定期購入サービスの年となる2013年、韓国Eコマース界をにぎわす4つのサービスを比較

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スタートアップやEコマースにも流行がある。Eコマースでは、2009年はソーシャルコマース、2013年は定期購入サービスの年と言えるだろう。

世界的に定期購入サービスの先駆けとなったのは、ニューヨーク発の Birchbox で、2010年9月ハーバード大学ビジネススクール出身の2人によってスタートした。「毎月、厳選された化粧品が体験できる」というコンセプトで、10万ウォン(約9,000円)で4〜5つの化粧品サンプルを出荷したところ、飛ぶように売れ始め、このビジネスモデルはベビー用品や生活必需品などにも展開されていった。

birchbox
ニューヨーク発、定期購入サービスの元祖「Birchox」

定期購入は新しいビジネスモデルではない。メディアは誇張してクールに表現しているが、我々が毎朝購読している新聞や牛乳配達と変わらない。なぜ今になって、定期購入サービスがEコマースのパラダイムを変えるほど流行しているのか。牛乳や新聞は毎日消費する生活必需品だが、定期購入サービスで扱われる商品は、いわゆるショッピングに分類されるからだろう。

Eコマースの発達により、オンラインショッピングの選択の自由は広がっており、買い物で商品を選ぶのは困難にさえなった。この不便を解消すべくキュレーターが登場したが、2011年にはモザイクUI(訳注:Pinterest に代表されるブロック表示のスクロール型UI)を採用したキュレーションサービスが多く誕生した。当時は Pinterest が隆盛を極めており、Pinterest が自らのプラットフォームを使って商品を販売するという戦略を発表し、多くの類似スタートアップの誕生につながった。

しかし、そのときに生まれたモザイクUIサービスで、現在も生き残っているところは珍しい。無数のショッピングモールから商品をキュレーションするには多くの人的リソースを必要としただけでなく、そもそもキュレーションサイトが零細なモールと一つ一つ提携することは困難なため、精緻にキュレーションされた商品群を並べるサイトは皆無だった。

定期購入サービスは消費者の立場からキュレートされており、厳選された商品を購入できるのに加え、定期的に必要な生活必需品を購入する煩わしさから解放されるメリットがある。商品を提供する側にとっては、商品を宣伝できるチャンネルを1つ持つことになるので、多くの業態において採用され、そのビジネスモデルが市場の検証を受けている段階ということができるだろう。

昨年下半期〜今年上半期の約1年間に生まれた定期購入サービスは、私が知るだけでも20社を超えており、大企業の定期購入サービスを含めれば、40サービスを超えるだろう。一部では、定期購入サービスの市場規模は300億ウォン(約27億円)に達すると言われている。

このビジネスの可能性については、メディアが騒ぐほど素晴らしい成果を上げているわけではない。経営が軌道に載ったのは5本の指にも見たず、大企業が大規模資本で始めたサービスは含まれず、販売量も低い。ローンチ後数ヶ月で終了を余儀なくされるサービスも多く見受けられる。

アメリカでは成功したビジネスモデルなのに、なぜ韓国では不振なのだろう。2013年のビジネストレンド、定期購入サービスの真髄を知るのに先立ち、韓国の定期購入サービス4社を選んでみた。

Memebox

memebox_logoウェブサイト 関連記事

韓国で美容定期購入サービスを始めた先駆けだ(Glossybox が先に韓国でローンチしているが、韓国のスタートアップではない)。現在の美容定期購入サービスでは独走体制にあり、エンジェル投資家から3回にわたって6億ウォン(約5,400万円)を資金調達し、毎月の収益は損益分岐点を越えた。

1箱は16,500ウォン(約1,500円)、これは韓国で販売されている定期購入サービスの中で、最も安い価格帯だ。それを可能にしているのは、ボックスに入れられた商品を無料で調達しているからだ。Memebox は商品原価にマージンを乗せて販売する中間業者ではなく、大企業の一つのマーケティングチャネルとして利用されている。16のオンラインメディア、雑誌、テレビ番組との提携により、無料で商品を提供してくれる企業にコストパフォーマンスのよいマーケティング効果をもたらす。(美容市場で消費されるマーケティング費用と比べてほしい。女優のキム・テヒを起用するコストで、Memebox サンプルの数年分を企業は拠出することができるのだ。)

テレビ番組「Get It Beauty」と提携して消費者への認知を高め、現在は12万人の会員を確保している。韓国の美容コマースサイトでは、6月には Olive Young のトラフィックを上回り、Memebox ショップのランキングが1位となった。

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Dum & Dummerce

dum-and-dummerce_logoウェブサイト

この名前を聞いて、映画のDumb&Dumber(邦題「ジム・キャリーはMr.ダマー」)を連想したのなら、それは間違いだ。正しくは、少しものをおまけしてくれるという「dum」と「commerce」から来た名前だ。

最近流行している定期購入サービスとは少しコンセプトが異なり、30代の男女会社員を対象に、生活必需品を購入する手間を省くことにフォーカスしている。定期購入が持つ元々の概念に、一番近いと言えるだろう。

他のサービスではボックス1つで提供されるのに対し、Dum & Dummerce では、生活必需品20種類以上で商品が構成されている。商品は大カテゴリ5つ(食品、健康、ファッション、生活用品、生活サービス)に分類されており、商品毎に商品ペースに応じて、出荷してもらう量やペースを選べるのが特長だ。定期購入サービスでありがちな、商品の選別をキュレータが行うことによる、ショッピングの自立性が低下する問題(自由に欲しい商品を選べないこと)を解決している。

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Hello Nature

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ウェブサイト

食品の流通課程で多くの中間業者が介入する問題を解決し、大規模スーパーが販売するよりも遥かに安く、高品質の食材を提供することを目指している。「美味・安全・新鮮な食材を、一般家庭で簡単に入手できるようにする」というのが、彼らの非常に明快なビジョンだ。

既存の農産物生産者が自らオンラインモールを開いた例は存在するが、インターネットで韓国全土の生産者をつなぐというケースは、Hello Nature が初めてだ。農家がこれまでできなかった、自分達の生産した農産物をブランド化することも実現している。他のEコマースと比較すると、Hello Nature の運営は、供給者を見つけ、商品の品質を評価し、商品ラインナップを管理するというキュレーションのプロセスが非常に難しい。直接農家を訪問して、農家にオンラインサービスを理解してもらい、品質を客観的に評価するため、消費者参加による評価グループを組織している。

昨年10月、スタートアップ・インキュベータ Fast Track Asia のメンバースタートアップとなった。

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hey! Bread

heybread_logoウェブサイト

hey! Bread は、ソウルで一番おいしい近所のパン屋を選び、購入配達してくれるオンラインのパン配送サービスだ。大規模なフランチャイズのパン屋チェーンの陰に隠れがちな、腕のよいパン職人(ブーランジェ)にスポットライトを充てるという点で、ブランド・マーケティングの共同体と見る向きもある。

他のどのサービスよりも、良い商品をキュレーションすることが重要であり、現在、ソウルのパン屋8店舗と提携し、徐々に商品ラインアップを増やしつつある。hey! Bread は品質評価のために、新しいパンが発売されるたび、提携先のパン屋のブーランジェにブラインドテストを依頼している。

hey! Bread はこれまでのB2Bを主としてきたが、定期購入サービスを今年4月にリリースし、愛好家が簡単にパンを購入出来るようになった。定期購入により、自分の好きなパンを希望の日時に受け取ることができ、厳選されたラインナップの中から自由に商品を選ぶことができる。

heybread_screenshot


4つのサービスを簡単に紹介したが、アメリカで先行している定期購入サービスとは事業モデルが大きく異なっていることがわかるだろう。韓国のEコマース市場で生き残るには、複雑なビジネス戦略と大きな努力が必要のようだ。7月10日、beSuccess はこれら4つのサービスの運営会社代表と対談を行った。対談をまとめた記事は来週公開される予定なので、楽しみにしていてほしい。

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

【原文】

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