ソウル・カンナムに、中国、韓国、シリコンバレーをつなぐインキュベータ「TriBeluga(毕隆嘉)」がローンチ

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TriBeluga(毕隆嘉)創設者の Lili Luo(羅力力)氏

ソウルに来ている。「TriBeluga(毕隆嘉)」という新しいインキュベータが韓国に誕生するとのことで、その公式ローンチイベントに招かれたのだ。一般的にインキュベータが生まれるときは、スタートアップ・コミュニティに造詣の深い人物が中心になることが多いので、スタートアップのメディアをやっている立場からは、国や地域を問わず、情報を集めることが比較的容易である。しかし、TriBeluga に関しては違った。ネットで調べてみても TriBeluga に 関する情報は皆目見つからなかったのだが、周辺人物への取材を繰り返し試みたところ、やがて、この新しいインキュベータの姿が見えてきた。

TriBeluga は、Tri(3つ)と Beluga(シロイルカ)という名前が暗示しているように、中国・韓国・シリコンバレーの3つのスタートアップ・コミュニティをつなぐことを意図している。TriBeluga の創設者は、中国で国内外の有名企業のカンファレンスを運営するマネージメント会社「LCT(成都齊眾企業策劃顧問)」の共同創業者 Lili Luo(羅力力)氏だ。ちなみに、 LCT という社名は、Lili Luo 氏を含む3名の創業者の頭文字をとったものだ(AKB48 の運営会社 AKS の名前の由来と同じ理屈である)。Lili Luo 氏自身はビジネスで成功しているが、彼女の母親もまた、中国・成都を中心に不動産で財をなした実業家であり、Lili Luo 氏がハイソサイエティのレイヤーに属する人物であることには間違いないだろう。

TriBeluga のアドバイザーには、THE BRIDGE のメディアパートナーである韓国のテックニュース・メディア beSUCCESS のCEOジョン・ヒョヌク(정현욱)氏や、カップル向けチャットアプリ Between の開発元 VCNC の CEO パク・ジェウク(박재욱)氏らが名を連ねている。

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TriBeluga アドバイザー陣。
右から2人目は、beSUCCESS のCEOでもあるジョン・ヒョヌク(정현욱)氏。

TriBeluga が目指すのは、韓国スタートアップの中国進出支援

もし、インターネットやモバイルのユーザ人口が多い場所を、テックにおけるグローバリゼーションの中心地と定義するのであれば、それはもはやアメリカやシリコンバレーではなく中国である。Lili Luo 氏は TriBeluga のローンチイベントで次のように述べた。

アメリカを除けば、世界で最もスタートアップが多い国は中国だ。そして、人口あたりのスタートアップが世界で最も多い国はどこか? それはイスラエルを抜いて韓国だ。この2つの国をつなぐことは意義深い。

ただ依然として、中国の実業家が、韓国スタートアップを中国市場へと連れてゆくモデルについては疑問も多い。中国市場は韓国スタートアップが世界展開を図る上でターゲットに置く市場の一つであるが、なぜ、行き先は、シリコンバレーでもなければ、日本市場でもないのだろうか。

同じイベントに参加していたジャーナリストに意見を求めたところ、彼はこう語ってくれた。

おそらく、現時点で彼らが期待している主たる目的は宣伝効果だろう。カンファレンスの運営会社を経営しているだけあって、彼らにとって、メディアに露出するのはお手のものだ。おそらく、TriBeluga の活動を通じて、彼らが本当に欲しているのは、アメリカとのコネクションだと思う。ビジネスをやる上で、アメリカとのコネクションは重要。非常に長い時間がかかる戦略だろうが…。

TriBeluga ローンチイベントの会場には、韓国のみならず、中国国内各所から50社以上のメディアが招待されていた。主要なネットメディアや CCTV(中国中央電視台)などからの記者も多く目立っていたので、中国国内でも一定の評価を持って広く報道されたようだ

ソウルのスタートアップ・ハブ近くに完成した、インキュベーション・オフィス

チャムウォンにある、TriBeluga のインキュベーション・オフィス(外観)。
チャムウォン(잠원/蚕院)にある、TriBeluga のインキュベーション・オフィス(外観)。

韓国スタートアップのオフィスの多くは、ソウル・カンナム(강남/江南)の目抜き通り「テヘラン路」周辺に位置するが、そこから車で10分ほど離れたチャムウォン(잠원/蚕院)というエリアに、TriBeluga がインキュベーション・オフィスを構えた。通常、インキュベータと言えば、不用意にコストをかけるよりは、スタートアップに対する投資や支援を優先するので、いろんな仕掛けを駆使し、割安で cozy な建物を利用することが多い。しかし、それとは対照的に、TriBeluga のインキュベーション・オフィスは自社ビル6F建て、有名デザイナーを起用して、中国や韓国ではあまり目にしないスタイリッシュな空間を作り上げている。

このインキュベーション・オフィスの運営を司る、TriBeluga のストラテジー・アドバイザー Andrew Lee(李祖立)氏がこのインキュベータとの将来戦略について答えてくれた。彼は、メリルリンチや Salesforce などでの勤務経験を持つ人物だ。

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屋上のテラスで、インタビューに応えてくれた
ストラテジー・アドバイザー Andrew Lee(李祖立)氏

韓国にも多くのインキュベータがあるが、彼らとの差別化要素は大きく2つ。一つは韓国スタートアップを中国に連れて行くこと。例えば、中国でインターネット・ビジネスを展開するには ICP ライセンスが必要になるが、資金や物理的な支援に留まらず、そのような支援もしていく。もう一つは、このすばらしい環境だ。

我々は民間会社だ。スタートアップから一定のエクイティを確保して、資金を提供するのは通常のインキュベータのビジネスと何ら変わらない。TriBeluga から巣立つスタートアップに投資会社を紹介したり、共同出資したりすることにもオープンだが、基本的には同じような戦略が持てる会社と協業することになるだろう。例えば、我々があるスタートアップに長期的な戦略を見出しているのに、短期的な結果を求める投資家に加わってもらうのは難しいだろう。

TriBeluga は、まず、韓国から環境/ヘルスケア/教育の3つの分野で、優秀なスタートアップを選出し、中国市場へ連れて行きたいとしている。ただ、具体的に最初のバッチがいつ始まるのか、期間はどれくらいなのか、について Lee 氏に聞いてみたが、現時点では具体的には決まっていないということだった。インキュベーションの中身が決まらないまま、〝箱〟のお披露目が先行してしまうあたりに、いかにも中国的な印象を持つが、スタートアップがほぼコストを払わずに、自由に仕事ができる場所が増えるのはいいことだ。この施設には、シャワールームのほか、カプセルホテルのような就寝スペースも用意されているので、条件が許すなら、日本のスタートアップもソウル訪問時などに利用してみるといいだろう。

Google のインキュベーション・オフィスである Google Campus が、本拠地であるロンドン(関連記事)、テルアビブに引き続き、今月、ソウルでも前出のテヘラン路沿いにオープンする。日本がスタートアップ・バブルと揶揄される2014年、お隣の韓国はインキュベータ・バブルなのかもしれない。

シックなデザインの1F受付。お祝いの花が多数飾られていた。
シックなデザインの1F受付。お祝いの花が多数飾られていた。
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インキュベーション・オフィスの内部。
このようなスペースが、6フロアにわたって準備されている。
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フロア入口に設けられた、就寝スペースと休憩スペース。
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千里の道も一歩から? 確かに…。
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