なぜ小学4年生を偽装した政治キャンペーンはダメなのか

hiroyukifujishiro編集部注:本稿は日本のジャーナリストであり、法政大学准教授の藤代裕之氏が運営するブログ「ガ島通信」からの転載記事。政治的な意図はさておき、情報を発信するメディアの信頼性、特に「嘘の情報」が私たちも含む個人/小団体発信メディアにどのような影響を与えるのか、という点について端的に考察されていたので、同氏に許可を頂き、こちらに掲載させてもらった。

衆議院議員選挙について、「どうして解散するんですか?」と小学4年生が問いかけるウェブサイトが、政治系のNPO団体代表の大学生による企画だったことが明らかになり、閉鎖に追い込まれました。

批判の一方で、「なぜ問題なのか」「結果的に話題が広がったから良い」「ウソをウソと見抜けない利用者が問題」といった声もあります。しかしながら、立場を偽り情報を発信することは、社会的に大きな問題なのです。

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なぜ、立場を偽った情報発信はダメなのでしょうか。それは、情報の信頼性が損なわれると情報受信のコストが膨大になるからです。人は、受け取る情報を「だいたい正しい」と思って行動しています。情報が間違えていたり、騙されたり、することも有りますが、あくまで例外でしょう。

もし、情報が不確かな社会が前提となれば、いちいち確認して行動していく必要があります。テレビで紹介するイベントはねつ造?新しい新幹線が開通するのがウソ?いや、その放送は、テレビ局を装った企業のウソ広告だった、ウソが広がり始めたらきりがありません。

マスメディアの偽装やねつ造が批判されているのは、普段接しているニュースが間違っていたら、どの情報が正しいか、分からなくなるからです。だから、マスメディアは厳しく批判されるのです。

ネット、特にソーシャルメディアでは、マスメディアも、そこに所属する記者も、個人の発信者もフラットに発信できます。 新聞は新聞社、テレビはテレビ局しか情報を発信することは出来ませんが、ネットは異なります。

「ネットは不確かな情報ばかりでしょう」と言うひとがいるかもしれませんが、ネットからのあらゆる情報を、一つ一つ疑って、確認していることはないでしょう。フェイスブックやツイッターで流れてくる情報は、友人や知人、自分がフォローした人によるものですから、それを間違ったものとして捉えるのは、人間関係にも影響を与えそうです。

今回の嘘によって、次に小学生が政治サイトを作っても、すぐには信用されないということも起こるでしょう。この大学生が所属していたNPOや大学も、「他にもやっているのではないか?」と思われてしまうかもしれません。「また誰かがやっているかも」どんどん疑いの目が広がっていきます。何重ものチェックが必要になってきます。

だからこそ、マスメディアであろうと、一般の人であろうと、大学生であろうと、偽装の情報発信は許されるものではないのです。

今回のケースが悪質だったのが、ネットユーザーの検証が進み、疑惑が広がった際に、一度否定したことです。指摘されてすぐに、事実を明らかにしていれば、多くの人たちが立場を偽った情報を受け取らなくてすんだかもしれません。

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ネット上には様々な意見がありましたが、とても残念だったのは、ネット企業の方から「今回の件は些細なものに思える」との反応があったことです。ネット企業が自らの足場であるネット空間において、偽りの情報発信が「些細なこと」なのだとしたら、それはとても無責任に思えます。

ソーシャルメディア以前は、新聞やテレビは一部の人しか、多くの人に情報を発信することは出来ませんでした。大学生でも、高校生でも、自分の考えを世に問うことが出来るのです。せっかく手に入れた情報発信手段であるソーシャルメディアを自ら信頼できない「場」にしている。情報という日々接する飲み水に毒を入れる行為に等しいのです。

この件について「天才やスーパーと言われた学生が…」「大人は若者を応援すべき」といった議論と結びつける人もいますが、それについては清水亮さん、常見陽平さんが、書かれている記事を紹介しておきます。

【原文/なぜ小学4年生を偽装した政治キャンペーンはダメなのか/ガ島通信】

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