深圳で最も注目されている企業のビジネスエコモデルとはーー世界屈指のハードウェア製造都市におけるモノづくりの今

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今、深圳のモノづくりはどうなっているのか?

中国、深圳(シンセン)といえば、世界屈指のハードウェア製造都市であり、世界で最もハードウェアのスタートアップが生まれる場所であり、Makerが集う場所だ。

今回、筆者はチームラボの高須氏が企画したニコ技深圳ツアーに参加させてもらい、深圳を代表するメイカー支援企業であるSeeed StudioのCEOのエリック・パン氏のプレゼンテーションと、本社件工場となるMFGセンターを訪問する機会を得た。

エリック・パン氏は今深圳で最も注目されている若手起業家で、2008年に「Seeed Studio」を創業、またハードウェアのアクセラレーター「HAXLR8R」を共同創業者でもある。また中国のForbesに、30歳以下の若手起業家として選ばれた人物でもある。

全てのメイカーのためにあらゆるリソースを提供する

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本社にもポスターとして貼られていたSeeed Studioのビジネスモデル「メイカービジネスピラミッド」の図。

アイデアだけの何も生み出せない、ゼロの「Dreamer(ドリーマー)」にも、0.1個のプロトタイプが作れる「Maker(メイカー)」を名乗る人にも、1つの完成品が作れる「Veteran Maker(ベテランメイカー)」にも、1000個の完成品が作れる「Hardware Startup(ハードウェアスタートアップ)」にも、1万個以上の完成品が作れる「HardWare Corporation(ハードウェア企業)」に対しても、Seeed Studioはあらゆるリソースを提供できる。

つまり、アマチュアのメイカーにはパーツやキットを販売し、ベテランメイカーには製品化の手助けを行い、スタートアップには大量の基板を製造して納品することで、ハードウェアを生み出す全てのメイカーに対して、ビジネスのサポートができるという。

深圳は模倣を超え、オリジナルのプロダクトが作れるようになった

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また、深圳ならではの山寨(しゃんざい)のカルチャーやエコシステムを肯定的に考えているのが面白かった。山寨とは、中国で横行するコピー製品(主に携帯電話)のことだが、エリック・パン氏の解釈では、コピー製品をベースにしてオリジナリティを加味しているものが山寨であって、コピー品(copycat、パクリ品)とは区別している。この山寨から、オリジナルを超える安価で高機能でニッチな製品がどんどん生まれている、それが深圳の強みであると語る。

またサービスやコンテンツのように、ハードウェアをとにかく素早く作ってみて次々と世の中に出していく、という考え方は深圳ならではだ。

まずはアプリやWebサービスを作るような感覚でハードも作ってみる。KickStarterやSNSを通じて世の中に発表してみる。そこにニーズがあれば生産体制を整え、世界に販売していく。ニーズを市場に委ね、売るものは自分たちで決めるのではなく、市場が決めるという考え方を持っている。

Seeed Studioでは、単なる受託製造として基板やパーツを作って納品するだけでなく、アイデアが面白ければそのメイカーをサポートし、生産はもちろん、販売支援やマーケティングなども支援してくれる。高須氏いわく、Seeed Studioは、アクセラレーターのように投資するだけではなく、メイカーの成功を支援したいという想いが強いのだそうだ。

エリック・パンが共同設立した「HAXLR8R」のプログラムを卒業して、クラウドファンディングに挑戦した25社全てが資金調達に成功し、平均で約25万ドル(3000万円)の支援を受けている。これは驚異的な成功率だ。

経験10年の若い熟練工が、少量ロットに即座に対応する生産体制

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さらに本社件工場となるMFGセンターを訪問させてもらった。最先端の工場というよりは、郊外にある古い工場という印象だったが、ここには約200名以上の従業員が働き、60名程度が工場の作業員だそうだ。

Seeedでは基本的に在庫を持たず、オープンパーツライブラリという各パーツごとの在庫を持ち、それらを組み合わせることで、多様な基板を即座に作れるような体制をとっている。

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回路図、必要な部品リスト、形状のCADデータなどを公開して、だれでも同じものが作れるようにしたハードウェアをオープンソースハードウェアと呼んでいるが、Seeed Studioはそのようなオープンソースハードウェアをキット化し、ストックし、必要に応じて組み合わせて生産したり、また販売したりしている。

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工場での製造は人力を主体とし、トヨタのカンバン方式に習い、少量多品種生産に対応。経験年数10年以上の20代の熟練工が設計から製造、テストまで行ってくれる。ちなみに高須氏によれば10年以上の経験をもつ20代の熟練工がいる工場は深圳にしかいないとのこと。

Seed Studioの3つのビジネスモデル

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Seed Studioのビジネスモデルは大きく3つあり、1つはFusionPCBという少量からオリジナルの基板を作成してくれるサービス。基板のデータを送ればPCB基板になって返ってきて、通常でも4日間程度で基板が手に入る。今回のツアー参加者が4日前にSeeed Studioに発注した基板を受け取っていた。上の写真はその基板だ。20枚で2,000円(1枚100円)、日本だと10万くらいかかるだろうとのこと。

ビジネスモデルの2つ目は、自社で製造するハードウェアの販売。低コストで高品質のオープンソースハードウェアを世界中に出荷している。3つ目はメイカーの支援とプロデュース。メイカーが始めたプロジェクトを製造から販売まで支援する。

これからの深圳のモノづくりによせる課題と期待

一方、Seeedの他の人間と話していると、このビジネスモデル戦略を見直すタイミングに来ていることも伺えた。

これまでメイカーの支援やPCBサービスを提供してきたが、結果としてSeeedの基板を製品化段階で利用されるケースが多くないそうで、事実、Seeedから大きくヒットした製品は今のところ出てきていない。今後のターゲットにエントリー層や子供をターゲットとした教育分野にも力を入れ、中長期的に取り組んでいくことも視野にいれているようだ。

Seeed Studioに限らず深圳全体として、メイカームーブメントは市をあげて取り組んでいることもあり非常に盛り上がっている一方、深圳発のスタートアップで具体的な成功を収めている人は少ないことも事実だ。今後起こるだろう深圳の人件費の高騰の課題、そしてコピー製品を超えた山寨製品を製造する能力を備えた深圳のメイカーたちが、今後どう市場のニーズに答え、そこにクリエイティビティとオリジナリティを付加し、模倣だけではない、クオリティが高く魅力ある製品をつくることができるかどうか。そこに今後の深圳の未来がある気がした。

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今回のツアーを企画したチームラボの高須氏ニコ技深圳ツアーは不定期に今後も開催されるようなので気になる人はチェックしてほしい。

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