IVP LP Summit(後編)〜中関村で成長を続けるテックメディア36Kr、中国版UberのYongche(易到)、インキュベーション・スペースtheNode(極地)を訪ねて

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夏の暑さも一段落した9月下旬、Infinity Venture Partners(以下、IVP と略す)の LP Summit に参加するため北京にいた。IVP は日本に加えて中国にも多くの投資先スタートアップを擁しており、LP Summit は、彼らのファンドの出資者に対して、中国での投資動向を伝える機会として定期的に設けられている。前編に引き続き、今回はその後編である。

36kr(36気)

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36Kr(36気)はかつて TechTemple をベースに活動していたが、スタッフが増えて TechTemple には収まりきらなくなり、北京の秋葉原の異名を持つ、Zhongguancun(中関村)」近くにインキュベーション・スペースを「Kr Space(気空間)」開設し、自らもその中に入居した。

Kr Space が面する通り(本稿トップの写真)には、北京の起業家の溜まり場としては老舗の Garage Cafe(車庫珈琲)があり、筆者もこれまでに何度となく訪れているエリアだ。数ヶ月前、この通りには中国政府の肝入りで名前が付けられ、その名も起業のハブを意味する Z-Innoway(中関村創業大街)と呼ばれるようになった。以前、ロンドンの TechCity についても触れたが、新しい名前を冠することでスタートアップ・ハブ形成のきっかけになるのは、よくあることである。

36Kr が中国内外のニュースを配信し続けていることは以前と変わらないが、今年の5月に気加という名の起業家向け資金調達サイトをオープンさせた。言わば、AngelList(関連記事)の中国版だ。気加を通して、年内には120のスタートアップが合計140億円相当を調達できるだろうと、36気 CEO CC Liu(劉成城)氏は語ってくれた。

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36Kr には、「THE BRIDGE Data」のような、スタートアップのデータベースが存在しており、ここには会社やチーム単位ではないが、プロジェクトの数によるカウントで毎月5,000件が登録されている。シリコンバレーを除けば、中国は世界で2番目にスタートアップが多い国なので当然の成り行きだが(関連記事)、日本のスタートアップ・シーンの10倍以上の勢いには圧倒される。Xiaomi(小米)の隆盛に象徴されるように、Google や Facebook の次を担う会社が中国から出てくるかもしれないという展望は、このような数値にも裏打ちされているのだ。

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Yongche(易到)

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IVP の LP Summit では、投資先のみならず、その時々の旬な中国企業の訪問を織り込んでくれるのも、筆者が参加を楽しみにしている理由の一つである。1年前は Baidu(百度)と Xiaomi(小米)、半年前は Tencent(騰訊)Haxlr8r、そして、今回は中国版 Uber の異名をとる Yongche (易到)だ。

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Yongche は73都市5カ国で展開しており、Yongche を利用するパートナー企業(≒タクシー会社)は1,200社。パートナー企業を通じて擁する車両は5,000台に上り、中国国内であれば、ほぼどの街でも利用することができる。

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中国では人口の多さに比べると、車の台数はまだまだ少ない。そこには大きな市場可能性があるが、レンタカー会社は中小が多く、単独では大体的にサービスを提供できないため、そこの Yongche のようなサービスがプラットフォームとして存在する意義が生まれる。

中国には Didi Dache(嘀嘀打車)のような類似サービスも存在するが、Didi はハイヤーのブッキングサービスであり(…という点では、Didi の方が Uber のモデルに近い)、Yongche はより一般消費者の日常的な需要を狙っているようだ。例えば、タクシーが重宝する天気の悪い日の場合、他のタクシーサービスでは予約を試みても4〜5割くらいの確率でしか配車されないが、Yongche では9割くらいの確率で車が呼べる。

とはいえ、同社では数の論理のみならず、運転手の質の維持にも注力しており、Yongche を経由して配車を受け取るには、運転手が事前に Yongche のテストを受けに来て合格する必要がある。アプリでは、自分のお気に入りの運転手を登録できるのに加え、ユーザの嗜好にあった運転手がリコメンドされる機能も存在する。また、アプリ上で運転手と直接チャットできるようになっているのも、Uber など既存サービスとの大きな違いだ。

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Yongche はサードパーティーとの連携も積極的で、例えば、ホテルアプリや空港アプリなどからもブッキングできる。先ごろ、Uber ではサンフランシスコ空港のアプリと連携できるようになったようだが、Yongche の方が先んじていることになる。「人が車を待つのではなく、車が人を待つ」ようにするというのが、Yongche のコンセプトだ。

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Uber などは、世界の各所で市場参入に際し、地元のタクシー会社や運転手の労働組合などとの調整に手間取っている。他方、中国では、需要が供給を圧倒的に上回っているという情勢がプラスに働き、この種のサービスの成長の勢いは留まるところを知らない。サービスの利便性という点からも、今後、欧米の類似サービスよりも使いやすいものになるかもしれない。

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theNode(極地)

IVP LP Summit のアジェンダが一通り終わり、東京に戻るフライトまで少し時間があったので、筆者はメディアパートナーの Technode(動点科技)の運営するインキュベーション・スペース theNode(極地)を訪れてみることにした。中国最大のテックイベント GMIC でコミュニティ・マネージャーを務める Vallabh Rao から、theNode を訪れてみるように強く勧められていたからだ(ちなみに、このとき Vallabh は GMIC Bangalore の開催のためインドに出張していて、北京では会えなかった)。

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北京の東の玄関口 Dongzhimen(東直門)駅、東京で言えばさながら上野駅みたいなところであるが、そこからバスに乗って30分位かかるので、お世辞にも交通の便が良いとはいえないが、もとは工場群だった跡地に751芸術区というゾーンが広がっていて、その中に theNode は存在する。751芸術区の中には、ミニシアターや夜遅くまで営業しているおしゃれなレストランやカフェが多数存在しているので、都会の喧騒を離れてサービスの開発に励みたいスタートアップにとっては、好立地なのかもしれない。

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theNode に入ると、Technode のライターで Blair Zuo(左鶴)女史が theNode の中を案内してくれた。実は、Technode の北京のオフィスもここに存在するのだ。

theNode の中には多くのスタートアップが拠点を置いていたが、残念ながら彼らと話をする時間はなかった。しかし、その中でも特に興味深いビジネスを営むスタートアップとして紹介されたのが「Taihuoniao(太火鳥)」だ。Taihuoniao は IoT のクラウドファンディングサイトで、theNode の中では今、一番乗りに乗っているスタートアップなのだそうだ。Zuo 女史の話では、どうやら、アイデアの投稿だけすれば、資金調達のみならず生産も Taihuoniao が代行してくれるメニューもあるらしい。いくつかの点で、中国における既存のクラウドファンディングサイト「Demohour(点名時間)」などとは差別化を図っていると思われるが、次回訪問の折に詳しい話を聞いてみることにしよう。

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IVP では日本のスタートアップ・シーンの風物詩となった Infinity Venture Summit 2014 Fall Kyoto を12月3日〜4日に開催するが、スタートアップが新サービスを発表できるセッション LaunchPad への登壇する起業家を募集している。締切は今日10月31日なので、興味のある人は急いでほしい。