubborn on vision & flexible on details(訳:創業者はビジョンで頑固になれ、詳細に柔軟になれ)だ。自身のビジョンをぶらさず、しかしそのビジョンに向かう道筋の詳細に関しては柔軟に考え、あらゆる手を打つ。そのためにも、ビジョンにとって最も重要なものは何かを常に意識してもらいたい。

フォーカスを高めろ

成功しているスタートアップのほとんどはフォーカスが高い。メディアやVCに気を取らわれずに、ユーザやプロダクトを第一に考えているチームが成功することがほとんどだ。

サービスを作る際により広い層をターゲットにしがちだが、それではどの機能が重要か分かりにくい。そうではなく、どのレイヤーのどの層を満足させるかを考え、そこに最もフォーカスすべきだ。Facebookは、大学生にとことんフォーカスしたサービスを作ることが最初の考えだったからこそ、写真やイベント機能といったターゲットに最も刺さる機能を重視して成功した。

広いターゲットは軸がブレやすい。何をフォーカスするかを明確にし、一つのターゲットへリーチできると次のターゲットへ水平展開しやすい。とことんターゲットを絞り、そのターゲットに最適なサービスを作り上げて欲しい。

創業者の過去の経験をもとに市場を導き出せ

創業者と市場との関係性こそ、サービスをつくる際に最も意識すべきポイントだ。創業者と市場の適合性がないサービスはスケールしにくい。

スタートアップのアイデアは、創業メンバーにとって最適な市場から生まれる。チームと市場の適合性を考える上で、4つを項目をもとに考えてもらいたい。

1)創業者の過去の経歴は?
創業者の今までの経験や経歴が活かせる市場やサービスを作ろう。今までと違った業種やジャンルに挑むのは難しい。
2)社長が忙しい理由は?
スキルとノウハウが活かせるサービスにピボットしてほしい。営業に強い社長がテクノロジー重視のサービスを作ってはスキルが活かせない。社長が一番活きる場を選ぶべきだ。
3)パッションは何か?
当たり前だが、何年もスタートアップをし続けるだけのパッションなくしてスタートアップはできない。
4)あなただけが持つシークレットは何か?
他の人が知らない、あなただけが知っている秘密は何かを考えて欲しい。自分自身だけが気づいている課題への解決策を考えることが、スタートアップのアイデアのきっかけとして最適だ。

これらのように創業者と市場をフィットさせ、スタートアップの成長を後押ししていきたい。自分自身の経験と市場を分析し、ふさわしいスタートアップのアイデアで頑張ってもらいたい。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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