Asia Leaders Summit 2015: 大企業が東南アジアのスタートアップと手を組むべき理由

SHARE:
asia-leaders-summit-2014-session1-featuredimage
左から:Khailee Ng (500 Startups)、Amit Anand (Jungle Ventures)、Mario Suntanu (Sinar Mas Digital Ventures), Ku Kay-Mok Partner (Gobi Partner)

これは先週、シンガポールで開催された、Asia Leaders Summit 2015 の取材の一部だ。

イベント冒頭の第1セッションでは、「Asia money: the oppotunities and trends」と題し、日本などの大企業/ストラテジックインベスターと東南アジアのスタートアップとのパートナーシップについて、理想の形や今後の方向性を模索する議論が行われた。なお、本稿は、Tech in Asia の Terence Lee の執筆を翻訳したものである。

このセッションに登壇したのは、

  • Khailee Ng, Managing Partner, 500 Startups
  • Amit Anand, Founding Partner, Jungle Ventures
  • Mario Suntanu, Partner, SMDV(Sinar Mas Digital Ventures)
  • Ku Kay-Mok Partner, Gobi Partner

モデレータは、Rebright Partners 創業パートナーの蛯原健氏が務めた。


asia-leaders-summit-2014-session1-ebihara
Rebright Partners 蛯原健氏

2014年は、少なくとも資金調達に関して言えば、アジアのスタートアップにとって、今までで最も出来事の多い年だったと言えるだろう。日本、なかでもソフトバンクは、日本国外に対して積極的に投資を始めた。アメリカは本腰を入れて、インドに資金を注ぎ始めた。Lazada、Tokopedia、SingPost、GrabTaxi など、多くの積極的な資金調達が見受けられる。(Rebright Partners の創業パートナー蛯原健氏によれば、Lazada のバリュエーションは12億ドルで、年間推定売上高は2.7億ドル).

2014年まで、これほどの資金調達は見なかった。驚異的な進展だ。

投資家やスタートアップ限定のカンファレンス Asia Leaders Summit のパネルで、蛯原氏はそのように語った。今年ももっとすごいことになるだろう。それというのも、数日前、インドネシアの財閥 Lippo Group が5億ドルをeコマース事業に投入すると語ったのだ。このバブルの兆候はまだ始まりにすぎないのだろうか?

前述したような投資は、アジアのスタートアップや投資家の現実を物語っている。アジア展開には、パートナーシップが極めて重要だということだ。比較的単一市場と言える中国や日本は別として、他のアジア諸国は、国によって、インフラが抱える問題、人々の消費行動がさまざまだ。同じ国の中でもそれはあり得る。もちろん、企業もそんなことはわかっている。蛯原氏は、これらの投資が国境を越えて行われていることを強調した。中国の Alibaba(阿里巴巴)がシンガポールの SingPost に出資、日本のソフトバンクはあらゆるところへ、そしてシンガポールの Temasek が東南アジアの Lazada を支援していたり、Sequoia Capital やソフトバンクがインドネシアの Tokopedia を支援していたりすることなどだ。[1]

アジアのテック業界では、パートナーシップの技術を習得できるか否かで、スタートアップの野心を成功させもすれば、失敗させもする。

大企業投資家は、スタートアップにとって最後の手段なのか?

asia-leaders-summit-2014-session1-diagram

パネリストらは、うまくいったパートナーシップ、うまくいかなかったパートナシップの事例をシェアしてほしいと、蛯原氏に促された。従来からある知見では、ストラテジックインベスター(事業会社系投資家)、別の言い方をするなら大企業は、スタートアップが資金調達をする最後の手段だった。概ね、この点についてはパネリストの全員が同意した。

Khailee Ng によれば、ストラテジックインベスターは、いざ投資を決めるというときに判断が遅いことがある。

創業者は、希望と大きな約束で取り乱してしまうかもしれない。でも、投資が中止されるかもしれないし、インベスター側の投資委員会が承認しないかもしれない。実際にそういうことはよくある。

よくないストラテジックインベスターがスタートアップを投資しにくい存在にしまうケースもあるのだという一方、彼は良かった事例として、タイの Ookbee と Ookbee に投資した日本のトランスコスモスのパートナーシップを挙げた。

パートナーシップを評価するにはいくつかの指標がある。投資実行のスピードがその一つだ。投資する側とされる側の目標を一致させる戦略調整もそうだろう。証明されていないビジネスモデルに関わる上では、投資家にとってもスタートアップにとっても、メンタリティーが重要である。

Mario Suntanu は、Eコマース大手の eBay がインドネシアに参入したものの、結局、その可能性を十分に発揮できずに失敗に終わった事例を回想してみせた。eBay はインドネシア最大の通信会社 Telekom Indonesia と合弁する形で、2013年にインドネシアに上陸した。

ローカルパートナーが、eBay の期待していた分野において強くなかったのだ。実行能力が不足していた。お金をかければチームを作ることはできるが、機敏さに欠け、証明されていないビジネスモデルの中で彼らを導かなければならない。役人のような会社が、別の役所と手を組んでもうまくいかない。創業者自らがビジネスを回しているスタートアップと、創業者自らがビジネスを回している大企業でなければならない。

ここで Khailie Ng が加わった。

だから、大企業にとって、スタートアップを買収することは理にかなっているんだ。

Kay-Mok Ku は、パートナーシップを評価する上で見るべき、もう一つのファクターについて指摘した。投資をする側とされる側は、お互い違ったもの、補完しあえるものを持ち寄るべき、という点だ。Garena と Tencent(騰訊)のパートナーシップがまさにそのような感じ。東南アジアでゲーム配信をする Garena は、ゲームをどうやって消費者に届ければいいかを知っていた。一方、Tencent を資金を持っており、ゲーム「League of Legends」のライセンスがあることで、Garena は東南アジアの独占的なゲームパブリッシャーになった。

あらゆる可能性を試してみるべき

asia-leaders-summit-2014-session1-broaderview

ディスカッションは、パートナーシップの方法論について進んだ。蛯原氏は、パートナーシップについては、多くの方法があると語った。少数株式保有、M&A、合弁などだ。どのようにして最善の方法を選べばよいだろうか。

Ku は、中国や日本企業は国内に規模の大きな単一市場を持つものの、東南アジアへと進出する上で単独で行うには、流通チャネルを確保する問題から難しいことがあると指摘した。彼はより多くの企業が、東南アジアの各市場で Tencent と Garena のパートナーシップのような事例を見つけることを提唱した。

Ng は、東南アジアのスタートアップは、そのような外国企業がどのような戦略を描いているか、見据えるべきだと述べた。彼らがこれまでのビジネス売上を増やそうとしているのか、それとも、そのビジネスが沈降する中で新たな収入源を見つけようとしているのか。それとも、単に市場リサーチがしたいだけなのか。

リスクのあまりない大企業が、新しい市場や業界について学びたいと考えるかどうか、ということだ。彼らは(自ら投資するのではなく、外部のファンドに資金を託す)ファンド・オブ・ファンド投資を通じてリスクを分散し、参入しようとする市場についてを学ぶことができる。より深くコミットして、リスクをかけて新しいビジネスを始めるかどうかは、その後からでも判断できるからだ。

判断の過程においては、ただ一つのパートナーシップにこだわる必要はない。Amit Anand は、あらゆることに挑戦してみるべきだと指摘する。

ただ一つの戦略を取るだけでは不十分だ。草の根レベルでどんなイノベーションが起こるかを見るためには、いくつかのファンドに投資してみるべき。ディストリビューションのパートナーシップを作るべき。そして、手に入れたいチームに対して視線を向けるべき。私なら、なんでもやってみるべきだとアドバイスするね。

シンガポール最大の通信会社 SingTel Innov8 も、そのようなアプローチで成果を上げていると、Ng が付け加えた。

彼は 500 Startups も、投資家に対してリスクを下げるために同じような方法で運営していることを指摘した。東南アジア向けの 500 Durians、韓国向けの 500 Kimchi、そして噂を呼ぶタイ向けの 500 TukTuks など、市場に合わせて異なるファンドを運用している。500 Startups の投資戦略にあった、多岐にわたる企業に対して投資している。

インデックスファンド(投資信託の一種)みたいなものだ。我々は資金を広く分散させ、リスクを分散したい投資家に貢献している。LP のニーズにあわせて、さまざまなファンドを立ち上げている。

どのような相手と仕事をするべきか?

新しい市場に参入する際に合弁事業が意味を持つ一方で、例外も存在する。Suntanu は、メッセージアプリの LINE が台湾やタイに参入する上で、子会社を設立したことについて語った。言うまでもなく、LINE はそのEコマースの主導権についてはパートナーに依存しているが、LINE というプロダクトのコントロールとオーナーシップは保持している。これは合弁事業では難しいことだ。

合弁は難しい。もし相手が他の国に居れば、なかなか会いにもいけないし、そこで何か起きているのかも本当のところはわからない。そんな形で、自分のブランドを危険にさらしたいかい? たとえいいパートナーを見つけても、50/50 の関係を避けるべきだ。どちらかが判断をし、責任をとらなければならないのだから。

企業によっては、パートナーシップが生死を占うこともある。斜陽産業においてはなおさらだ。上場企業でも、投資家がその将来に賭けている以上、彼らの利益の追求に応じて大きな困難を強いられることがある。これは、例えば、印刷メディア業界のように、デジタルへの転換が求められる業界では特に深刻だ。Suntanu が続けた。

デジタルに投資しているメディア企業は、オンライン広告から上がる売上では賄えないので、投資したお金を取り戻せない。金の損得勘定だけで考えると、新しいビジネスを作るのは難しいだろう。営業マンはいまだにテレビ広告を売ろうとする。オンライン広告を売りたいやつなんて居るのだろうか。

最近のテックシーンの動きを見る限り、VC とスタートアップのダイナミックな関係は面白いものになっている。洗練されたスタートアップを作り、彼らがバリュエーションを上げていく傍らで、VC の資金供給の増加の方がスピードが速い。ベンチャーキャピタリストは今、競合との差別化のために、より努力することが求められるようになっている。

Anand にとって、よいポートフォリオとは、スタートアップを魅了するような売上戦略なのだという。

最初のいくつかのよいディールに向けて、自分をハックすることだ。そうすれば、残りは後からついてくる。

Ng はまた異なるアプローチを述べた。いろんなベンチャーキャピタリストは連絡がよこしてくるので、本当に関係を持ちたい相手とのみ仲良くすべきだと述べた。

(起業家は)コアの投資家のためにバリュー・ポジションを作るべきだ。IMJ-IP の斉藤晃一氏(編注:先日、KK Fund を設立)が好例だ。彼は非常によく仕事をする人物だ。なんでも成し遂げる男。だから、彼とはもっと一緒に仕事をしたいと思っている。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】


  1. 原文では「Temasek が Tokopedia を支援している」となっているが、蛯原氏から誤りである旨を指摘をいただいたので訂正した。
----------[AD]----------