人工知能技術や自然言語処理技術を用いたサービスの開発を行うスタートアップ、クーロンが本日新たにウェブメディア向けのコメントシステム「QuACS」をリリースした。
「QuACS」は、機械学習、自然言語処理、行動分析に基づいた人工知能「フェアプレイアルゴリズム」を搭載したコメントシステム。
彼らがこのアルゴリズムをコメントシステムに搭載することで実現したいと考えているのは、収益手段の確保やオンラインメディアの支援だ。コメント欄が盛り上がっているほうが記事を訪れる読者数は増える。
だが、日本のオンラインメディアのコメント欄には、Facebookのコメントシステムを使うと実名であることもあってコメントがつきづらく、かといって匿名にすると荒れやすいという問題があった。
「QuACS」はコメント欄を盛り上げつつも、炎上しないようにするためのシステムだ。しかも、人工知能が処理してくれるため管理に人手がかからない。
人工知能「フェアプレイアルゴリズム」
「QuACS」は、各ウェブメディアのトンマナやコメントガイドラインを反映させて対応を変える。そのため、画一的にコメントを処理するのではなく、システムを導入するメディアに合わせてコメントの管理を行う。
「QuACS」に用いられている「フェアプレイアルゴリズム」とは、ユーザが投稿するコメントから相手のことを慮っているか、自分の過ちを素直に認めたか、などその人の行動が「フェアプレイ」だったかどうかを判別する技術だ。
「フェアプレイアルゴリズム」では、ユーザが投稿するコメントを33つのモジュールで分析することで、100文字前後のコメントからであっても大量のデータを読み取ることができる。
同一ユーザの行動変化も分析することができる。たとえば、少しずつコメントがヒートアップしている様子などが計測された場合、コメントを反映させないなどの対応をとる。
投稿されたコメントは管理画面側で確認できるようになっており、クーロン側でのチェックと導入したメディア側でチェックが可能。人工知能だけで判定してしまうのではなく、人間側でこのコメントはアリかナシかをチェックすることで、「QuACS」は学習し、判定精度を高めていく。
クーロンはこの「フェアプレイアルゴリズム」を用いて、ユーザが自ら進んでフェアプレイにのっとったコメントをするようになっていくようにしていきたい、と語っている。
コメントからオンラインメディアの価値を高めていくために
クーロンは、このコメントシステムを導入することで、しっかりと取材をしている記者の記事を訪れる読者数を増やし、それによってメディアの媒体価値を高めていきたいと考えているという。
彼らが自分たちで運営するメディア「GGSOKU(旧名:ガジェット速報)」で、「QuACS」のコメントシステムを導入してみたところ、滞在時間やリピート率といった数字が大きく伸びたという結果も出ている。
「QuACS」のマネタイズモデルは広告だ。表示されるコメントとコメントの間にテキスト広告が表示される。先述のように、コメント欄が盛り上がっている記事は、滞在時間や再訪率が高いため、広告としての価値も高い。
また、まずはニュースサイトなどメディアのコメント欄から対応していくが、将来的にはレビューサイト等のコメント欄にも対応していく予定だという。
コメントシステムというインフラを運営するために
余談だが、彼らは今年の3月まで南青山のオフィスで、ずっとオフィスに寝泊まりして開発を続けるような生活を送っていた。今年に入って出資を受け、六本木ヒルズの森タワーへとオフィスを移転している。
移転の理由を尋ねると、クーロン代表取締役の佐藤 由太氏は、
佐藤氏「コメントシステムもインフラのひとつ。何かがあったときでも、コメントシステムがダウンするわけにはいきません。まだオフィスはスカスカの状態ですが、万が一のときにも停電にならない六本木ヒルズの森タワーにオフィスを構えることにしました」
と、サービス運営にかける意気込みを語ってくれた。
人工知能の研究者から技術系メディアの編集を担ってきた人物など、ユニークな人材が集まるクーロン。彼らがリリースした「QuACS」は、海外メディアと比較するとコメントがつきづらいと言われる日本のオンラインメディア環境を変えるだろうか。
BRIDGE Members
BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。- 会員限定記事・毎月3本
- コミュニティDiscord招待