スマホシフトと爆発する情報、それとニューステクノロジーの未来

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新聞や雑誌が情報の王様だった時代、情報の取捨選択は編集の仕事であり、人々はそれを受け取るだけでよかった。

しかしソーシャルメディアが市民権を獲得し、さらにスマートフォンの普及でネットとの接触時間が爆発的に増えるなか、私たちはこれまでにない量の情報に晒されるようになった。

散らばる玉石混交の情報からスパムを除き、「玉」を自分で見つけ出さなければ、情報戦に勝ち残ることは難しい。米Yahooが買収したSummlyの要約技術やZiteなどのパーソナライズド技術への注目は、まさにこういった状況を反映した結果といえるだろう。

さて私はここ数カ月、新たなニューステクノロジーに注目し、三つの国産サービスを試していた。ここにそれぞれのサービスの考え方や違い、そしてこの技術が持つ可能性について考察してみたので共有したいと思う。

「1日25本」という厳選情報のきっかけを与えるGunosy

Gunosyは毎朝8時頃に25本のオススメ記事をアプリに届けてくれる。しかしその情報はほぼ前の日に出ているものでリアルタイム性はない。どちらかというと玉石混交の情報からじっくり玉だけを抽出するイメージに近い。

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ここでひとつ想像して欲しい。そもそも知らない情報というのは、キーワードが思いつかない訳なので調べようがない。Gunosyはソーシャル上の行動という、全く違った情報を元にその人の興味あるニュースを「気づかせて」くれる。ここが実に興味深いアプローチなのだ。Gunosy代表取締役社長の福島良典氏にその点を尋ねてみた。

「スシロー(回転寿しチェーン)って実は機械学習をすごく活用している事例なんです。けど、機械学習だけをGoogleで検索してもWikipediaが出てきてしまう。Gunosyを使えば、この事例と出会うために必要な「すし」というキーワードを知ることができるんです。つまり、補完なんです」。

キーワードさえ気が付けば、あとはその人が深堀すればいい。つまりGunosyはエンジンで全てを完璧に賄おうとしていない。溢れる情報の中をどうやって上手く泳げるか、そのヒントを毎日教えてくれているのだ。

ニッチ情報の収集にこだわるリアルタイムのVingow

同じパーソナライズドニュースでありながら、Vingowのアプローチは全く違う。一番の違いはニュースの量だ。Gunosyが厳選した25本という「きっかけ」を与えるのに対し、Vingowは無制限にニュースをレコメンドし続ける。さらにリアルタイムに取得できる点も違う。普段RSSリーダーなどを使ってる人ならそれにレコメンド機能がついたような印象を持つかもしれない。

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タグをフォローしていけばそのジャンルのニュースをレコメンドしてくれる。初期はあまり興味ない情報も流れてくるのだが、自分にフィットする情報をVingow上で読んでいくと徐々にマッチングの精度を上げていってくれる。提供されるタグはVingow側でニュースを解析して作成しており、現時点で10万タグが生成されているのだそうだ。

実際、マッチングの方法についてはソーシャル上のデータで変化するというよりも、Vingow上でニュースチェックを繰り返した方が精度が上がるのだそうだ。JX通信社代表取締役の米重克洋氏はこう説明してくれていた。

「Vingowではソーシャルデータっていうのはあまり見てないんです。人に言えないような関心事というのはソーシャル上に公開したりしにくい。それよりも関心のあるニュース情報を中心にデータを集めてマッチングの精度を上げる方がニッチニュースに当たりやすい」

これだけ見ればリアルタイムのVingowの方がGunosyよりもいいのでは、と思う方もいるかもしれない。しかし実際は玉石混交の状態が「ざっくり」と流れてきて、その中にある玉らしき情報に「オススメ」の表示がされているので、結局大量の情報に当たらなければならなくなる。常にVingowを使わなければいけない点は、好みが分かれるかもしれない。

ソーシャル上のトレンドをリアルタイムに教えてくれるSmartNews

玉石混交から玉だけを並べてくれるGunosyと、玉を見つけやすくしてくれるVingow。

さらに全く違うアプローチなのがSmartNewsだ。そもそも上記二つがパーソナライズドであるのに対して、SmartNewsは全員が同じ情報を閲覧することになる。

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ここではソーシャル上に広がる膨大なデータから今、もっともトレンドに上がっているものを抽出してほぼリアルタイムに画面に表示してくれる。

印象としてはヤフーニュースとかGoogleニュースに近い。ただ、やはり私たちの記事でも実感しているが、ソーシャル上でバズった記事がここに出てくるので、「ああ、今みんなこれに興味があるんだ」と思うことは多い。

RSSを単にまとめただけのアプリは数多あるが、このトレンドを加えて情報抽出するという点が魅力的に感じている。

スマートフォンで変わるトラフィック

何度かお伝えしているように、トラフィックがスマートフォンに移ったという話題をここ最近よく聞く。私たちSDも月間で22万人ほどのユーザー(UUベース)に読んで頂いているのだが、その半数はスマートフォン、特にiPhoneからの閲覧になっている。単純に朝、ソーシャル上で話題のニュースを見かけて飛んでくる、というパターンではないだろうか。

多くの流入元はfacebookやGoogleだが、GunosyやSmartNewsからの流入も数パーセントながら目立つようになってきており、ニッチメディアの流入元として、今後トラフィックをコントロールしていく存在になるのではないかと想像される。

ニュースとビジネスとEC

三社それぞれビジネスについてはまだはっきりとしたものが決まっているわけではない。ただ、彼らを眺めていて思うのは大量のリーチが必要な広告というよりは、ECへの可能性だ。

特にパーソナライズドされている状態であれば、ニュースと共に欲しいと考える商品をレコメンドすることができるかもしれない。つまり欲しいものが決まっている「指名買い」ではなく「衝動買い」への導線だ。

以前、Origamiのレビューを書いたとき、私はこのスティッキネスがどこにあるのか探そうとした。毎日見るニュースの間であれば、偶然と出会う確立は高まる。ただ、こういった定性的なデータを分析するのはなかなか難しいらしく、ECへの可能性についてはパーソナライズドを進める両社ともそこまで積極的ではなかった。

三社ともスタートアップしたばかりで数字的にも小さく、また一部では著作権に関する話題も聞こえてくる。しかし久々に普段触れる世界観で、ネットっぽいテクノロジー勝負が繰り広げられていることにわくわくしているのも事実だ。

今後も一人のユーザーとして、またメディア運営者として彼らの成長を観察したいと思う。

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