Rising Expo 2016東南アジア予選がジャカルタで開催、6ヶ国11チームが東京行きを賭けて熱烈ピッチ

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Rising Expo は、サイバーエージェント・ベンチャーズが年に一度、東京で開催するスタートアップ・コンペティションだ。韓国と東南アジアのスタートアップの予選が行われ、東京で9月2日に開催される本選には、日本から出場するスタートアップと肩を並べて、各国選出のスタートアップが優勝の座を狙い争う。

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その前哨戦ともいうべき Rising Expo 2016 東南アジア予選が14日、ジャカルタ市内で開催され、150人ほどの投資家や起業家が一堂に介した。主催者説明によれば、参加者の約半数は日本からの参加、残りの半数はインドネシアを始めとする東南アジア各国からの参加とのこと。審査は、聴衆である参加者全員が優勝と準優勝を指名投票し、その投票数が多かったチームを選ぶ形で決定された。

東南アジア予選では、11社のスタートアップが登壇した。優勝・準優勝チームとともに、彼らの顔ぶれを以下に紹介したい。

【優勝】NIDA Rooms(マレーシア)

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ホテルは概してすべての部屋が予約で埋まることはなく、占有率は高いところでも65%〜75%程度だ。NIDA Rooms はホテルから余った空室在庫を確保し、それを NIDA Rooms のブランドで販売することで、1泊あたり30ドル程度の安価で宿泊体験を提供する。現在、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンの4カ国で展開しており、150人の営業担当者を配置することで提携ホテルを確保し、部屋の快適性(エアコンが使えるか、Wi-Fi が使えるか、シャワーのお湯が出るかなど)を現地確認で保証する。

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昨年9月にローンチし、3,500軒以上のホテルが NIDA Rooms のネットワークに参加、今年7月までに5,000軒の達成を目指す。実際のユーザの宿泊費用の統計を取ってみると、NIDA Rooms を使った場合の1泊当たりの宿泊費は平均18ドル程度。典型的なオンライン旅行予約サイトや、Airbnb などのバケーションレンタルを使うよりも安い。この分野には、ZenroomsRedDoorzAiryRoomsOyo などの競合サービスが存在する。東南アジアで市場を集中したのち、2年後には南米に進出予定。

これまでに East Pacific Capital、True Capital、サイバーエージェント・ベンチャーズ、Convergence Ventures から資金調達しており、現在3回目のラウンドに向けて資金調達中。

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【準優勝】Taralite(インドネシア)

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Taralite は、インドネシアの P2P レンディング・プラットフォームだ。東南アジアは銀行口座を持っている人が少なく、したがって、銀行は消費者への融資を積極的に行っていないため、個人に対する信用度審査などのノウハウも持たない。Taralite は、この銀行口座を持たない人々に焦点を定め、P2P レンディングを提供する。

貸し倒れを予防するために信用度審査の必要が生じるが、例えば、Uber ドライバーが融資を依頼する場合、Taralite は Uber と連携することで、Uber のドライバーがどれだけ稼いでいるかのデータをリアルタイムで取り込み、それをビッグデータ分析することで、適切な融資上限額を設定する。パートナー各社との連携により、ユーザ獲得コストも圧縮する。


以上、優勝した NIDA Rooms と Taralite については、9月2日の Rising Expo 2016 in Japan に登壇のため来日予定。以下の9社については、入賞には至らなかったものの、東南アジア予選で雄姿を披露したスタートアップ9社だ。

Kalibrr(フィリピン)

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フィリピンやインドネシアでは、大学を卒業してから就職できるまでに1年以上かかることがしばしば。ジョブボードで仕事を探しても、自分が求める職種が検索結果の上位に出て来ない。Kalibrr は、就職希望者にプログラミングスキル、セールススキル、カスタマーサービススキルなど11の条件を入力してもらうことで、企業と就職希望者を自動的にマッチングする。

企業は、面接したいと思った人を見つけたときだけ、Kalibrr 手数料が請求されるしくみだ。現在、インドネシア国内で30社以上が Kalibrr を利用している。

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GetLinks(タイ)

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GetLinks は、東南アジアのスタートアップ向けの技術人材ハイヤリング・プラットフォーム。東南アジアでは、国によって技術者が不足していたり、給料の金額レンジが異なっていたりする。一方で、APEC 経済自由化に伴い、ASEAN 加盟国内での人の流動は以前に比べ自由になりつつある。

GetLinks は特にオフラインでの顧客獲得、就職希望者獲得に力を入れており、東南アジア各国のスタートアップ・カンファレンスで企業側/技術者側双方のイベント協賛することでタッチポイントを確保し、国境を越えた効率的なハイヤリング機会を提供。人材紹介大手 Robert Walters の就職成功率が 5% であるのに対し、GetLinks では 40% のコンバージョンレートを達成しているとのこと。

GetLinks は今年3月、500 Startups とサイバーエージェント・ベンチャーズから5,000万ドルを調達している。

KYNA(ベトナム)

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発展途上国においては、大学を卒業した人でも、社会での労働力としては実務スキルが不足していることがしばしば。また、企業にとっては、スキルが不足している人材が多いと、労働生産性が下がり、離職率が高くなるため、売上やコストに直結する問題となる。

KYNA は、トップの職業訓練学校の専門家に、ビジネスプロフェッショナルの養成課程をプラットフォームにアップロードしてもらい、個人に対し、スキルトレーニングの機会をオンラインで提供する。受講費用は、1講座あたり15ドル。オンライン決済ができないユーザのために、プラットフォームのアクティベーション・コードをキャッシュ・オン・デリバリで届けるサービスも提供。

ベトナムで2016年に開始し、今後、タイやインドネシアに拡大予定。シードラウンドでサイバーエージェント・ベンチャーズから、プレシリーズAラウンドでベトナムの VC である 24giờ から資金を調達している。

Oneteam(日本)

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Oneteam は、企業向けのコミュニケーションプラットフォームを提供。一つのプラットフォームで、コミュニケーション共有とタスク管理の両立が可能で、離れた場所にいるチームメンバーのスムーズな協働作業を支援する。これまでに3113カ国で3,500社で利用されている。本イベントが開催された6月14日、Oneteam はこのコミュニケーション・プラットフォームの製品版を公開した。

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SkillLane(タイ)

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SkillLane は、個人が新しい職業スキルを身につけるための、生徒と講師を結ぶマーケットプレイスだ。タイにおいても、多くの人が新しい職業スキルを身に付けたいと考えているが、この種のサービスを提供するオンライン・プラットフォームの多くは、英語で提供されているため、一般的なタイ人にはハードルが高い。

また、一方で、タイ人のマインドセットとして、仕事よりも家族や友人と過ごす時間を優先する傾向にあるため、社会人が仕事の合間を縫って学習に時間を割くのは一苦労だ。SkillLane オンラインで学習機会を提供することにより、タイの人々が時間を有効活用して新しい職業スキルを身につけられるようにする。来年にはインドネシアに進出する計画だ。

JupViec.vn(ベトナム)

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ベトナムには1,800万世帯があるが、女性の社会進出に伴い、主婦らは自宅を掃除する時間を確保しづらくなっている。JupViec は自宅の掃除代行サービス(ハウスキーピング)を提供、3年前にオフラインでサービスをはじめ、その後オンラインサービスを立ち上げたため、すでに1.5万人の顧客がおり、提供した掃除代行サービスはのべ40万時間に上る。月に5万ドルを売上、6,000件の取扱がある。

今年の1月には、シードラウンドでサイバーエージェント・ベンチャーズから金額非開示の資金調達を実施している。

Seekmi(インドネシア)

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カナダ出身の創業者2人は、インドネシアのローカルサービス市場が非常に大きいことに着目。消費者が、安価で最もよいサービスプロバイダを容易に選び出すことができるマーケットプレイス「Seekmi」を開設した。掃除の代行、エアコンの修理など、依頼したい内容を提示することで、複数のサービスプロバイダから見積を得ることができる。ユーザは、他のユーザのレビューなども見た後にサービスプロバイダを選択し、ユーザ〜プロバイダ間で詳細な金額をオフラインで交渉する。

Google Launchpad Accelerator に参加。昨年8月にサービスをローンチし、プロバイダ向け・消費者向けのそれぞれにモバイルアプリを先月ローンチしている。

YesBoss(インドネシア)

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YesBoss は、アメリカの Magic にも似たチャットベースの Eコマース・プラットフォームだ。顧客からのチャットでの質問に対して YesBoss のスタッフや人工知能が回答することにより、60を超える提携先へ顧客を誘導する。人工知能が用いる自然言語解析エンジンは現時点でインドネシア語と英語に対応しており、典型的なスタッフ対応型のプラットフォームより、平均で6倍速くレスポンスを返すことができる。

ビジネスモデルとしては、顧客を誘導して提携先から一注文あたり2〜20%の手数料を徴収する B2C モデル、企業の福利厚生として、一社員あたり月4ドルを徴収する B2B モデル、他のEコマース事業者向けに月4,000〜1.5万ドルでサービスを OEM 提供するモデルの3つ。インドネシアの通信企業 Telekom Indonesia の投資部門 MDI Ventures、500 Startups、Convergence Ventures、IMJ Investment Partners から出資を受けている。

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FemaleDaily(インドネシア)

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FemaleDaily は、いわば @Cosme(アット・コスメ)のインドネシア版。昨年9月にローンチし、インドネシアの女性向けに美容品、美容サロン、スパなどのレビューサイトを提供している。オンラインのみならず、ヨガスタジオや美容院などを通じてオフラインでも顧客にリーチしているのが特徴。

すでに30万人の登録ユーザがおり、月あたりの訪問ユニークユーザは230万人。ユーザの多くは、20〜40歳の女性たちだ。口コミから商品販売に送客するソーシャル・コマースを標榜しており、すでに化粧品メーカーなど200社以上を顧客に抱えている。

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なお、サイバーエージェント・ベンチャーズは今日、9月2日に東京で開催される「Rising Expo 2016 in Japan」に、日本国内から参加するスタートアップについて事前選考の募集を開始した。本店所在地が日本にあるかどうかは問われない。応募条件は、

  1. IT・インターネット関連ベンチャー企業であること
  2. 原則、サービスローンチをしており、一定のユーザー数もしくは一定の売上を獲得できていること
  3. 1億円以上の資金調達を検討していること

…の3つだ。我こそはというスタートアップ創業者や起業家は、締切となる6月29日正午までに、このページからエントリするとよいだろう。例年同様、イベント当日の模様は THE BRIDGE でもお届けする予定なので、乞うご期待。

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