今年4月、安倍首相がアメリカ遊説の際にシリコンバレーを訪れた。日本の現職の首相がシリコンバレーを訪れたのは初めてなのだそうだ。この訪問の際、安倍首相が明らかにしたのが、意欲ある日本の起業家をシリコンバレーに送り込むプロジェクト、俗に言う「架け橋プロジェクト」である。

経済産業省が主催し、監査法人のトーマツとシリコンバレーを拠点とするファンドである WiL(World Innovation Lab)が運営する形で、このプロジェクトが早くも具現化した。19日、都内では「始動 Next Innovator 2015」と題されたプログラムのキックオフ・イベントが開催され、経済産業省経済産業政策局長の菅原郁郎氏、WiL 共同創業者 CEO の伊佐山元氏らが登壇した。
このプログラムには国内から約370名の応募があり、イベントには、書類選考の結果プログラムへの参加が認められた122名のほか、講師、メンター、サポーターらが一堂に会した。プログラムに参加する起業家候補(「始動」プログラムの一期生)は、都内の WiL オフィスにある「始動カフェ」で次のようなレクチャーを受講することになる。
第一期で予定されているレクチャーは次の通りだ。
- 第1回 7/4 (土)「課題を発見する」 講師:IDEO Tokyoリードビジネスデザイナー 野々村健一氏
- 第2回 7/25(土)「ソリューションをつくりだす」 講師:エムテド代表取締役 田子學氏
- 第3回 8/8 (土)「ジレンマを回避する」 講師:Japan Innovation Network 発起人且つ専務理事日本防災プラットフォーム発起人かつ代表理事 西口尚宏氏
- 第4回 8/22(土)「関係者を巻き込む」 講師:トーマツベンチャーサポート 事業統括本部長 公認会計士 早稲田大学ビジネススクール招聘講師 斎藤祐馬氏
- 第5回 9/5 (土)「実現性を高める」 講師:C Channel代表取締役 森川亮氏
- 第6回 9/26(土)「事業を伝える」 講師:日産自動車 代表取締役副会長 志賀俊之氏

便宜上レクチャーという表現をしたが、このプログラムを考案している WiL によれば、自分のひらめきと他のひらめきをぶつけ合える、化学反応を生み出すような環境が起業家の養成には必須だとしており、集まった一期生同士で白熱した議論が展開されることだろう。
このほか、毎週、月・水・金の夜には、「知の振幅」や「知の融合」をテーマに、プログラムのサポーターと食事しながら議論しあう機会や、法律や金融知識などの「知の深化」を狙った学習セッション、食べながら飲みながらの一期生同士が親睦を深められるコミュニケーションの場が設定される。
東京での一連のプログラムを修了後、一期生の中から選抜された20名は約2週間にわたり、シリコンバレーでの滞在プログラムへの参加が許されることになる。年末には、東京でプログラムの成果が披露されるデモデイが開催される。
これまでの日本からシリコンバレーへ起業家を送り出す事業は、民間団体や地方自治体によるものが多く、日本政府が本格的に関与する形でのプログラムは、おそらく「始動」が初めてではないだろうか。キックオフ・イベントに集まったメンターやサポーターの顔ぶれからも、このプログラムが政府の肝入りであるとの印象を受けた。
「始動」の結果はいかに? 年末のデモデイを楽しみにしたい。
BRIDGE Members
BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。- 会員限定記事・毎月3本
- コミュニティDiscord招待