iQONがKDDIより10億円以上の資金調達、月間流通総額は10億円目前にーーその軌跡を振り返ってみた

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今日、KDDIが発表したスマートフォンサービスに関する次期戦略発表会で、子会社化ではなく増資の対象になったのが手のひらのファッションアプリ「iQON」を運営するVASILYだ。10月16日、同社はKDDI本体(KDDIが運営するファンドKDDI Open Innovation Fundではない)を割当先とする第三者割当増資を実施する。金額や株式比率、払込日などの詳細は非公開。関係者から得た情報によると、出資金は10億円以上の金額になる模様。

VASILY代表取締役の金山裕樹氏に電話で取材したところ、今回の調達についはまだその使途についても話せることが少ないということで、次に用意している大きな発表(しかもいくつか連続らしい)を待って欲しいということだった。

ということで、KDDIとの連携や彼らの構想する次の展開、さらにはDeNA傘下となって同じくスマートフォンでのファッションメディア、コマース展開を狙うMERYとの比較などについては次のインタビューの機会を待って頂きたいと思う。

本稿では、やはり今回KDDIのスマートフォン構想で傘下となったnanapiの記事と同じく、少しiQON、そして金山氏たちと出会った時からのここまでを振り返ってみたいと思う。

デビューの時から変わっていないiQONと金山氏

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公開当時のiQON

金山氏をご存知の方は恐らく分かって頂けると思うが、彼は人としてものすごくストイックに何かを追求することに長けた人物だと思う。初めて会ったとき、当時私はTechCrunch Japanの取材者であったのだが、開口一番に自分を取材できるのは限られた人だけだ、という意味のことを言われたのをはっきりと覚えている。(誤解のないように言うが、決して彼は高慢な人間ではない)

思えばこの頃から彼は、何かに向き合う時、異常なまでの真剣さを人にも自分にも求めていたように思う。こと取材に関しては私は毎回そう感じている。

さておき、強烈な初対面を経て見せてもらったのがiQONだ。当時はまだウェブサービスのみ、もちろんまだ公開されてはいない。当時、記事用に撮影したビデオがまだ残っていた。2010年4月22日公開、記事はこちらになる。

取材当時、VASILYは受託開発や「妄撮」などのヒットアプリを生み出すなど、開発力、プロデュース力にはすでに定評があり、資金についても3人ほどの会社だったので十分な運営能力があったと記憶している。この運営的な余裕からか、金山氏はあまり株式による資金調達には興味を示していなかった。そのまま受託などで会社運営しながらこのiQONを伸ばす、そのように話していた。

しかしその後、金山氏たちは方向転換をすることになる。それが伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(以下ITV)、河野純一郎氏との出会いだ。私も少し関係させて頂いたこの出会いで、iQONは一気に急成長のステージへと漕ぎ出す。2011年5月11日、VASILYはITVとGMO VenturePartnersを引受先とした第三者割当増資で1億4000万円の資金を調達する。

創業期からiQONを支えたひとり、伊藤忠テクノロジーベンチャーズの河野純一郎氏。

ただ、この時期はnanapiもそうであったように、資金調達はそこまで簡単ではなく、さらに3月に発生した東日本大震災の影響で世の中は停滞したムードに包まれていた。ファッションサービスなど目に入っていなかった、というのが正直なところだろう。事実、ここからiQONはやはり苦しい時期を過ごすことになる。

スマートフォンシフトで掴んだ転機

転機は突然やってきた。

私たちが以前やっていたStartup Datingというミートアップイベントでの出来事だ。金山氏がゆっくり私に近づきおもむろに「いったよ!100万人!」と近況を教えてくれたのだ。iOS版のアプリリリースがあったことは聞いていたが、ここまで急激に伸びるとは予想していなかったらしい。2012年3月、今から2年半前のことだ。

この辺りからiQONの成長に加速度がついていったのを覚えている。金山氏らもウェブ版ではなく完全にアプリへシフトを進め、スマートフォン時代のファッションカテゴリは自分たちが絶対獲る、そういう雰囲気に満ちていた。この辺りの苦労話はこのインタビューに納めさせてもらった。

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Rubyのまつもとゆきひろ氏はiQON運営のVASILY技術顧問に就任

そもそも彼らはファッションという名の下に集った技術者集団だ。金山氏と二人三脚の取締役CTO今村雅幸氏をはじめとする開発陣、開発力があったからこそ、AppleのApp Store BEST(2012年)やGoogle playの2014年上半期ベストアプリに選出される結果を生み出している。現在、VASILYのメンバーはインターンやアルバイトなど含めて総勢50名、約半数は技術陣という構成だと聞いている。

こうしたチームの成長と共にiQONは順調に伸び続け、2013年2月には新たに参加したグロービス・キャピタル・パートナーズと共に、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、GMO VenturePartnersを割当先とする第三者割当増資で3億円の調達に成功する。

流通額も月間2000万円を超え、スマートフォンのファッションカテゴリで影響力を発揮するようになったのはご存知の通り、気がつけばiQONは登録ユーザーで100万人という大きなコミュニティになっていた、というわけだ。

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さて、やはり冒頭にそうはいっても気になるのはiQON、そして金山氏たちの次のステップだろう。少し前に話を聞いたレベルだと、月次の流通総額は10億円の大台が見えているということだった。そしてそれに増して好調なのが広告事業で、短期的にはここをもう少し伸ばしていくという話もしていた。

ただ、やはり青天井なのはコマースの分野だ。特に高額商品の多いファッションの場合、どうしてもサイズの問題や手触りなど、実際のモノを見なければならないという制約が生まれてくる。実店舗に送客できたとして、それをトラッキングする方法が確立されていなければコンバージョンがはかれない。もちろん、彼らの売上にもならない。

それでもやはり彼らに期待するのはこの分野での勝負だ。そもそも私が初めてiQONを見せてもらったとき、金山氏らと話したのは雑誌の再開発だった。私たちは今でもやはりファッション雑誌を購入するし、欲しい鞄や靴を見つけては購入に動かされている。

雑誌を新しく再開発するのは誰なのか、現時点では全く分からないが、願わくばiQONがその答えとなって頂きたいと思う。

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